自衛隊のイラク派遣延長反対、イラクからの即時撤退並びに「イラクにおける人道復興支援活動等の実施に関する特別措置法」の廃止を求める会長声明(2005年12月8日)


1  政府は、本日、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(以下「イラク特措法」という)に基づく基本計画で定めた自衛隊の派遣期間が本年12月14日で満了する事態を受けて、基本計画を変更し、派遣期間を再度1年間延長することを閣議決定した。
2  しかし、米軍によるファルージャや西部シリア国境近くのカイムなどに対する爆撃等により、多数のイラク市民が死傷し、負傷したイラク市民の治療もままならない状況となっている。イラク市民を殺傷する米軍の行為は文民に対する攻撃を禁じたジュネーブ条約第一議定書に違反するものであるが、米軍のこのような都市に対する無差別攻撃がイラク市民の米軍に対する憎しみを招き、イラク全土において米軍に対する抵抗運動を連鎖的に発生させている。現在、ファルージャのみならず、イラク全土が戦闘状態にあると言わざるを得ない。
    この間、6月23日にサマワで陸上自衛隊の車両4台が走行中、道路に仕掛けられた爆弾が遠隔操作により爆発し、人員輸送用の高機動車1台のフロントガラスにひびが入るなどした。また、7月4日及び29日には陸上自衛隊宿営地付近で爆発音があり、10月1日には陸上自衛隊とオーストラリア軍の車列が、イスラム教シーア派の群衆と遭遇し、オーストラリア軍の装甲車が群衆に囲まれていたことがわかり、11月7日には陸上自衛隊宿営地に向けてロケット弾が発射された。12月4日にはサマワでイスラム教シーア派のデモ隊が「ノージャパン」と叫んで陸上自衛隊の車両へ向けて投石し、同車両のサイドミラーが割れるという事件が発生した。昨年11月にはイラクの反米勢力幹部が自衛隊を占領軍と規定し、自衛隊に対する攻撃を示唆していたが、この間の情況によれば、まさにサマワは戦闘地域であり、反米勢力による自衛隊員に対する攻撃の危険性は極めて高まっていると言わざるを得ない。
    現時点においては、イラクが非戦闘状態であるというイラク特措法の基本枠組は完全に崩れている。
3  また、一部の報道によれば、政府は、航空自衛隊による輸送支援を継続した上で、輸送拠点の拡大も検討しているとされている。しかし、これが事実であるとすれば、看過できない問題である。すなわち、クウェートへ派遣されている航空自衛隊は、イラクへの物資輸送を継続的に行うとともに武装した米兵その他多国籍軍をも輸送しており、このことは政府も認めている。このような航空自衛隊の活動は、米軍その他多国籍軍の武力行使に対する支援活動であり、そのような活動をさらに継続・強化するということは、米軍などへの加担をさらに強度にし、武力の行使を禁じた日本国憲法9条にますます抵触するものである。
4  当会は、2003年7月4日の会長声明において、「本法案は、わが国の陸上部隊が重装備の武器を携行してイラクへ赴き、米英軍を支援する行動を展開し、イラク国民にとって敵対する軍隊とみられてもやむをえない行動を推し進めようとするものであると考えざるを得ず、よって、戦争と武力行使を永久に放棄し、国の交戦権を禁じた憲法9条に、真っ向から反する疑いが非常に強い。」と指摘し、イラク特措法の廃案を求めた。当会の危惧は不幸にも現実化しており、イラク特措法は憲法9条に反するものとなっている。
5  よって、当会は、政府に対し、自衛隊の派遣駐留を延長する方針を取り止めて自衛隊を直ちに撤退させること並びにイラク特措法を廃止することを強く求めるものである。


2005年(平成17年)12月8日

                                          
京都弁護士会              

                                                
会 長  田  中  彰  寿


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