「有事法制」法案の今国会成立に反対する声明(2002年5月14日)
当弁護士会は、去る4月1日、常議員会において、当時具体的内容が明らかにされないまま国会に上程されようとしていた「有事法制法案」について、それが国民の基本的人権を制限・規制するものであり、憲法の平和原則に反するおそれがある重要法案であることに鑑み、主権者である国民の一人ひとりが、同法案の内容と必要性を慎重に見極めることが出来るよう具体的内容を示して、広く国民的議論を尽くし、その意見をふまえて内容を確定して国会の審議に諮るべきものであるとの考えから、同法案を今国会に上程することに反対する決議を採択し、公表した。
しかるところ、4月17日、政府は衆議院に「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」(「武力攻撃事態」法案という)、「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」(安全保障会議設置法「改正」法案という)、「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」(自衛隊法等「改正」法案という)を上程し(以上を有事法制3法案という)、4月26 日には衆議院本会議において趣旨説明がなされ、特別委員会における審議を本格的に開始して、今国会での成立を図ろうとしている。
しかしながら、有事法制3法案には我国の憲法を中心とする法体系に照らし、以下の点から重大な問題点と危険性が存在する。
日本弁護士連合会は、4月20日の理事会において、上記の点から有事法制3法案に反対し、同法案を廃案にすることを求める旨の決議を採択した。
当弁護士会も有事法制3法案には、上記の重大な問題が存在し、憲法を中心とする我が法体系の中核をなす基本的人権保障原理・平和原則を変質させる重大な危険性を有する点で、国民の生活に重大な影響を及ぼすことを懸念する。また、広く国民的に議論を尽くさず性急に法案を国会に上程し、短期一気呵成に成立させようとしていることは、余りにも拙速であると考える。
以上のように有事法制3法案には、憲法に抵触する重大な疑義が存すること、同法案が憲法の基本にかかる重要な問題点を有するにもかかわらず、国民が十分に論議する機会を保障されていないことに鑑み、当弁護士会としても同法案の問題点を国民に明らかにし、広く慎重に議論が尽くされるべきと考え、同法案に反対し、同法案の廃案を求めるものである。