自衛隊のイラクからの即時撤退を求める会長声明(2004年5月21日)
本年5月10日、陸上自衛隊が宿営しているイラク南部のサマワにおいて、オランダ軍への手りゅう弾攻撃がありオランダ兵1名が死亡した。また、5月14日夜から15日未明にかけて、オランダ軍がイスラム教指導者ムクタダ・サドル師支持派の民兵組織から、ロケット弾による攻撃を受け、銃撃戦が展開された。そのため、陸上自衛隊は宿営地に引きこもって防護を固め、宿営地外での活動を中止する状態になっている。5月13日には、陸上幕僚長が定例記者会見で、「手りゅう弾攻撃が身近な場所で起きており、一刻も油断できない状況にある」ことを認めている。
また、最近のマスコミ報道によると、内閣法制局は福田内閣官房長官(当時)に、本年4月、イラク全土で米軍と武力衝突を繰り返している上記サドル師支持派を、「国に準じる者」であるとする解釈を報告していたとのことである。この解釈によれば、サマワにおけるサドル師支持派による攻撃や応戦は「国に準じる者による組織的計画的な戦闘」行為と解され、サマワはイラク特措法2条3項の非戦闘地域には該当しないことになる。
当会は、2003年(平成15年)12月9日、本年1月9日の2回にわたり、イラク特措法そのものが武力行使を禁止した憲法9条に違反するおそれが極めて大きいことのほか、政府による自衛隊のイラク派遣は、憲法9条に違反するおそれが大きく、かつ、戦闘地域への派遣を禁じているイラク特措法の枠組みに照らしても許されないとして、自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明を発表した。サマワの最近の状況は、当会が各声明で危惧したことが現実化し、自衛隊員の安全についても極めて憂慮すべき事態となっている。法の枠組みに照らし、自衛隊はもはやイラク国内にとどまることは許されず、直ちにわが国へ撤退すべきである。万一自衛隊員に危害が及ぶなら、それは内閣総理大臣及び防衛庁長官に対し、自衛隊員の安全配慮義務を課したイラク特措法9条に明らかに違反する事態であるといわなければならない。
当会は、イラクへ派遣された自衛隊の活動の中断を命じ、派遣命令を取り消し、即時撤退させることを強く求めるものである。