陸上自衛隊のイラク派遣命令に反対する声明(2004年1月9日)


  石破茂防衛庁長官は、本日、イラク特措法に基づき、陸上自衛隊をイラクへ派遣する命令を発し、報道によれば、今月15日にも陸上自衛隊約30名が日本を出発し、数日中にイラク南東部のサマワへ入る予定とされている。
  当会は、そもそもイラク特措法が、自衛隊をイラクへ派遣してイラクにおける武力行使を容認するものであるから、武力の行使を禁止した憲法9条に違反するおそれが極めて大きいとして、その制定に反対し、昨年7月4日、その廃案を求める会長声明を発表した。
  また、当会は、自衛隊のイラク派遣を盛り込んだ基本計画の閣議決定に対し、自衛隊の派遣は、憲法9条のみならず、イラク特措法の基本原則からしても許されるものではないとして、昨年12月9日、自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明を発表した。
  現在のイラクの状況は、未だに米英の連合軍とその占領統治に反対する勢力との間で戦闘状態にあり、イラク全土が戦闘地域となっている。
  こうした状況のイラクにおいて、陸上自衛隊員約30名が武器を携帯し、軽装甲機動車8台を投入し、バクダッドでCPA(連合軍暫定当局)との調整を行うという形での活動が展開されるならば、米英軍によるイラク攻撃を支持し続けている政府の態度とも相まって、日本は、占領統治している米英軍への積極的な協力者であるとみられ、その結果、米英軍の占領統治に反対する勢力が自衛隊を攻撃し、攻撃された自衛隊が武器を使用して反撃するという事態が発生するおそれが大きく、それは、憲法9条が禁ずる武力による威嚇または武力の行使そのものに他ならない。
  また、イラク特措法では、自衛隊の対応措置は、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域(非戦闘地域)において実施するとされ、武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならないとの基本原則を定めているから、上記基本原則に照らせば、現状のイラクへの自衛隊の派遣は許されないはずである。
  政府は、今回の陸上自衛隊の派遣の主たる目的はイラクの復興支援であると説明するが、基本計画では安全確保活動をも目的としており、実際には米英軍への支援活動が主要なものとなる可能性が高い。また、派遣予定先付近で暴動が発生している状況に照らせば、陸上自衛隊は厳重な警戒態勢をとるほかないが、そのようなもとで行う活動がイラク国民のための復興支援に真に資するものとは到底考えられない。
  陸上自衛隊の派遣は、憲法9条に反するのみならず、イラク特措法の基本原則にも明らかに反する違憲違法の措置であり、絶対に許されないものである。
  当会は、陸上自衛隊をイラクへ派遣する命令の撤回を求めるとともに、あらためて、自衛隊をイラクへ派遣することに強く反対するものである。

        

2004年(平成16年)1月9日

                
京都弁護士会  会長   塚    本    誠    一


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