特定複合観光施設区域整備法案」(いわゆる「カジノ解禁実施法案」)に反対し、廃案を求める会長声明(2018年6月21日)


「特定複合観光施設区域整備法案」(以下「カジノ解禁実施法案」という。)が国会に提出された。カジノ解禁実施法案は、2016年(平成28年)12月15日に成立した「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下「カジノ解禁推進法」という。)の具体的な実施法案である。
  しかし、2017年(平成29年)8月に実施された意見公募(パブリックコメント)では、経済効果は期待できない、カジノの存在を前提として観光振興を行うべきではない、社会コストが生じるなどの反対意見が多数寄せられ、また、各種世論調査でもカジノ解禁に反対する意見が賛成意見を圧倒している。このようにカジノ解禁については国民の納得や理解を得られていない。
  そもそも、カジノ解禁実施法案は、経済政策を目的とする立法であると考えられるが、カジノ解禁には、多重債務問題の再燃、ギャンブル依存症の拡大、青少年の健全育成への悪影響、暴力団やマネー・ローンダリング対策上の問題、刑法における賭博罪との整合性等看過できない問題点が多数含まれており、カジノ解禁によってこれらの問題が発生することは明白であるから、カジノ解禁による政策目的を正当化することはできない。
  政府は、カジノ解禁実施法案は、上記弊害の除去、特にギャンブル依存症対策を制度化したものであると説明しているが、カジノ解禁実施法案の規定はこれらの問題の対策になっていない。すなわち、同法案は、ギャンブル依存症対策として、入場料を「6,000円」とし、入場回数制限を「7日で3回、28日間で10回まで」と定めている。しかし、ギャンブル依存症は、経済的・社会的・精神的な問題が生じているにもかかわらず、それでもギャンブルをやめることができないという病気であり、入場料の設定はギャンブル依存症対策にはならない。また、入場制限についても、「7日間に3回、28日間で10回」もカジノ施設に入場することは、まさにギャンブル依存症の発現であり、ギャンブル依存症対策となっていない。むしろ、カジノ解禁実施法案では、一定の要件のもとで手元に資金がない者に対して金銭の貸付を行う特定資金貸付業務を行うことをカジノ事業者の業務に位置づけており、カジノ事業者が手元に資金のない者に貸付けて、カジノに更なる金銭をつぎ込むことを可能にすることはギャンブル依存症をさらに悪化させるものである。この点、政府は、世界最高水準の規制を導入すると説明してきたが、他国の例からしても、カジノ解禁実施法案の定める規制は世界最高水準の規制とはいえない。
  以上のとおり、カジノ解禁実施法案の定める規制は、ギャンブル依存症対策等のカジノ解禁による弊害を除去するものになっておらず、カジノ解禁そのものに国民の納得や理解が得られていない状況であることから、当会は、カジノ解禁実施法案の即時廃案を求める。

2018年(平成30年)6月21日

京  都  弁  護  士  会

会長  浅  野  則  明


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