意見書

「地方消費者行政に対する財政支援の継続・拡充を求める意見書」(2018年8月22日)


2018年(平成30年)8月22日


衆議院議長                                大  島  理  森  殿
参議院議長                                伊  達  忠  一  殿
内閣総理大臣                              安  倍  晋  三  殿
財務大臣                                  麻  生  太  郎  殿
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)  福  井      照  殿
消費者庁長官                              岡  村  和  美  殿
消費者委員会委員長                        高          巖  殿


京  都  弁  護  士  会

会長  浅  野  則  明



地方消費者行政に対する財政支援の継続・拡充を求める意見書



第1  意見の趣旨

1  国は、2018年度(平成30年度)の地方消費者行政に係る交付金減額が地方公共団体の消費者行政に及ぼす影響を具体的に把握するとともに、同年度本予算で確保できなかった交付金額について、補正予算で手当てすべきである。

2  国は、2019年度(平成31年度)の地方消費者行政に係る交付金を、少なくとも2017年度(平成29年度)と同水準で確保すべきである。

3  国は、地方公共団体が実施する消費者行政機能のうち、消費生活相談情報を受け、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録したり、悪質業者・違反業者に対する行政処分を行ったりすることの効果が、地域の消費者のみならず、国の消費者政策の推進にもつながることを踏まえ、その費用について国の恒久的な財政措置を講じるべきである。

第2  意見の理由

1  消費者被害の現状
全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談の件数をみると、2017年(平成29年)は91.1万件となっており、前年と比べ1.9万件増加し、依然として高水準で推移している。また、2017年(平成29年)の1年間の消費者被害・トラブル額は、「既支払額(信用供与を含む。)」ベースで約4.9兆円にもなっている。
他方、2016年度(平成28年度)の京都府(消費生活安全センター及び各広域振興局)の消費生活相談窓口で受け付けた相談件数は5,630件で、過去5年間6千件弱で推移し、市町村を含めた府内の消費相談窓口で受け付けた相談件数は約2万件弱で推移している。このように京都府下でも、消費者被害はなお減少しておらず、むしろ、高齢化及び情報通信技術の発達により、高齢者の被害やインターネットトラブル等で解決が困難な被害も増加しているような状況にある。

2  地方消費者行政の役割
国及び地方公共団体は、消費者の保護・救済を図るべく、いずれも消費者政策を推進する責務を負うものであるが、上記のような消費者被害の現状の中で、消費者行政の果たすべき役割は一層大きなものとなっている。
この点について、京都府では、複雑化・困難化する消費生活相談に対応し、その早期解決を図るため、府・市町村の職員・相談員と京都弁護士会の弁護士が連携し、法令解釈など専門的観点でのサポート体制を整え、特に困難な事案の処理については、必要に応じ弁護士を中心にしたあっせん会議を開催するなど、全国的にも先進的な取り組みを実施してきた。さらに、消費者の啓発・教育についても、京都府下で活発に活動している適格消費者団体その他の消費者団体と協同して実施し、消費者被害の予防・救済を実効的に図るとともに、これらの団体への多くの支援も行ってきたものである。

3  交付金の減額による地方消費者行政の縮小・減退
京都府下において、上記のような先進的な取り組みが進められ、地方消費者行政の役割が十分に果たされてきた背景には、2008年度(平成20年度)から開始された「地方消費者行政活性化基金」の交付措置がある。2014年度(平成26年度)からは「地方消費者行政推進交付金」に移行し、2015年度(平成27年度)及び2016年度(平成28年度)は50億円、2017年度(平成29年度)は42億円が予算計上(補正予算を含む。)されていた。
そして、国は、消費者基本計画(2015年(平成27年)3月24日閣議決定)を踏まえ、どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられ、安全・安心が確保される地域体制を全国的に整備することを目指した「地方消費者行政強化作戦」を推進するため、これまで交付金を通じて、地方公共団体における消費者行政推進のための計画的・安定的な取組を支援する旨を表明しつつ、その政策目標の達成を地方公共団体へ促してきた。このような国の政策にも応じて、交付金によって財政面で支えられることにより、京都府その他の地方公共団体における消費者行政は積極的に推進されてきたのである。
ところが、このように地方消費者行政の推進に重要となっている交付金に関し、2018年度(平成30年度)、消費者庁は、地方消費者行政推進交付金30億円、新規の地方消費者行政強化交付金10億円の概算要求をしていたものの、予算案では、2つの交付金を合わせて24億円しか確保することができず、地方公共団体の要請に国が全く応えられていない結果となった。
この交付金減額という結果によって、これまで国と地方公共団体が共に実施してきたはずの消費者行政の推進政策は、突如として大きな方向転換を余儀なくされており、本来であればより一層の拡充が求められるはずの相談体制や消費者教育・啓発活動が、いずれ縮小・減退の道をたどることは必至である。

4  地方消費者行政と国の責務
地方消費者行政は、自治事務として位置づけられるが、そもそも消費者政策は、国と地方公共団体が共にこれを担い、推進していくべきものであり、地方公共団体の自主財源のみに委ねればよいというものではなく、国と地方公共団体の両者がその責務を果たすために、国による財政支援が必要となるのである。
また、消費生活相談情報を受け、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録したり、悪質業者・違反業者に対する行政処分を行ったりする事務については、全国的な被害の予防、市場の公正確保など、国の消費者行政事務を地方で分担しているという側面も同時に有しているものであり、その費用については、国による恒久的な財政措置が図られるべきものである。
さらに、2018年(平成30年)6月13日に成立した「民法の一部を改正する法律」による成年年齢引下げとの関係でも、同法の附帯決議の中で「若年者の消費者被害への相談体制の強化・拡充、情報提供、消費者教育の充実を実現するため、地方消費者行政について十分な予算措置を講じること」等が求められており、国の消費者行政推進という観点からも、地方消費者行政の果たす役割はますます大きくなっており、交付金を減額するどころか、予算措置の必要性は一層高まっているのである。

5  結論
以上のとおり、交付金が縮減され、財政的な支えを失うことにより京都府その他の地方公共団体による地方消費者行政が受ける影響は大きく、消費者保護のための各事業の減退は避けられないのであって、高止まりする消費者被害を予防・救済し、消費者が安心して生活できる地域づくりを行うため、京都府その他の地方公共団体がその役割を十分に果たすことができるようにするためにも、国は、意見の趣旨記載の措置を講じるべきである。

以  上



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