「割賦販売法施行規則の一部を改正する省令案」に対する意見(2017年9月21日)
2017年(平成29年)9月22日
経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ
商取引監督課 割賦販売法担当 御中
〒604-0971 京都市中京区富小路通丸太町下ル
京 都 弁 護 士 会
会長 木 内 哲 郎
「割賦販売法施行規則の一部を改正する省令案」に対する意見
第1 意見の趣旨
1 包括信用購入あっせん業者(カード発行会社)に対して、利用者からの加盟店についての苦情情報をクレジットカード番号等取扱契約締結事業者(加盟店契約会社)に対して通知する義務を明文化したことには賛成するものの、従前において包括信用購入あっせん業者に課せられていた加盟店の違法行為等についての調査義務が明記されなくなったことに反対する(省令案60条)。
2 クレジットカード番号等取扱契約締結事業者による契約締結時、定期的、及び苦情発生時における加盟店調査義務並びに調査及び指導の結果として加盟店契約を解除するなどの措置をとる義務など、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の加盟店管理責任の内容が詳細に定められたことに賛成する(省令案133条の5乃至9)。
第2 意見の理由
1 苦情情報の通知と包括信用購入あっせん業者の義務(意見の趣旨第1項)
⑴ 当会が2016年(平成28年)12月22日に発表した「割賦販売法改正法の成立に対する会長声明」では、「今回の割賦販売法の改正では、カード発行会社(イシュアー)から加盟店契約会社に対する苦情の伝達などは明文化されなかった。」と指摘していた。そうしたところ、今回の省令案では、包括信用購入あっせん業者からクレジットカード番号等取扱契約締結事業者に対して利用者からの加盟店についての苦情情報を通知することが明文化された(省令案60条2号)。クレジットカード決済に関する消費者トラブルが発生した場合、消費者にとって苦情の通報先は自らのカードを発行した包括信用購入あっせん業者しかないため、包括信用購入あっせん業者とクレジットカード番号取扱契約締結事業者が異なる取引の場合に包括信用購入あっせん業者からクレジットカード番号等取扱契約締結事業者に対する消費者からの苦情の迅速な伝達等の処理が実行されなければ、適切な加盟店調査及び悪質加盟店排除は実現できない。したがって、包括信用購入あっせん業者からクレジットカード番号等取扱契約締結事業者への加盟店に関する苦情情報の通知を明文化したことには賛成する。
⑵ 一方で、現在の省令では、包括信用購入あっせん業者は、苦情情報に対して必要な調査を行う義務が定められていたところ(現在の省令60条)、今回の改正では、自らの直接の業務ではない加盟店に関する苦情についてはクレジットカード番号等取扱契約締結事業者に対して通知をすればよいことなり(省令案60条2号)、加盟店に対して必要な調査を行う義務までは明記されなくなった。包括信用購入あっせん業者が直接加盟店と契約をしているオンアス取引類型であれば、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者として加盟店調査義務を負うことになるが(法35条の17の2、省令133条の8)、カード発行会社と加盟店が直接の契約関係に立たないオフアス取引の場合には加盟店と契約するクレジットカード番号等取扱契約締結事業者に通知すれば足りるとも解釈しうることになってしまう。
改正割賦販売法では、包括信用購入あっせん業者、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者といったクレジットカード取引における主体ごとの役割に応じて責任が明文化されており、そのような趣旨から包括信用購入あっせん業者の調査義務が明記されなくなったのではないかと考えられる。しかし、あくまでも消費者にとってみれば、自らが契約をしているのは包括信用購入あっせん業者であり、包括信用購入あっせん業者を信頼してクレジットカードを利用しているのであって、関わりのないクレジットカード番号取扱契約締結事業者を信頼して取引をしているわけではない。このように消費者に生じている包括信用購入あっせん業者に対する信頼は保護されるべきものであり、クレジットカード制度内部における役割に応じた責任分担の結果をそのまま消費者に帰属させるのは相当ではない。
また、クレジットカード取引によるトラブルは、最終的には包括信用購入あっせん業者の消費者に対する立替払金等の請求が認められるかどうかによって決することになるところ、消費者の発した加盟店に苦情を積極的に調査しない包括信用購入あっせん業者に対する請求を受け入れることは消費者の理解が得られない、ひいてはクレジットカード決済そのものに対する信用を害することになるのではないかと思われる。
したがって、包括信用購入あっせん業者が苦情情報をクレジットカード番号取扱契約締結事業者に通知することをもって包括信用購入あっせん業者が調査義務を免れるとされるような省令案は、消費者の包括信用購入あっせん業者に対する信頼に反するものであるとともに、消費者保護に欠けることになるものと言わざるを得ない。したがって、包括信用購入あっせん業者の加盟店による利用者保護に欠ける行為についての調査義務を削除することには反対し、包括信用購入あっせん業者から加盟店に関する苦情情報の通知を現行の調査義務に付加して定めることとし、包括信用購入あっせん業者とクレジットカード番号等取扱契約締結事業者が連携して苦情情報に関する調査を行っていくという制度設計にするべきである。
2 加盟店管理責任が明確化されたこと(意見の趣旨第2項)
クレジットカード番号等取扱契約締結事業者による契約締結時の加盟店調査義務(省令133の5、133条の6)、定期的な加盟店調査義務(省令133条の7)、苦情発生時における加盟店調査義務(省令133条の8)が詳細に定められ、加盟店の措置が法令に適合しないおそれがあると認めるときには加盟店契約を解除することなどの加盟店管理責任が明確化されたことについては、悪質加盟店による取引を排除し、消費者保護につながることになるので賛成する。
以 上