声明

貸金業支配人要請書(2004年12月21日)


2004年(平成16年)12月21日

金融庁長官    五  味  廣  文  殿
関東財務局長  内  村  広  志  殿
近畿財務局長  畑  中  龍太郎  殿

京都弁護士会          

会長  彦  惣      弘
  


要  請  書



要 請 の 趣 旨

  金融庁、関東財務局、近畿財務局は、貸金業者が地方裁判所における訴訟当事者となる際に、支配人としての実態がない者を訴訟担当者として訴訟活動を行わせることがないよう厳しく指導、監督されたい。


要 請 の 理 由

1  実態のない支配人による訴訟行為の横行
  現在、貸金業者に対する利息制限法超過利息による過払金請求訴訟が全国各地において提起されているが、近時、このような訴訟が指定代理人の認められない地方裁判所に係属している場合、弁護士費用の負担を免れるためか、貸金業者が自社の単なる営業社員について支配人登記をし、同社員を「支配人」であると称して裁判所に出頭させるという事例が数多く認められる。そして、こうしたケースでは、実態のない「支配人」が訴訟代理権を有するか否かという点で本案前の無用な争点が付加され、訴訟遅延や訴訟経済上の問題が生じている。加えて、このような「支配人」は、?裁判所に連絡なく口頭弁論期日に出頭しなかったり、?期日に欠席の連絡をした上で、書面で反論の機会を与えるべきであるとして期日の延長を求め、結局さしたる反論はしなかったりする等の不当な応訴行為を行うという問題点も指摘されている。

2  民事訴訟法第54条違反
  民事訴訟法第54条第1項は、「法令により裁判上の行為をすることができる代理人」の他は弁護士でなければ訴訟代理人となる資格を有しないことを明定しており、上記に該当しない限り、地方裁判所において本人以外に訴訟代理人として訴訟行為を行うことはできない。
  この点、商法第38条第1項によれば、支配人は、営業に関する一切の裁判上及び裁判外の権限を有するとされ、営業主の営業全般に及ぶ包括的な代理権を有する者であり、逆にいえば、そのような包括的な代理権を有する者であるからこそ、民事訴訟法上も「法令により裁判上の行為をすることができる代理人」として認められているのである。
  従って、支配人というからには、単に形式的に支配人としての登記がなされているだけでは足りず、実質的にみても、その者につき営業上の包括的な代理権が授与されていることを要するものというべきであり、こうした実態のない者は、商法第38条第1項の支配人として訴訟代理権を有しないことは明らかである。
  そして、過去の判例においても、1  商工ローン会社の支店の社員(東京地方裁判所平成15年11月17日判決・判例タイムズ1134号165頁)、2  金融業者で業務が債権管理・回収に限定されている者(千葉地方裁判所平成14年3月13日判決・判例タイムズ1088号286頁)、3  金融業者の支店の管理課長(仙台高等裁判所秋田支部昭和59年12月28日判決・判例タイムズ550号256頁)、4  信販会社の東北地区本部の管理課長(仙台高等裁判所昭和59年1月20日判決・判例タイムズ520号149頁)、5  もつぱら裁判上の行為を代理させるために選任された者(東京地方裁判所昭和46年12月20日判決・判例タイムズ275号315頁)など多数のケースで、支配人の実態がなく、商法第38条第1項の支配人ではないとして、その訴訟遂行が不適法とされている。

3  弁護士法第72条違反
  貸金業者を初めとする事業者において、地方裁判所に係属する事件では、弁護士に依頼しないとすれば、代表権のある者が訴訟を遂行しなければならないが、全国規模の事業者では代表権のある者が全ての訴訟遂行を行うことが不可能となるので、社員を支配人として訴訟活動をさせることが横行するようになる。これは、支配人制度を弁護士法第72条潜脱のための手段として悪用するものであり、実態のない支配人による訴訟遂行は、訴訟代理権付与の問題に止まらず、非弁護士による法律事務の取扱にも触れる違法行為である。
  これについても、過去の判例として、会社の複数ある部門の中の1つのしかもその下部組織の管理社員について、「訴訟代理権のある支配人であると言えるためには、支配人としての実質を有する者であることを要するが、本件では法務部の部長をそのまま支配人登記しているに過ぎず、同人が営業主の営業に関する包括的代理権を持たないことは言うまでもなく、担当部署のある営業所においてさえ、全ての業務を把握し、決定権限を有している訳ではない。」とした上、「本件が弁護士代理の原則を定めた民事訴訟法第54条第1項及び弁護士の資格を有せずに他人の法律行為を業として行うことを禁止した弁護士法第72条を潜脱する意図のもとに行われていることは明白である。」として、実態のない支配人の問題が弁護士法第72条の潜脱であることを真正面から判示したもの(秋田地方裁判所平成12年6月20日判決・公刊物未登載)や、支配人登記がなされていても実質上は支配人でない場合に、弁護士法を潜脱する意図があったとして、その訴訟代理権を否定したもの(前橋地方裁判所平成7年1月25日判決・判例タイムズ883号278頁)などがある。

4  結論
  このように、過去の事例においては、実態のない支配人が、個別の事件において、民事訴訟法第54条や弁護士法第72条に違反するものであると判断されていることは認められるが、これらの例を見ても分かるように、多数の裁判所の判断が存在するにもかかわらず、これに従うことなく実態のない支配人登記をする例が後を立たないのが現状である。従って、このような違法行為を撲滅するためには、単に個別の裁判で実態のない支配人の訴訟遂行が違法である旨の判断が下されるだけでは不十分であり、金融庁及び財務局が、貸金業者に対して、支配人としての実態のない者について支配人登記をなし、訴訟遂行をさせることがないよう、徹底した厳しい指導、監督をなすことが必要であり、前記のとおりの要請を行うものである。

                                                              
以  上


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