自研センターでの交通事故研修


先日、千葉県市川市にある自研センターで、交通事故研修を受講してきました。

自研センターについては、ご存知でない方も多いことと思います。かく言う私も、研修を受講するまでは、恥ずかしながらその名称を耳にしたことがございませんでした。自研センターは、1973年に、日本損害保険協会加盟の損害保険会社を株主として設立され、損傷自動車の復元修理費の適正化・低減化を中心とした課題に日々取り組んでおられる株式会社です。
今回の研修は二日間にわたって行われたのですが、自動車の構造、損害車両の見積方法・修理技法、衝突の特性と調査方法などの基本的な知識を幅広く習得することができ、交通事故事件に日々接する弁護士としては非常に有意義な研修となりました。特に、今回の研修は、「実際に自分の目で見てみる」というところに重点が置かれており、普段目にすることができない様々な作業風景を間近で見たり、実際に体験したりすることができました。

その中でも、車対車のバリア衝突実験は、強く印象に残るものとなりました。今回行われたバリア衝突実験は、停止車両(車両重量約1,100㎏の4ドアセダン、パーキングブレーキ及びサイドブレーキをかけている)に同一型車両を後方から時速約35㎞でフルラップ衝突(被追突車の後部に追突車の前面の全部が当たる1次元衝突)させる瞬間を、数メートル先から見学するというものでした。衝突の瞬間、凄まじい衝撃音が鳴り、十分に身構えている状況下でもかなりの衝撃波を感じました。衝突とともに追突車のエアバッグが勢いよく開いたのですが、今まで嗅いだことのない独特なガスの臭いが辺り一面に充満し、実験場所は瞬時に事故現場と化しました。
実際の交通事故では、今まさに衝突することを認識しながら事故に至るケースもありますが、何ら認識がない中で事故に巻き込まれてしまうケースもあります。今回私が体験した前者型の事故(もちろん、私は追突車にも被追突車にも乗車してはいませんが)でもあれほどの衝撃があるのですから、後者型の事故の際には更なる衝撃があることでしょう。交通事故に遭遇した際の運転者や同乗者の恐怖心が筆舌に尽くしがたいものであるということを、自らの身をもってよく理解できました。交通事故の法律相談に来られた方の面談を行う際には、事故当時の心境を慮って事実の聴取をしなければならないと考えさせられました。

日本では、現在、自動車の保有台数は約8000万台にも上り、自動車が社会と大衆に広く普及しています。交通事故件数は近年では減少化傾向にはありますが、それでも、平成28年度では約50万件の交通事故が発生し、死傷者数は60万人を超えています。1年間で、人口10万人あたり約500人が死傷した計算になり、モータリゼーションの進展と交通事故の発生は切り離すことができない関係にあることが窺えます。近時も痛ましい交通事故が各地で多数発生しており、被害者救済に向けた弁護士活動の必要性を痛感しています。
なお、京都弁護士会では、交通事故相談を随時受け付けております。交通事故に遭遇されてお悩みの方は、京都弁護士会までぜひご相談ください。

宮本  高平(2017年11月27日記)


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