声明

刑事施設にエアコンの設置を求める会長声明(2018年7月31日)


  2018年(平成30年)7月19日、京都拘置所内に収容中の男性が熱中症の疑いで搬送され、意識不明の重体に陥ったことが報道されました。この日の京都の最高気温は39.8度に達し、また、最高気温が38度を超える日が連続7日に及び、その後も生命に関わるおそれがある記録的な猛暑が続いています。7月24日には、名古屋刑務所において受刑者が亡くなる事案が発生してしまいました。
  拘置所や刑務所など、刑事施設にいる人は、行動の自由を大幅に制限されているため、自分で暑さを避ける場所に移動することはできません。水分・塩分の摂取、寝具や衣類の調節、適切なタイミングでの休養など、熱中症を避けるために必要とされる行動は制限されており、自分の判断で自由に行うこともできません。冷房設備のない居室の温度は高温に達し、十分な睡眠を取ることすら困難な状態におかれています。着替えや入浴が自由にならず、汗にまみれた生活を送っています。
  法令による人の身体の拘束は、刑事手続の円滑な進行を確保するための未決拘禁や、懲役刑などの自由刑の執行など、法の目的の範囲内で行われるものです。拘束の目的に伴う制限はやむを得ないものですが、その目的を超えた身体的な苦痛を与えることは許されません。国は、拘束された人の身体生命の安全を確保する責任を負っています。
  しかし、最近の酷暑期の刑事施設内の環境は、重症熱中症に罹患する現実的な危険にさらされることを強いるものです。日本救急医学会の熱中症診断ガイドラインによれば、屋内で発症する非労作性熱中症は重症化しやすいこと、高齢者になるほど重症例が多くなることが指摘されていますが、刑事施設には多くの高齢者も収容されており、差し迫った生命の危険すら懸念されます。高齢者でなくともその危険は同様であり、名古屋刑務所ではまさにその危険が現実化してしまいました。生命が助かっても、臓器障害や血液凝固異常などの後遺障害が残る危険も指摘されています。
  このような状態は、未決拘禁においては、何人も、有罪判決を受けるまでは無罪として取り扱われ、それにふさわしい処遇を受けなければならないという無罪推定の原則にも反し、裁判の準備など、円滑な刑事手続の進行にも差支えを生じかねません。また、刑の執行においても、刑務所への収容が、自由刑の範囲を超えた「身体的な苦痛を強いる刑」に変質しかねません。
  刑事施設にいる人がこのような苦痛と危険にさらされる状況は、個人の尊厳の保障、適正手続の保障、拷問及び残虐な刑罰の禁止を定めた憲法の各条項(憲法13条、31条、36条)、被拘禁者の人道的な取扱いや無罪推定原則を定めた国際自由権規約および国連被拘禁者処遇最低基準規則等に照らし、看過できない重大な人権上の危険があると言わざるを得ません。

  京都弁護士会は、国に対し、拘置所・刑務所等の刑事施設において、全居室の室温計測を含む緊急の実態把握、被収容者の水分・栄養・休息・衛生の確保、救護体制の整備など、猛暑対策として直ちに実施し得る最大限の方策を尽くすとともに、早急に、刑事施設にエアコンを設置し、収容された人が、人として耐え難い身体的苦痛と生命の危機にさらされている状況を解消する責任を果たすことを求めます。

2018年(平成30年)7月31日

京  都  弁  護  士  会

会長  浅  野  則  明


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