声明

平和的にイラク問題を解決することを求める声明(2003年2月19日)




  1. 米国政府は、イラクが1991年の国連安全保障理事会決議687号に違反して国連の査察を拒否し、大量破壊兵器(核兵器・生物兵器・弾道ミサイル等)を開発し、保有している疑いがあるとし、又、2001年9月11日の同時多発テロを遂行したとされている国際テロ組織アルカイーダを支援しているとして、自国の安全が現実の差し迫った脅威にさらされているので、国連安全保障理事会の決議を経ることなく先制的自衛権の発動が許されるとの理由に基づき、既に空母を含む十数万人規模の軍隊を湾岸地域に配備して、イラクに対する武力攻撃をいつでも実行できる体勢を展開し、事あるごとに今にもその行使を実行する旨公言し続けている(2003年1月28日のブッシュ米国大統領の一般教書演説など)。

  2. これに対し、国連安全保障理事会は、2002年11月8日、イラク政府が受諾した決議687号(1991年)に違反している疑いがあるとして、イラクに対するIAEA(国際原子力機関)及びUNMOVIC(国連監視検証査察委員会)による査察を全会一致で決議(決議1441号)し、先ず査察による平和的手段で解決する方向を打ち出して、現在、両機関による査察を実施している。

  3. 2003年1月27日,IAEA及びUNMOVICは両機関の各委員長報告を行った。しかし、何れの報告においても、これまでのイラク政府の協力は未だ不十分であり、同国の報告には疑問があるとしつつ、決議1441号における「重大な違反」の証拠を指摘するには至らないものであった。
        アナン国連事務総長はこれを受けて、安全保障理事会に対し査察継続要請を受け入れるように求め、主要理事国であるフランス・ドイツ・ロシア・中国等が査察の継続、強化による平和解決を探るべきとして、武力行使には慎重な姿勢を示している。

  4. 2003年2月5日の安全保障理事会において、米国国務長官はイラクが核兵器・生物化学兵器・ミサイル兵器を保有し、アルカイーダとの関係を示す証拠を具体的に列挙した。しかし、何れも多くの疑問符が付き、核兵器等の存在及びアルカイーダとの関係を明らかにするものと評価し難く、武力行使に慎重な姿勢をとる安全保障理事会の前記主要理事国を納得させ、世界の世論を武力行使是認に向わしめる程度には至らないものであった。

  5. しかるところ、我国政府は何ら積極的に平和的解決に向けた提言や行動を取ることなく、ひたすら沈黙を守り、むしろ既にイージス艦のインド洋への派遣をもって、米軍のイラクに対する武力行使との一体化を敢行しつつ、小泉首相はさる2月6日の国会答弁においては未だに態度を明確にしないながらも「(イラクの)大量兵器保有の疑惑がさらに深まった」との認識を示し、「米国の同盟国として責任ある対応をしていかなければならない」と述べるなど、米国によるイラクに対する武力行使への支持の傾斜を強めている。

  6. しかしながら、国連は、「われらの一生(20世紀)のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救う」ことを決意して設置され(国連憲章前文)、「国際の平和及び安全を維持すること」を目的の第一にあげ、「国際的紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって・・・実現すること」を目的として(国連憲章第1条1項)、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって・・・解決しなければならない」との原則を明記している(同2条3項)。
        又、我国は、かかる国連憲章と軌を一つにして、戦争の惨禍を決して繰り返さないとの固い決意に基づき、「恒久の平和を念願し」「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認し」「国家の名誉にかけて全力をあげて、この崇高な理想と目的を達成すること」を誓っている(憲法前文)。

  7. 当会は、我国が、憲法の平和主義及び国際協調主義の理念に基づき、全力をあげて戦争を回避する努力を尽すべきである、と考える。
        当会は、このような立場から日本国政府に対し、直ちに
        (1)  国連、イラク政府・米国政府等に対して非軍事的平和解決を求めること
        (2)  米軍等の軍事力の行使には断固反対し、支持しないこと
      を強く訴え、働きかける具体的行動を取ることを強く要求する。又、日本国政府に対し、全ての紛争を国連の枠組みの中で平和的手段により解決し、軍事的武力行使に反対する我国の立場を内外に向けて明確に表明することを求める。

    2003年(平成15年)2月19日

    京都弁護士会

    会長  田  畑  佑  晃


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