「日本国憲法の改正手続に関する法律の問題点解消を求める会長声明」(2018年4月26日)


日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「国民投票法」という。)は、2007年(平成19年)5月14日に可決成立し、2014年(平成26年)6月13日に一部改正された。
国民投票法は、国の根本法規である憲法の改正手続きを定める法律であり、主権者である国民が、憲法改正について十分な情報に基づき、国民相互で十分議論し、国民意思を真に反映する手続きでなければならない。
このような視点から、当会は、これまで「憲法改正国民投票法案についての意見書」(2006年10月13日)及び「『日本国憲法の改正手続きに関する法律』成立についての会長声明」(2007年5月17日)により、国民投票法の問題点を指摘し、見直しを求めてきた(以下これらを「当会意見書等」という。)。
しかし、現行の国民投票法は、その後の改正を経てもなお、いくつもの重大な問題が残されたままとなっている。
政府・与党は、憲法改正に強い意欲を示しており、もし憲法改正が発議されれば、国民投票法によって国民投票が実施されることとなるが、公正性・公平性を欠いた状態で国民投票が実施されることはあってはならない。
当会は、憲法改正の発議の前に、改めて、現行国民投票法にかかる以下に述べる問題点を早急に解消することを求めるものである。

1  最低投票率制度を導入すべきである
    国民投票法には、最低投票率の定めがない。
しかし、憲法改正は、国の最高法規を変更するものであるから、国民の意思は明白かつ積極的に表明されなければならない。一定の投票率を超えていなければ、憲法改正の正当性に疑義が生じることになるのであるから、最低投票率制度が導入されるべきである。

2  テレビ・ラジオ有料広告の規制を検討すべきである
テレビ・ラジオ広告は影響力が甚大であるが、広告枠は有限で、かつ利用料は著しく高額である。新聞広告にも同じ問題がある。したがって、テレビ・ラジオ有料広告を投票前14日間に限り禁止するだけの現行法では、資金力に秀でた側が国民投票運動を有利に進めることを許すこととなりかねない。公平性を確保するための規制方法について検討すべきである。

3  国民投票広報協議会の構成は賛成派委員と反対派委員を同数にすべきである
国民投票広報協議会(以下「協議会」という。)は、公の機関によって憲法改正案の内容やそれに対する賛成意見及び反対意見を国民に知らせるという重要な役割を担うものであり、中立性が求められる。しかし、国民投票法は、協議会の構成員を各会派の所属議員数の比率に応じて割り当てると定めており、衆参両議院の総議員の3分の2以上の賛成で憲法改正案が発議されることからすれば、構成員の圧倒的多数が憲法改正賛成派で占められることになる。
中立性を担保するために、協議会の構成は、賛成派委員と反対派委員を同数とすべきである。

4  その他の課題
さらに、国民の発議から国民投票までの期間が60日ないし180日では短すぎることや、過半数の賛成の対象は有効投票総数ではなく投票総数とすべきであること、公務員・教育者の地位利用規制や組織的多数人買収・利害誘導罪について規制対象が明確でなく広範に過ぎ、濫用のおそれがあって自由な議論を萎縮させる危険性があることについても当会意見書等で述べたとおりであり、見直しが必要である。


2018年(平成30年)4月26日


京  都  弁  護  士  会

会長  浅  野  則  明


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