代用監獄の恒久化につながる法案に反対する決議(2006年5月30日)



1  政府は、本年3月13日、新しい未決拘禁制度について、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「法案」という。)を国会に提出した。法案は、4月18日に衆議院本会議で可決され、現在、参議院で審議中となっている。
2  法案の根本的な問題点
(1)代用監獄の存続・恒久化
  法案は、被勾留者の収容施設として、14条2項2号において留置施設を明記し、15条1項において「刑事施設に収容することに代えて、留置施設に留置することができる」と規定した。
  このように法案が旧拘禁二法案と同じように留置施設に収容される者として被勾留者を明記したことは、代用監獄(警察留置場)の格上げにつながる。
わが国において、これまで代用監獄は自白の強要、えん罪の温床となってきた歴史的事実がある。法案が規定する留置施設の「代替収容」制度は、代用監獄を恒久化させるおそれがあり、犯罪捜査と拘禁の分離という近代的・国際的大原則に反するものである。
(2)弁護人との接見交通の制限
  留置施設における弁護人との接見について、法案は、面会の一時停止及び終了の規定を新たに設け(法案219条)、面会の日時については「留置施設の執務時間内」に限定し(法案220条1項)、弁護人等から執務時間外の面会の申出がある場合において、「留置施設の管理運営上支障があるときを除き、これを許すものとする」と規定した。これらの規定は、刑事訴訟法とは別に、施設法において警察に弁護人との接見を制限する新たな法的根拠を与えるものである。
  従って、弁護人との接見制限を認める規定は、警察等によって濫用される危険があり、憲法で保障された被疑者・被告人の弁護人依頼権(憲法34条)を侵害するおそれがある。
(3)懲罰、防声具・拘束衣・保護室の使用
法案は、警察に留置施設での防声具・拘束衣の使用や保護室への収容を認めた(法案213条、214条)。また、警察が禁止措置として自弁の嗜好品と一定の書籍について3日を超えない期間に限り禁止できると規定した(法案190条、208条)。この禁止措置は実質的には懲罰に該当する。
従って、警察による防声具・拘束衣の使用、保護室への収容及び禁止措置が自白強要や拷問の手段として利用される危険性がある。
3  代用監獄の廃止を
  以上のように、法案は、憲法・刑事訴訟法で保障された国民の基本的人権を侵害する危険性が極めて高く、近代的・国際的な大原則である犯罪捜査と拘禁の分離原則に反するものである。
  よって、当会は、総会決議をもってこの法案に強く反対し、代用監獄の早期廃止を求めるものである。

2006年(平成18年)5月30日    京都弁護士会  総会


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