声明

死刑執行に関して適正手続の保障及び情報公開の実現と、これらが実現するまで死刑執行の停止を求める会長声明(2018年10月18日)


1  政府は、2018年7月6日、東京拘置所、大阪拘置所、広島拘置所及び福岡拘置所において合計7名に対し、同年7月26日には東京拘置所、名古屋拘置所及び仙台拘置所において合計6名に対して死刑を執行した。
  今般執行対象となった13名は、いわゆるオウム真理教事件により死刑判決を受けた死刑確定者であった。その中には、法務大臣は個別の再審請求の有無について明らかにしないが、多数の再審請求中の者を含んでいる。
また、1名については、日本弁護士連合会が、人権救済申立てに関する調査の結果を踏まえて、心神喪失の状態にある疑いがあるので、死刑の執行を停止するよう勧告した者も含まれていた。

2  国際人権(自由権)規約委員会は、2014年7月24日に発表した同規約の実施状況に関する第6回日本政府報告書に対する総括所見(パラグラフ13)において、「(d)死刑事例における再審あるいは恩赦の請求に執行停止効果を持たせつつ、義務的かつ実効的な再審査制度を創設すること」「(e)死刑確定者の精神状態を把握するための独立した仕組みを構築すること」等を勧告していた。
再審請求中の死刑確定者に対する死刑執行は、1999年12月の執行以降、17年半もの間、運用上回避され続けてきたが、政府は、2017年7月13日、同年12月19日にいずれも再審請求中であった者の死刑を執行し、さらに今般、多数の再審請求中の者を含む13名に対して連続して大量の死刑執行を行ったものである。かかる執行のあり方は、わが国が締結する条約である国際人権(自由権)規約に基づく上記勧告の内容に正面から反するものである。
また、政府は、上記総括所見に対するコメントにおいて、死刑確定者に対しては常に注意が払われ、慎重な配慮がなされており、心身の状況の把握に努めていること等を理由に、死刑確定者の精神状態を把握するための独立した仕組みを構築する必要はないと回答したが、独立した仕組みが存しない以上、心神喪失者に対する執行停止(刑訴法479条1項)の手続的適正は担保されない。
  今回の執行対象となった13名はいずれも、犯罪史上未曾有の重大凶悪事件を主謀し又は重要な役割において関与したとされた者であるが、いかなる事件においても、またいかなる人に対しても、審理から執行に至るまで、手続的適正は厳格かつ十全に保障されなければならないことは当然である。

3  さらに、法務大臣は、今般の執行について、「鏡を磨いて、磨いて、磨いて、磨き切るという心構えで慎重にも慎重な検討を重ねたうえで、命令を出した」と述べるが、執行対象者及び時期の選定などの検討内容、命令に至る手続、執行の実態など重要な情報は一切明らかにされていない。主権者である国民が、死刑制度について主体的に議論し判断をするために必要なことは、死刑に関する情報が十分に公開されることである。

4  よって、当会は、政府に対し、再審請求に死刑の執行停止の効果を持たせることによって死刑事件に関する適正手続の保障を十全なものとすること、及び、死刑確定者の精神状態を把握するための独立した仕組みを構築することにより死刑確定者の処遇及び執行に関する手続的適正を確保することを求める。
  さらに、当会は、既に「死刑に関する情報公開と議論の活発化を求める会長声明」(2015年3月26日)で求めているところであるが、政府に対して、死刑に関する情報を広く公開し、死刑制度についての議論を活発化させた上で、国際社会からの勧告に対して責任をもって答えるよう、改めて求める。
  そして、これらの制度改革等を何ら検討することもなく、また、死刑に関する情報を広く公開することもなくなされた今般の死刑執行に対して抗議するとともに、それらが実現するまでの間、死刑の執行を停止することを求める。

2018年(平成30年)10月18日

京  都  弁  護  士  会

会長  浅  野  則  明


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