入管法改悪に反対する会長声明(2006年3月27日)




  今国会にテロ対策として「出入国管理および難民認定法」改正案(以下、「本法案」という。)が上程され、すでに審議に入っています。本法案は、(1)特別永住者を除くすべての外国人に対する上陸審査時の指紋、顔写真等のデータ提供の義務づけ、(2)退去強制事由の新設などを主な内容とするものです。
  (1)の指紋押捺制度の新設は、かつて品位を傷つける取扱いにあたると批判されて撤廃された外国人登録法の指紋押捺制度の復活であり、押捺を一律に強制することは外国人のプライバシー権を侵害するものであって許されません。
  また、既に在留資格を取得して在留している外国人の再入国時にまでデータ提供を義務づけることは、対象範囲が広範に過ぎます。
  さらに、仮に旅券所持者との同一人性確認のためにデータ提供の必要性があるとしても上陸審査時に確認すれば十分であり、データを長期間保存する必要はないはずです。にもかかわらず、国会答弁によれば70〜80年間保存し、犯罪捜査にも利用するとされています。
  このように無限定なデータ提供制度の導入とデータの活用は、外国人を一律に犯罪予備軍とみなして監視の対象とするものです。
  (2)の退去強制事由として、「公衆等脅迫目的の犯罪行為、その予備行為、その実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者として法務大臣が認定する者」という規定が新設されようとしています。退去強制は、日本社会から強制的に排除する点で重大な不利益を課すものであり、少なくとも要件の明確化と適正手続きの保障が必要不可欠です。しかし、本法案は、「その実行を容易にする行為」とはどの程度の行為を指すのか不明確であるばかりでなく、「行うおそれがある」というだけで未だなんらの行為も行っていない者を対象とする点で、要件が広範かつあいまいで行政機関による恣意的解釈がなされる余地が非常に大きいものです。
  日本に入国する外国人は年間約700万人、外国人登録者数は約200万人にのぼるなど国際化が進展する中で、外国人を監視対象としてとらえることは、却って日本社会の中で外国人を孤立させ、多民族・多文化共生社会の理念に逆行するものです。
  よって、当会は、本法案に反対します。

    

2006年(平成18年)3月27日


京都弁護士会                  
    
会  長    田  中    彰  寿

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