声明

「消費者契約法の一部を改正する法律」の成立に関する会長声明(2018年7月19日)


1  2018年(平成30年)6月4日、第196回国会において、「消費者契約法の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が可決され、成立した。
この消費者契約法の改正は、当会においても、2017年(平成29年)6月22日付け「消費者契約法の改正を求める意見書」、同年8月17日付け「消費者契約法専門調査会報告書に関する会長声明」などにより、情報通信技術の発達や高齢化社会の進展等で拡大する消費者被害等の予防・救済を図るため、その早期実現を強く求めてきたところであり、改正法が成立するに至ったことを評価する。
もっとも、改正法は、その運用上の懸念と盛り込まれなかった課題を残すものである。
2  運用上の懸念は、新たに追加された取消権における「社会生活上の経験が乏しいこと」(改正法4条3項3号、同項4号)及び「判断力が著しく低下していること」(改正法4条3項5号)の各要件がいたずらに厳格に解釈されることにより、高齢者の消費者被害に対応できなくなる恐れがあることである。
前者の要件に関して、当会は、2018年(平成30年)3月27日付け「消費者契約法の一部を改正する法律案に関する会長声明」において上記懸念を指摘した。改正法では、高齢者等をその対象として明記する取消権及び霊感商法を対象とする取消権を付加する旨の修正が行われ、上記懸念に一定程度対応したものといえる。しかしながら、要件としては残されており、上記懸念が完全に払拭されたとまではいえない。改正法の衆参附帯決議においても決議されたとおり、被害者の年齢に関係なく、契約の目的となるものや勧誘の態様との関係で本要件に該当する場合があることを、消費者・事業者の双方に対し、逐条解説その他によって周知し、適切な運用が図られるように措置すべきである。
後者の要件についても、国会の審議において指摘されたような本来救済されるべき高齢者が対象から除外されることを防ぐために、改正法の参院附帯決議において決議されたとおり、救済範囲が不当に狭いものとならないように解釈すべきものであり、同様に消費者・事業者の双方に対して周知し、適切な運用が図られるように措置すべきである。
3  改正法に盛り込まれなかった課題としては、2017年(平成29年)8月の内閣府消費者委員会答申において改正が必要と指摘されていた、消費者の判断力不足に乗じて契約をさせるつけ込み型勧誘行為に対する一般的な取消権の導入、消費者契約法9条1号の「平均的な損害の額」に関して消費者の立証責任を軽減するための推定規定の導入及び事業者における約款等の契約条件の事前開示の在り方等がある。
特に、つけ込み型勧誘行為に対する一般的な取消権の創設については、高齢者の消費者被害への対応として喫緊の課題となっているだけでなく、成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害の拡大を防止するための法整備としても不可欠である(参議院法務委員会の平成30年6月12日付け「民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」でも、同法成立後2年以内に必要な措置を講ずべき事項とされている。)。
また、消費者契約法9条1号に関しては、上記推定規定の導入のほかにも、事業者による根拠資料の提出を制度的に促す規律や、「解除に伴う」要件の在り方など、論点が多数積み残されており、これらについても速やかな検討を行い、法改正を実現することが求められる。
改正法の衆参附帯決議においても決議されたとおり、これらの諸項目につき、引き続き在るべき法改正の内容を検討し、時間を置くことなく速やかに法改正が実現されることを強く求めるものである。
4  さらに、消費者被害等の予防・救済を図るためには、改正法の運用を実効的なものとすることが不可欠である。
そこで、改正法の衆参附帯決議においても決議されたのと同様に、差止請求制度及び集団的消費者被害回復制度の担い手である適格消費者団体及び特定適格消費者団体に対する直接的な財政支援の充実、PIO-NETに係る情報の開示の範囲の拡大、両制度の対象範囲を含めた制度の見直しその他必要な施策を行うこと、仮差押命令申立てにおける立担保制度の適切な運用がなされること、また、地方消費者行政の体制の充実・強化のため、恒久的な財政支援策を検討するとともに、既存の財政支援の維持・拡充、消費者行政担当者及び消費生活相談員に対する研修の充実、消費生活相談員の処遇改善等による人材の確保その他適切な施策を実施することを求める。

2018年(平成30年)7月19日

京  都  弁  護  士  会

会長  浅  野  則  明


会長声明のデータ→[ダウンロード](.pdf 形式)


アクセス

もっと詳しく

〒604-0971
京都市中京区富小路通丸太町下ル

京都弁護士会動画チャンネル