声明

成年年齢を引き下げる「民法の一部を改正する法律」成立に伴い消費者取引被害の予防及び救済のための対応を求める会長声明(2018年8月22日)


1  2018年(平成30年)6月13日、第196回通常国会において、「民法の一部を改正する法律」(以下「本法律」という。)が成立し、民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることとなった。本法律は2022年4月1日より施行される。
当会は、2017年(平成29年)1月26日付け「消費者取引被害の予防及び救済の観点からみた民法の成年年齢の引下げに関する意見書」において、消費者取引被害の予防及び救済の観点からみて、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることについて反対する意見を発出した。
それにもかかわらず、本法律の成立により民法の成年年齢が引き下げられることになったことには、極めて遺憾である。

2  当会は、上記意見書において、民法の成年年齢の引下げに伴う最も大きな問題として、未成年者取消権の喪失の問題を指摘した。
すなわち、未成年者取消権は、未成年者が違法もしくは不当な契約を締結するリスクを回避するに当たって絶大な効果を有しており、かつ、未成年者に対してそのような契約締結を勧誘しようとする事業者に対しては強い抑止力となっている。民法の成年年齢を引き下げることで、18歳、19歳の若年者から未成年者取消権を喪失せしめた場合には、これらの若年者に対する消費者被害の拡大が必至となるものといえる。
そして、現状においては、現行の未成年者取消権に代替する消費者保護施策が未だ十分に実施されていない。本法律と同じく上記国会で成立した「消費者契約法の一部を改正する法律」において、消費者が不安を抱いていることや勧誘者に対して恋愛感情等を抱いていることにつけ込んだ勧誘を理由とする取消権やいわゆる霊感商法を対象とする取消権が追加されたものの、いずれも適用場面を個別具体的な勧誘態様に限定した規定であり、未成年者取消権喪失に対する手当としては不十分である。
ついては、上記本法律施行日から民法の成年年齢を引き下げるとするならば、上記の問題を解消するために、参議院法務委員会の平成30年6月12日付け「民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」でも決議されているとおり、以下の事項等の若年者の消費者被害を防止し、救済を図るための必要な法整備を行うことについて、いずれも早急に検討し、必要な措置を講じるべきである。すなわち、①消費者の知識・経験・判断力不足等に乗じて契約をさせるつけ込み型勧誘行為に対する一般的な取消権の導入、②消費者契約法3条1項2号の事業者の情報提供における考慮要素について、考慮要素と提供すべき情報の内容との関係性を明らかにした上で、年齢、生活の状況及び財産の状況についても要素とすること、及び、③特定商取引法の対象となる連鎖販売取引及び訪問販売について、内閣府消費者委員会の提言を踏まえ、若年者の判断力の不足に乗じて契約を締結させる行為を行政処分の対象とするか、または、同行為が現行の規定でも行政処分の対象となる場合はこれを明確にするために必要な改正を行うこと等が求められる。

3  また、当会は、上記意見書において、若年者の消費者被害の予防・救済のための消費者関係教育の施策も、未だ十分な実施がなされておらず、また、その効果が浸透しているとは言い難いことを指摘した。
この問題についても、上記本法律施行日までに、小学校、中学校、高等学校及び大学等の教育機関における生徒及び学生に対するもののみならず、保護者、教育関係者及び事業者に対しても、十分な消費者関係教育が実施され、その効果が浸透したことまで確認できるよう、早急に必要な措置を講じるべきである。
上記附帯決議でも、自立した消費者を育成するための教育の在り方を質量共に充実させるという観点から、小学校、中学校及び高等学校における教育を充実すること等の所定の事項につき留意することが決議されている。

4  また、当会は、上記意見書において、民法の成年年齢引下げについての国民のコンセンサスが得られておらず、この問題についての国民の関心が高まっているともいえないことを指摘した。
この問題についても、上記本法律施行日までに、民法の成年年齢引下げ、それに伴う問題及びその手当につき、国民への十分な周知が行われるよう、早急に必要な措置を講じるべきである。
上記附帯決議でも、18歳、19歳の若年者に理解されやすい形で周知徹底を図ることが決議されている。

5  さらに、これらの施策が十分に実施されるためには、相応の予算を必要とするところ、現状、消費者行政予算については、地方消費者行政にかかる予算が削減される等極めて不十分な状況にある。
実効性ある十分な施策の実現のためには、その前提となる十分な予算が確保されるべきである。

6  以上のとおり、当会は、本法律が成立したことにより、上記各問題点が現実化することに対して強い懸念があることを改めて表明するとともに、本法律の施行日までに上記各問題点を実質的に解決する実効性ある十分な施策の実現がなされること、及び、その前提となる消費者行政予算が確保されることを強く求めるものである。

2018年(平成30年)8月22日

京  都  弁  護  士  会

会長  浅  野  則  明


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