共謀罪の新設に反対する会長声明(2003年8月19日)


共謀罪の新設に反対する会長声明



  共謀罪を新設する「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下「法案」という。)が、2003年3月に国会に上程され、現在、衆議院で継続審議となっている。
  この共謀罪とは、団体の活動として、組織により行われるものの遂行を共謀した者に対して、長期4年以上10年以下の懲役・禁錮の刑を定める罪を共謀した場合には2年以下の懲役・禁錮、死刑または無期もしくは長期10年を超える懲役・禁錮の刑を定める罪を共謀した場合には5年以下の懲役・禁錮を科すというものである。
  この共謀罪の新設は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「犯罪防止条約」という。)の批准に伴うものとされている。国内法の整備が必要だとしても、処罰範囲の拡大は必要最小限であるべきである。しかし、犯罪防止条約においては、その適用範囲は「性質上越境的なものであり、且つ、組織的な犯罪集団が関与するもの」に限定されているはずであるにもかかわらず、法案においてはこの「越境性」「組織的な犯罪集団の関与」が抜け落ち、条約批准に伴う国内法整備という範囲を超えて過度に適用範囲を拡大している。
  また、この共謀罪は、実行行為の着手のみならず予備行為さえも要件としておらず、共謀それ自体を処罰するものとなっており、構成要件がきわめて広範かつ曖昧な上に処罰時期を著しく前倒しにするものである。これでは、団体内の個人どうしが犯罪行為の相談をしただけで、具体的危険性が生じるかどうかも不明な段階であっても、上記刑罰が科されることになりかねない。
  さらに、現行法上、予備行為が処罰されるのはごく限られた重大犯罪とされているが、この共謀罪においては500以上にものぼる非常に広範な犯罪が対象とされてしまうのである。
  しかも、このような行為の捜査は、具体的な被害事実から出発するのではなく、会話、メールなどのやりとりそのものを取り締まることになり、盗聴法の適用範囲の拡大など不当な監視・管理の強化につながることになる。
  このように、共謀罪の新設は、構成要件の明確性を欠き、処罰時期を著しく早め、処罰範囲を一気に拡大して、事実上刑法を全面改悪するに等しいものである。これは罪刑法定主義に反し、言論の自由、結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威である。
  よって、当会は、共謀罪の新設に反対する。


2003年(平成15年)8月19日
                                              
京都弁護士会  塚  本  誠  一



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