意見書

いわゆる「預託商法」を金融商品取引法の適用対象として明確化する同法の改正を求める意見書(2018年10月18日)


2018年(平成30年)10月18日


内閣府特命担当大臣(金融)麻生  太郎  殿
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)宮腰  光寛  殿
金融庁長官  遠藤  俊英  殿
消費者庁長官  岡村  和美  殿
内閣府消費者委員会委員長  高    巌  殿


京  都  弁  護  士  会

会長  浅  野  則  明



いわゆる「預託商法」を金融商品取引法の適用対象として明確化する
同法の改正を求める意見書



第1  意見の趣旨
    預託商法のうち、事業者による物品の販売と、販売業者又はその関連業者が収益の配当を約して当該物品の預託を受けることが一体的に行われている形態のものについては、金融商品取引法の「集団投資スキーム」に該当すること並びに登録制及び行為規制の適用対象となることを明確にするよう、金融商品取引法及び関係法令を改正すべきである。

第2  意見の理由
1  預託商法とその問題点について
(1)預託商法の定義
「預託商法」とは、消費者が購入した商品を、販売業者やその関連会社に預託して運用を委託し、運用に基づく配当その他の経済的利益を受ける取引である。
和牛オーナー商法や健康食品、自動販売機などを商材とした預託商法の被害はこれまでにも発生してきているところであるが、近年の事例では、パチンコ型スロットマシン機、太陽光発電パネル、コンテナ、カード決済端末機、加工食品などの商品を利用した商法が確認されている。
  (2)預託商法の問題点
これら預託商法の多くは、消費者が業者から商品を購入し、同時に購入した商品を業者に一定期間レンタルするなどの契約を締結しているものの、商品の引渡しや所有権移転は著しく形骸化しており、実質的には、消費者が「第三者への商品のレンタル事業」に対し出資をし、当該事業の収益からの配当を受領するという投資契約としての側面がますます顕著になりつつあると言える。
このような預託商法においては、消費者は購入した商品が現存するか否かも確認できないし、当該商品が運用されている実態も把握できない。そのため、購入した商品が実際には存在しなかったり、運用する事業の実態を欠いたりするケースが多く、いずれ業者が破綻し、約束どおりのレンタル料はおろか元金すら返還されないという事態が頻繁に生起している。
(3)被害事例等
預託商法による過去の被害事例としては、豊田商事事件(金地金の預託、被害者数約3万人、被害総額約2000億円)、安愚楽牧場事件(和牛の預託、被害者数約7万3000人、被害金額約4207億円)、ジャパンライフ事件(磁気治療機器商品等の預託、被害者数約7000人、被害金額約2400億円)などが存在し、いずれも被害金額が高額であり、被害者数も多い大規模消費者被害を引き起こしている。
  (4)ジャパンライフによる大規模消費者被害について
これらの預託商法による被害のうち、ジャパンライフ事件は、主に高齢者をターゲットに「レンタルオーナー制度」を全国展開(80店舗)していたジャパンライフ株式会社(以下「ジャパンライフ」という。)が、消費者庁から4度の行政処分を受けたにもかかわらず事業を継続していたところ、2017年12月26日に銀行取引停止処分を受け実質的に破綻するに至り、債権者申立てにより、東京地方裁判所にて、2018年3月1日付けで破産開始決定がなされたというものである。
ジャパンライフの「レンタルオーナー制度」は、顧客が磁気治療機器商品等を購入し、購入した顧客が購入した商品を同社に預託した上で、第三者(レンタルユーザー)に賃貸することによって、顧客に賃貸料が支払われるという取引であり、典型的な「預託商法」である。
  (5)ケフィアによる消費者被害について
さらに最近では、高齢者を中心に「オーナー制度」を展開していた株式会社ケフィア事業振興会(以下「ケフィア」という。)について平成30年8月31日に消費者庁から消費者等に注意喚起が行われたが、その後、ケフィアは経営が破綻し、東京地方裁判所に自己破産申立が行われ、平成30年9月3日には、関連会社3社とともに破産開始決定がなされた。
ケフィアの「オーナー制度」は、ケフィアが消費者と買戻特約付売買契約を締結し、形式上は消費者が干し柿、メープルシロップ、ジュース、ぬかどこ、ヨーグルト等の加工食品のオーナーとなり、通常、契約から半年程度に設定される買戻日が到来すると、ケフィアが買い戻し、契約時に支払った金額の10パーセント程度を加算した「買戻代金」が消費者に支払われるという取引である。
同社のオーナー制度は、形式上は買戻特約付売買契約であるものの、売買契約後も対象商品がオーナーに引き渡されることなく、そのままケフィアが買い戻すことになるのであるから、消費者が購入した商品は販売業者に預託されているといえることに加えて、運用委託についても、予め期日を定めた買戻の際に10パーセント程度の利回りを加算した買戻代金が支払われることから、当該利回りの発生を合理的に説明するためには、オーナーが運営を委託し、運用に基づく配当その他経済的利益として当該利回りを受け取るとみるほかなく、その実態は「預託商法」と異なるところはないと考えられる。
なお、契約書上は消費者が買戻代金の支払いではなく商品の現物の引き渡しを受けるコースを選択することもできるものの、消費者庁によれば、ケフィアが提出した資料では、平成28年4月以降の契約では現物の引渡しを選択した消費者が見当たらないというのであるから、コースを選択できることが「預託商法」であることを否定する理由とはならない。
ケフィアによる被害者数及び被害総額は、平成30年9月13日時点ではまだ明らかではないが、報道等によれば、被害者数3万人超、被害額1000億円超とされている。

  2  預託商法による消費者被害が抑止できていないこと
このような被害の発生から明らかであるとおり、現行の法制度は、預託商法による消費者被害を効果的に抑止し得ていない。
これに対して、日本弁護士連合会は、安愚楽牧場事件を受けて、2013年(平成25年)3月14日付けで「預託商法被害と特定商品等の預託等取引契約に関する法律の改正の在り方に関する意見書」を公表し、特定商品預託取引法の抜本的改正の必要性を指摘した。
しかし、その後も改正はなされず、再び、ジャパンライフ事件のような大規模な消費者被害が発生することとなった。
その後、日本弁護士連合会は、さらなる被害の発生を防止するため、2018年(平成30年)7月12日付けで「いわゆる『預託商法』につき抜本的な法制度の見直しを求める意見書」を内閣府特命担当大臣(金融)、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長宛に提出し、①預託商法のうち、事業者による物品の販売と、販売業者又はその関連業者が収益の配当を約して当該物品の預託を受けることが一体的に行われている形態のものについては、金融商品取引法の「集団投資スキーム」に該当すること並びに登録制及び行為規制の適用対象となることを明確にするよう、金融商品取引法及び関係法令を改正すべきこと、②投資型ファンドと同様の運用規制(忠実義務・善管注意義務、自己取引等の禁止、分別保管、運用報告書の交付等)を導入すること、③不招請勧誘禁止を導入することを求めた。
しかし、現時点でも、法改正はなされておらず、ケフィアによる消費者被害が発生している状況にある。
そこで、これ以上の消費者被害を防止するために、今回こそ、真に実効性のある法制度の改正が、早急に行われるべきである。

  3  現行の法制度の状況とその問題点
預託商法に関連する法規制としては、特定商品預託取引法及び金融商品取引法が存在するが、以下に述べる問題点から、現行法では預託商法による被害の発生を効果的に抑止することはできていない。
(1)特定商品預託取引法について
豊田商事事件を契機に制定された「特定商品等の預託等取引契約に関する法律」は、政令指定商品について、3か月以上の期間にわたり、政令指定商品の預託及び当該預託に関し財産上の利益を供与することを約し、契約者(消費者)がこれに応じて当該商品を預託することを約する契約を預託等取引契約と定めている。その上で、同法は、預託等取引契約に対し、①正確な情報提供(書面交付義務、業務・財務書類閲覧等)、②契約離脱権(クーリング・オフ、中途解約権)、③行為規制(不当行為の禁止)を定めているほか、行政権限として、指示対象行為の規制(同法第5条)、報告徴収・立入検査権(同法第10条)、業務停止命令・指示処分(同法第7条)といった規制を定めている。
しかし、特定商品預託取引法による規制は、政令指定商品にしか及ばないため、次々と新たな商品を利用して悪質な預託商法を行う業者に対して、有効な規制を行うことができていない状態にある。
また、特定商品預託取引法においては、参入規制(登録制等)は導入されておらず、主務省庁に対する業者の定期的な報告義務等は定められていないから、その規制内容も、被害を防止するためには不十分である。
(2)金融商品取引法について
預託商法は、商品の預託を受けて運用し利益配当を行う点で、金融商品取引法の「集団投資スキーム」に該当する可能性がある。
  ア  金融商品取引法における集団投資スキームについて
「集団投資スキーム」とは、①契約形式を問わず、出資者から「金銭」又は「金銭に類するもの」(有価証券、手形、拠出した金銭の全部を充てて取得した物品)の出資・拠出を受け、②その財産を用いて事業・投資を行い、③当該事業・投資から生じる収益などを出資者に分配する仕組みであり、かかる仕組みに関する権利(集団投資スキーム持分)を有価証券として扱う旨定義されている(金融商品取引法第2条第2項第5号 、金融商品取引法施行令第1条の3第4号 、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第5条 )。
類型としては、金銭拠出型集団投資スキーム(出資を受けた金銭を用いて各種事業を行うもの)、有価証券拠出型集団投資スキーム(金銭の代わりに有価証券を拠出するもの)(金融商品取引法施行令第1条の3第1号から第3号)、購入物品拠出型集団投資スキーム(顧客が金銭を拠出し、事業者が顧客のために対象物品を購入し、顧客が所有する対象物品を用いて事業を行い配当する取引)(金融商品取引法施行令第1条の3第4号)が挙げられている。
この点、預託商法は、法形式上では、顧客が事業者から商品を購入し、これを事業者に預託するという形態であるため、上記の購入物品拠出型集団投資スキームに該当することとなる
イ  集団投資スキームの問題点と解釈による対応について
しかし、現行法令では、購入物品拠出型集団投資スキームとして、競走用馬のみが指定されている(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第5条)にとどまり、これ以外の物品については規制が及んでいない。したがって、形式的に条文を解釈する限りにおいては、競走馬以外の物品を対象とする預託商法は、集団投資スキームの規制対象に該当しないように見える。
この問題に対しては、従前より、解釈論として、一定の預託商法については、集団投資スキームに該当するとの見解が有力に唱えられており(黒沼悦郎「金融商品取引法」(有斐閣・2016年)41頁、金融商品取引法研究会・研究記録第28号「集団的投資スキーム(ファンド)規制」5頁~6頁、神田秀樹・黒沼悦郎・松尾直彦編著「金融商品取引法コンメンタール(1)-定義・開示制度」(商事法務・2016年)65頁など)少なくとも、商品の特定性・実在性が希薄で実質的には金銭拠出と同視できるような預託商法については、現行法の枠組み・解釈においても、実質的には、「顧客が出資・拠出した金銭」を用いて事業を行うものとして、金銭拠出型集団投資スキームに該当すると考えられている。
ウ  現行法になお存在する問題点
このように、一定の預託商法については、解釈論として、集団投資スキームに該当する余地があるとされているものの、法文上からは預託商法が規制対象となり得ることが明瞭になっておらず、預託商法に対する金融商品取引法の適用を妨げない旨の規定もなく、上記解釈に疑義を生じかねない事態となっているため、金融商品取引法に基づく効果的な法執行の阻害要因となっている。

  4  被害防止に必要となる法規制
現行法令を改正し、預託商法被害を防止するためには、預託商法被害が有する特徴に対応した効果的な法規制が必要となる。
(1)規制対象の拡大
過去の大規模預託商法被害に共通する最大の特徴は、形式上は消費者が商品を購入し、それを業者に預託しているとされているにもかかわらず、実在の商品による裏付けがない、単なるペーパー商法であった点である。
このようなペーパー商法的な詐欺的預託商法が可能となるのは、「事業者による物品の販売と、その業者が収益の配当を約して当該物品の預託を受けることが一体的に行われている場合」である。
この場合には、消費者が拠出した金銭が、真実、商品の購入に充てられているか、購入したとされる商品が実際に存在するのかを、消費者としては確認する術に乏しく、結果として、悪質な業者によるペーパー商法の横行を許す潜在的な危険性が高い。
そこで、商品の実在性・特定性の希薄な預託商法の横行を防止するためには、この形態の取引を適切に規制することが必要不可欠である。
(2)許認可・登録制の導入
預託商法被害においては、消費者からの被害申告による問題の発見を期待していたのでは、被害防止が困難になるという特徴がある。
すなわち、預託商法の顧客は、業者から運用に基づく配当その他の経済的利益の配当を受けている間は、その営業実態に疑問を抱いて相談・調査等の行動をとる意識を持ちにくい。
また、業者も、早期に疑問を抱いた顧客が、解約・返金を求めた場合には、これに応じることによって被害の発覚を免れようとする場合があり、被害の顕在化が遅れる一因となっている。
他方で、このようにして被害が顕在化しない間にも、業者の財務的基盤は、時間の経過とともに、ますます劣化していくことになり、ついには経済的利益の配当が滞り、顧客であった消費者からの被害申告が多発することになるが、その時点では、もはや業者の財務的基盤は失われており、被害の救済は事実上不可能となる。
このような被害実態を前提とした場合、個々の消費者からの被害申告を端緒とした行政権限の行使は必ずしも有効に機能するとは考えられず、被害拡大の効果的な防止のためには、むしろ、継続的・定期的な財務的基盤・業務実態のモニタリングこそが重視されねばならない。
したがって、主務省庁による継続的な監督に服させるための前提として、許認可・登録制の全面的導入が絶対的に必要不可欠である。
その上で、主務省庁が継続的かつ定期的に預託商法業者の財務的基盤・業務実態を把握し得るような法制度の整備がなされなければならない。
(3)契約類型別によらない行政処分
預託商法は、対象となる商品が多種多様であるだけではなく、形式的な契約形態も様々な契約を用いることができる。
そのため、特定の契約類型について業務停止等の行政処分を受けたとしても、業者は形式上の契約形態を変更して、実質的には同じ預託商法が継続することが考えられる。
過去の預託商法による被害事例においても、ジャパンライフは、消費者庁から、預託等取引契約や訪問販売に関して業務を停止されると、形式的に契約形態を業務提供誘引販売取引に変更して業務を継続し、さらに、消費者庁よりこの業務提供誘引販売取引についても業務停止処分を受けると、今度は、「リース債権譲渡契約」なる名称で、ほぼ同様の商法を継続するなどして、4回にわたり消費者庁から業務停止を命ぜられていたにもかかわらず、事業を継続させていた。
したがって、特定商品預託取引法に基づいて契約類型別に行政処分を行うという枠組みでは、業者が同様の事業を継続することを効果的に抑止できないのであるから、一回的な処分により全面的な業務停止を可能とする制度が必要である。
(4)主務省庁への破産申立権限の付与
消費者庁は、ジャパンライフが、2016年度末(2017年3月末)時点において約338億円の債務超過であったことを把握し、これを踏まえて業務停止等の処分を行っていたものの、上記のような同社の対応により、業務継続及び被害の拡大を抑止し得なかった。
もし、主務省庁に破産申立権限が付与されていたならば、かかる事態は防止し得たものと思われる。もっとも、主務省庁が破産申立権限を適切に行使するためには、継続的かつ定期的に預託商法業者の財務的基盤・業務実態を把握し得ることが前提となるため、この点を含めた法制度の整備が不可欠である。

5  金融商品取引法を改正するべきこと
(1)金融商品取引法の規制対象として明示するべきこと
現行法令に存在する問題点及び預託商法の特徴から被害防止のために法規制によれば、預託商法を規制する最も簡便かつ効果的な方法として、商品の実在性・特定性が希薄な預託商法について、包括的に金融商品取引法の「集団投資スキーム」として規制することを明確化する法改正が行われるべきである。
これにより、現在の預託商法が投資取引となっているという実態に合致した規制が行われることを明確にできることに加えて、金融商品取引法において既に整備されている各規制・制度をそのまま活用することができる。
さらには現行の特定商品等預託取引法の枠組みにおける規制よりも実効性が期待でき、現行の金融商品取引法において対象として明示されていないことによって発生している問題点を解決することができる。
(2)金融商品取引法による規制・制度の活用
預託商法が、「購入物品拠出型集団投資スキーム」の一種として、金融商品取引法による規制対象となることを明確化することにより、以下のとおり、金融商品取引法の規制・監督が預託商法に及ぶことも明白となり、預託商法による被害を効果的に防止することが期待できる。
ア  登録制
預託商法業者は、集団投資スキーム持分の自己募集を行う者として、第二種金融商品取引業の登録を要することが明確となる(金融商品取引法第29条)
悪質な預託商法では、スキーム自体が出資法違反の疑いを禁じ得ないものも多いから、登録審査に当たっては、当該スキームが、出資法以下の金融法制に照らし許容されるものか否かについても確認し、事業スキーム自体が出資法に抵触するおそれがあるような場合には登録を認めないという制度運用を行えば、このような悪質な預託商法や業者を入り口の段階で排除することが可能である。
また、登録自体を行おうとしない業者がいたとしても、無登録営業に対する罰則は5年以下の懲役、500万円以下の罰金(併科あり)であり、無登録で営業したということだけで摘発できるので、違反の場合は迅速な対応が可能であるほか、無登録業者による未公開有価証券の売り付け等について原則無効としている現行法の規制(金融商品取引法第171条の2第1項)を、預託商法の無登録営業に対しても行えば、民事効による解決も期待できる。
イ  行為規制
預託商法業者は、第二種金融商品取引業者として、以下のとおり各種行為規制が課せられることが明白になるから、被害発生の防止が期待できる。
・顧客に対する誠実義務(金融商品取引法第36条第1項)
・名義貸しの禁止(同法第36条の3)
・広告等の規制(同法第37条)
・契約締結前の書面の交付(同法第37条の3)
・契約締結時等の書面の交付(同法第37条の4)
・断定的判断の提供の禁止(同法第38条第2号)
・説明義務(同法第38条第9号、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1号)
・内閣府令で定める行為の禁止(同法第38条第9号)
・適合性の原則等(同法第40条)
・分別管理が確保されていない場合の売買等の禁止(同法第40条の3)
・金銭の流用が行われている場合の募集等の禁止(同法第40条の3の2)
ウ  主務省庁による監督及び破産申立権限
第二種金融商品取引業者に対しては、以下のとおり、主務省庁の恒常的かつ継続的な監督権限が整備されている上、被害発生の懸念が生じた場合には、事業継続そのものを強制的に停止させる権限も主務省庁に付与されている。
これらの権限を主務省庁が預託商法業者に対して行使できることが明白になれば、被害拡大の防止が期待できる。
(ア)事業年度ごとに事業報告書を提出(同法第47条の2、金融商品取引業等に関する内閣府令第182条第1項)
第二種金融商品取引業者に対しては、少なくとも、事業年度ごとの事業報告書の提出が義務付けられており、恒常的な監督に服させることが可能となっている。なお、事業報告書の提出義務違反、虚偽の記載をした報告書の提出については、1年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科可能)が科せられている。
(イ)報告の徴取及び検査(同法第56条の2)
本条に基づき、モニタリング調査票(①ファンド名、②業者区分、③取り扱う業務、④ファンドの形態、⑤運用期間に関する事項、⑥販売形態、⑦権利者に関する事項、⑧直近1年間の募集等の額、⑨運用財産額に関する事項、⑩純財産額に関する事項、⑪商品分類に関する事項、⑫投資対象に関する事項)の提出が求められている(金融商品取引業者向けの総合的な監督指針Ⅱ-1-1(4))
(ウ)緊急差止・停止命令(同法第192条)
金融商品取引法違反を早い段階で差止め、被害の拡大を防ぐ手法として効果が期待できる。なお、裁判所への申立て権限は、金融庁長官から証券取引等監視委員会に委任されている。
この命令は、無登録業者による未公開株の勧誘、集団投資スキーム持分の募集・私募・運用、適格機関投資家等特例業務届出者の行為規制違反などについて申立てられた実績がある(2012年5月22日開催の第89回消費者委員会資料3「金融商品取引法違反行為に係る裁判所への申立て(実施状況)」)。
また、この命令の違反は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科、法人は3億円以下の罰金等が科せられている。
(エ)破産申立権限
詐欺的ファンド商法等による被害の増加を受け、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律が2010年(平成22年)に改正され、第二種金融商品取引業者に対する申立ても可能となった。改正前の同法に基づく金融庁による破産申立事例として、2000年(平成12年)3月の南証券株式会社、2008年(平成20年)3月の日本ファースト証券株式会社がある。
エ  自主規制団体(第二種金融商品取引業協会)によるモニタリング
第二種金融商品取引業の登録には、自主規制団体である第二種金融商品取引業協会への加入(もしくは、協会の定款その他の規制に準ずる内容の社内規則の作成)が要件とされているところ、同協会は、会員に対するモニタリングにおいて、①法令の規定を遵守させるための会員及び金融商品仲介業者に対する指導・勧告等、②会員及び金融商品仲介業者及び金融商品仲介業者に関し、契約内容の適正化、資産運用の適正化、その他投資家の保護を図るため必要な調査、指導、勧告等、③会員及び金融商品仲介業者の金融商品取引法若しくは同法に基づく命令若しくはこれらに基づく処分若しくは定款その他規則又は取引の信義則の遵守の状況の調査などを行っており、行政による監督・指導との相互補完が期待できる。
オ  民事効
預託商法が購入物品拠出型集団投資スキームとして、金融商品販売法の規制に服することが明白となり、同法の規制、民事効(説明義務、断定的判断・確実性誤認勧誘の禁止、損害額と因果関係の推定)が及ぶことが明らかとなるから、被害救済に資することが期待できる。

6  具体的な改正試案
金融商品取引法の集団投資スキーム持分の定義は、前述のとおり、「金銭等の拠出」、「事業等の実施」、「配当等の分配」の三つが要件とされているところ、預託商法では、消費者から拠出させるのは形式上では金銭ではなく「物品」であり、かつ、事業者が行うとされているのは当該物品の「預託を受けて行う」レンタル業その他の「事業」である。
したがって、上記定義のうち、「金銭等の拠出」、「事業」の各要件において、預託商法(事業者による物品の販売と、その事業者が収益の配当を約して当該物品の預託を受けることが一体的に行われている形態のもの)が対象となる旨を疑いなく明確にするよう、以下のとおり法文を改正するべきである。
(1)「金銭等の拠出」の要件について
ア  金融商品取引法施行令第1条の3第4号を以下のとおり改正するべきである。
「四  法第二条第二項第一号、第二号、第五号又は第六号に掲げる権利を有する者から出資又は拠出を受けた金銭(前三号に掲げるものを含む。)の全部を充てて取得した物品(予め預託を受けることを約して出資者等において物品を購入させた場合を含む)。」
イ  金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令第5条は、削除するべきである。
(2)「事業」の要件について
金融商品取引法第2条第2項第5号を以下のとおり改正するべきである。
「民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項に規定する組合契約、商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第三条第一項に規定する投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)第三条第一項に規定する有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。)のうち、当該権利を有する者(以下この号において「出資者」という。)が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行う事業(出資又は拠出をした金銭で取得した財産の預託を受ける事業も含む。)(以下この号において「出資対象事業」という。)から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であつて、次のいずれにも該当しないもの(前項各号に掲げる有価証券に表示される権利及びこの項(この号を除く。)の規定により有価証券とみなされる権利を除く。)(以下略)」

以  上



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