自衛隊の多国籍軍参加に反対する会長声明(2004年7月22日)


  政府は、イラクに駐留中の自衛隊を、国連安全保障理事会決議1546号に基づき編成される多国籍軍に参加させる閣議決定を行い、6月28日の主権移譲の後、自衛隊を多国籍軍へ参加させている。
この多国籍軍は、「イラクにおける安全と安定を維持するのに役立つあらゆる必要な措置をとる」ことを主な任務とし、武力行使も含めた治安維持活動を行う軍隊であり、人道支援や復興支援活動は附随的な任務に過ぎない。
  政府は、この決定に際し、自衛隊の参加は、憲法との関係で「多国籍軍の業務のうち武力の行使を伴わない業務に限って、他国の武力の行使と一体化しないということが確保される形で行う」とし、自衛隊は多国籍軍の指揮下には入らず独自の指揮権を持つこと、活動は非戦闘地域に限定されること、イラク特措法に定める人道復興支援活動に限ること、他国の武力行使と一体化しないこと、などの条件を付して多国籍軍への自衛隊の関与を限定すれば、憲法上も問題はないとする。
そして、政府は、上記安保理決議の「under  unified  command」という英文を「統合された司令部の下に」と訳して自衛隊は多国籍軍の司令部の指揮下に入らないことの根拠とし、また、自衛隊が多国籍軍の指揮下に入らずに独自の指揮権を持つことは米英両政府の口頭了解を得ているので、上記条件を満たしているとする。
しかし、「under  unified  command」は、「統一された指揮の下に」と訳すのが一般的であり、上記のような訳ができるのか疑問がある。しかも、多国籍軍は軍隊であるから、その司令部が、参加している各国の部隊を指揮下におくのは当然である。自衛隊が多国籍軍へ参加することは、自衛隊がわが国政府の指揮下にあると同時に、最終的には多国籍軍の司令部の指揮権に服することを意味する。
また、米英両政府の口頭了解といってもあくまで非公式かつ口頭のものであり、しかも、了解をとったという米英の高官の氏名も明らかにされていない。よって、仮にこの了解が考慮されるとしても、あくまで運用上の考慮に過ぎず、法的に自衛隊が多国籍軍の司令部の指揮下に入ることを否定するものではない。
このように、自衛隊が多国籍軍に参加することは、法的には、武力行使を含めた治安維持活動を主な目的とする多国籍軍の指揮に自衛隊が服することを意味し、自衛隊が武力を行使することを容認することになる。
  よって、当会は、多国籍軍への自衛隊の参加は、武力の行使を禁止した憲法9条に抵触するので反対するとともに、イラクから自衛隊を撤退させることを求めるものである。

2004年 7月22日


          
京都弁護士会          
  
会  長 彦  惣      弘


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