共謀罪の新設に反対する声明(2005年10月14日)



  「共謀罪」を新設する法案は、先の衆議院解散に伴って廃案となりましたが、再度、今特別国会に同様の内容で上程することが閣議決定されました。
  この「共謀罪」は、長期4年以上の刑を定める犯罪について、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した場合に、2年ないし5年以上の懲役・禁錮を科すというものです。
  しかし、犯罪被害の結果が生じていないどころか実行行為の着手も予備行為さえも存在しない段階において、単に共謀しただけで処罰するということは、行為ではなく意思を処罰するものとなります。最終的には実行を思いとどまったとしても、共謀罪は成立するのです。しかも、対象は600以上もの犯罪にのぼる上に、どの程度の共謀をすれば犯罪とされるのかなど成立要件が不明確であり、近代刑法の大原則である罪刑法定主義に反するものです。
  また、共謀の存在を立証するために、自白偏重からその強要を招くことが予想され、さらには、電話や電子メール、室内会話の傍受などの捜査手法の拡大へとつながりかねません。
  この「共謀罪」は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の批准に伴う国内法整備として必要なものであると説明されています。しかし、そもそも条約の審議過程においては、日本政府自身が、日本の法制度における原則と両立し得ないという意見を述べていました。にもかかわらず、条約上認められているいわゆる顕示行為(準備行為)を要件とすることもせず、それどころか条約が規定している「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため」という目的規定や、「越境的なもの」「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を欠落させて、条約が要求する以上に対象範囲を拡大しています。
  当会は、これまでにも意見書及び会長声明において繰り返し反対してきましたが、同じ法案が再上程されたことを受け、「共謀罪」の新設に改めて強く反対します。


          

2005年(平成17年)10月14日      

京都弁護士会              

                                                
会  長    田    中    彰    寿


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