「司法試験の合格判定が厳正に行われることを求める会長声明」(2017年10月19日)


  2017年(平成29年)9月12日、1543名が本年の司法試験の最終合格者となったことが発表された。当会は、この最終合格者を同じ法曹たる仲間として心から歓迎するとともに、司法修習を通じて大きく成長し、法律実務家として活躍されることを期待する。
  さて、司法が市民の権利義務や国のあり方に大きく関わるものである以上、司法を担う法曹の質の確保・向上について市民の負託に応える必要があることはいうまでもない。2017年(平成29年)6月30日に法曹養成制度改革推進会議が発表した「法曹人口のあり方」(検討結果取りまとめ)においては、「なお、新たに養成し、輩出される法曹の規模に関するこの取りまとめは、法曹養成制度が法曹の質を確保しつつ多くの法曹を養成することを目的としていることに鑑み、輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある」と述べられているところであり、当会も、弁護修習やいわゆる深化コースを充実させるなどして、法曹の質の確保に務めてきた。
  そして、当会は、本年の司法試験受験者数が5967名(昨年より932名減)となったことを受けて、本年6月22日、司法試験合格者の判定にあたっては、1500人程度以上とされる合格者数の確保のみが優先されるべきではなく、司法を担う法曹の質の維持・向上の要請をふまえた厳正な審査を行うべきであるとする会長声明を発していたところである。
  ところが、本年の司法試験の合格率は、25.86%であり、昨年の合格率である22.90%と比較するとさらに緩やかな選抜が行われたこととなった。合格者数は、上記検討結果取りまとめが示した1500名程度というものに近いものではあるが、受験者数が大幅に減少している現状において、法曹の質の確保という観点からは、厳正な審査がなされたのか大いに疑問がある。今後、受験者数がさらに減少することも予想されるところ、法曹の質の確保という観点からは合格者数の削減が積極的に進められるべきである。
  よって当会は、本年の合格判定に法曹の質の確保という観点からの懸念を表明し、来年以降の司法試験の合格判定が厳正に行われることを求める。

      2017年(平成29年)10月19日

京  都  弁  護  士  会

会長  木  内  哲  郎
    

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