意見書

証券取引法等の一部を改正する法律・金融商品取引業等に関する内閣府令案(仮称)に対する意見書(2007年5月21日)


2007年(平成19年)5月21日

内閣総理大臣  安  倍  晋  三  殿
金融庁長官    五  味  廣  文  殿
(送付先:金融庁総務企画局市場課金融商品取引法令準備室  御中)

京都弁護士会          

会長  中  村  利  雄




  証券取引法等の一部を改正する法律及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案(仮称)並びに金融商品取引業等に関する内閣府令案(仮称)に対する意見書


は じ め に

  金融庁及び内閣府は、平成19年4月13日、証券取引法等の一部を改正する法律及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案(仮称)(以下「金商法施行令案」という。)並びに金融商品取引業等に関する内閣府令案(仮称)(以下「金商業等府令案」という。)等の内閣府令案を公表した。
  平成18年6月14日に公布された証券取引法等の一部を改正する法律(金融商品取引法。以下「金商法」という。)は、金融商品の不当勧誘規制などのルールづくりを横断的に行うことを目指したものであるが、その規制内容ないし範囲等の重要部分については政令ないし府令に多くが委ねられているため、その規制の実効性は、これら政令・府令の内容にかかっているといっても過言ではない。
当会は、金商法の基礎となった「−投資サービス法(仮称)に向けて−金融審議会金融分科会第一部会報告」については、平成18年1月26日付意見書を提出し、また、国会に提出された金商法案についても、平成18年4月20日付意見書を提出してその問題点を指摘しているところであるが、今回公表された金商法施行令案及び金商業等府令案においても、当会が従前から指摘していた問題点が未だ残っていると考えられる。
よって、当会は、主として、とりわけ従前から指摘していた勧誘規制及び損失補填禁止規定の問題について、意見を述べる。

意 見 の 趣 旨

1  金商法38条3号(不招請勧誘禁止)関係
(1)  金商法施行令案16条の4第1項が規定する、不招請勧誘を禁止する金融商品取引の範囲を拡大し、投資商品全てとすべきである。
(2)  金商業等府令案123条が規定する、不招請勧誘禁止の例外は、いずれも削除すべきである。
2  金商法38条6号(府令指定禁止行為)関係
(1) 金商業等府令案124条7号を、「法第38条3号に規定する金融商品取引契約の締結を勧誘する目的があることを顧客にあらかじめ明示しないで当該顧客を集める行為」とすべきである。
(2) 同25号は、店頭における金融先物取引に限定して、顧客の行う取引と対当する取引の勧誘等を禁じているが、公開市場における金融先物取引での右の行為も禁止の対象に含ましめるべきである。
(3)  同27号の禁止行為は、「顧客に迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘する行為」と、一般的に規定されるべきである。
(4)  店頭金融先物取引及び市場金融先物取引において、転売・買い戻し等により当該取引を終了させる意思を表示した顧客に対し、引き続き当該取引を行うよう勧誘することが、禁止行為として加えられるべきである。
3  金商法37条(広告等の規制)関係
(1) 金商業等府令案75条に定める広告類似行為として、インターネット上で商品内容を紹介するもの(携帯サイトを含む)、特定ないし一定範囲の商品購入を勧める雑誌記事及びインターネットブログを列挙して記載すべきである。
(2) 金商業等府令案75条に定める広告類似行為のうち、ビラ・パンフレット配布について、住居を訪問して行う配布を除外する規定を撤廃すべきである。
(3) 金融商品取引業者等の行う広告等において表示義務の課される事項(同条1項)及び不実表示等が禁止される事項(同条2項)に係る金商法施行令案16条及び金商業等府令案77条ないし79条に関しては、政府案のとおり施行すべきである。特に、顧客に損失もしくは元本超過損が生じるおそれがあること(金商法施行令案16条4号5号)、重要事項に関する不利益事実(金商業等府令案79条1号)については、修正することなく施行すべきである。
4  金商法39条(損失補填の禁止)関係
    金商業等府令案126条に、「事故の確認を要しない場合」として、弁護士が顧客を代理している全ての場合(和解金額の多寡を問わない)、及び、訴え提起前の和解(民訴法275条、即決和解)を追加するべきである。


意 見 の 理 由

1  意見の趣旨1について
(1) はじめに−不招請勧誘禁止の2つの例外
  金商法38条3号は、金融商品取引契約の勧誘に際して、いわゆる不招請勧誘(取引を希望していない消費者に対する勧誘)を行うことを禁止している。
  ただし、同条は、2つの限定ないし例外をおき、その内容を政令及び内閣府令に委ねている。
  ひとつは、規制対象となる金融商品取引の範囲の限定である。すなわち、金商法38条3
号は、「当該金融商品取引契約の内容その他の事項を勘案し、投資者の保護を図ることが特に必要なものとして政令で定めるものに限る」としている。そして、今般公表された金商法施行令案は、その対象について、顧客に対する店頭デリバティブ取引の一部((1)金融商品先渡し取引、(2)金融指標先渡し取引、(3)金融商品店頭オプション取引、(4)(1)及び(2)の店頭オプション取引)に限定している(金商法施行令案16条の4第1項)。
  2つ目は、仮に規制対象となる取引の勧誘行為であっても、そもそも規制しない場合があるという例外規定である。すなわち、金商法38条但書は、「投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く」としている。そして、今般公表された金商業等府令案は、「金融商品取引業者が、継続的取引関係にある顧客(勧誘の日前1年間に、2以上の店頭金融先物取引のあった者及び勧誘の日に未決済の店頭金融先物取引の残高を有する者に限る。)に対して店頭金融先物取引に係る金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」及び「外国貿易その他の外国為替取引に関する業務を行う法人に対する勧誘であって、当該法人が保有する資産及び負債に係る為替変動による損失の可能性を減殺するために店頭金融先物取引に係る金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」であれば、不招請勧誘を行ってもよいとしている(金商業等府令案123条)。
      しかし、以下に述べる理由から、このような狭い限定及び例外規定は設けるべきではなく、投資被害の可能性を有する全ての金融商品、とりわけ、店頭デリバティブに劣らず危険性が高いと考えられる市場デリバティブ取引等についても不招請勧誘を禁止し、また例外も設けるべきではない。
(2) 不招請勧誘の危険性
      まず、不招請勧誘は、消費者の平穏な生活に突如として侵入してくる攻撃的な性格を有するものであり、それ自体是認することができないものである。とりわけ、金融商品の特性として、金融商品取引業者と消費者との間の知識や情報、交渉力の差は他の消費者取引にも増して大きいのであり、不招請勧誘の結果、消費者が十分に仕組みやリスクなどが理解できないまま、得られるとされる利益ばかりに幻惑されてしまう危険性は極めて高い。
      また、金融商品市場の公正さも、市場参加者各自が自己責任に基づいた投資判断が可能であることによってはじめて保たれる。その市場への参加が、不招請勧誘という攻撃的かつ幻惑的な手法によって促進されることになれば、市場の公正さを保つことは極めて困難である。
      これらのことは、全ての金融商品につきあてはまることであり、一部の商品につき不招請勧誘を許容する積極的理由はない。
(3) 不招請勧誘による被害実態
      そして、何よりも、商品先物取引等をはじめとする我が国において根強い投資被害の大半が不招請勧誘に端を発しているという実態を直視しなければならない。
      先物取引被害全国研究会が、平成18年1月、全国の弁護士会ないし研究会の協力の下に行った「2006年全国一斉先物・外国為替取引被害110番」においても、その被害実態は顕著に伺える。まず、商品先物取引被害のきっかけは、取引の業者による不招請勧誘によるものが303件(うち「電話」が220件、「訪問」が67件、「その他」が16件)、自らアプローチしたのが30件である。また、外国為替証拠金取引については、業者による不招請勧誘がきっかけとなったのが89件(うち「電話」が66件、「訪問」が15件、「その他」が8件)、自らアプローチしたのは6件であり、実に被害の9割以上が業者による不招請勧誘に端を発しているのである。
      このように、金融サービス業者の不招請勧誘に幻惑されて仕組みやリスクを理解できない取引に巻き込まれて、深みにはまっていく、というのが典型的な投資被害の構造なのである。
      今求められているのは、このような被害実態を正面から見据えた規制である。
(4) 不招請勧誘禁止規制の実効性
      平成15年ころから被害が爆発的に急増した、いわゆる外国為替証拠金取引については、金融庁が、平成17年7月に金融先物取引法の改正によって不招請勧誘の禁止規制を新設(金融先物取引法76条4号)した結果、相談件数が激減した。国民生活センターによれば、全国の消費生活センターに寄せられた外国為替証拠金取引に関する相談件数は、平成12年度には4件であったのが、平成15年度には1423件、平成16年度には2910件に急増した。しかしながら、上記不招請勧誘禁止の規制を行ったところ、平成18年度(平成19年3月15日時点)には311件となり、実に約10分の1にまでに減っているのである。また、上記先物取引被害全国研究会が平成19年1月に行った「2007年全国一斉先物・外国為替取引被害110番」においても、外国為替証拠金取引に関する相談は16件にとどまるなど、同様の傾向が見られた。
これらは、不招請勧誘禁止規制が、被害防止のために極めて実効的であることを示す実例である。
      これに対しては、不招請勧誘の禁止までは不要であり、金融商品取引法第38条5号のような再勧誘禁止(契約の締結や勧誘を希望しない旨を表明した者への勧誘の禁止)規定があるので十分であるとの意見も存するようである。
      しかしながら、再勧誘の禁止のみでは、到底実効的とはいえない。再勧誘の禁止では、上記のようにリスク判断が十分にできず勧誘を断ることができない一般消費者の投資被害を抑制することはできないうえ、訴訟等において、顧客が勧誘を断ったことを立証することも極めて困難だからである。
(5) 規制対象となる金融商品取引の範囲を制限すべきではないこと
以上のとおりであるから、いかなる種類の金融商品についても、不招請勧誘を行うことを許容する積極的な理由はなく、他方、投資被害の防止及び公正な市場形成のためにも、不招請勧誘禁止が実効的であることは明らかなのであるから、その規制対象範囲はできるだけ広げるべきである。
    さらに、市場デリバティブ取引、とりわけ市場金融先物取引について不招請勧誘禁止の網をはずすことは、旧法である金融先物取引法からの後退となることに留意しなければならない。
すなわち、上記(4)で述べたとおり、金融先物取引については旧法である金融先物取引法が不招請勧誘規制をおいているにもかかわらず、改正法である金商法施行令案においては、そのうち、市場デリバティブ取引等について、その規制を撤廃するかたちになっているのである。
これは旧法からの後退にほかならないところ、上記のような不招請勧誘禁止規制の必要性に鑑みれば、むしろ規制範囲を広げなければならないのであり、今回の金商法施行令案のように、その範囲を狭めるべき理由は全くない。
(6) 規制の例外規定はいずれも適切なものではないこと
不招請勧誘禁止の規制の例外規定についても問題がある。上記(1)で述べたとおり、金商業等府令案においては、(1)継続的取引にある顧客に対する勧誘、(2)外国貿易や外国為替を行う法人の為替リスクヘッジのための取引の勧誘については、不招請勧誘禁止の規制対象外としているが、いずれも問題である。
まず、(1)については、商品先物取引等がその典型であるように、投資被害は、まさに顧客との間の継続的取引をとおして行われるのである。顧客は、業者と継続的取引にあるからこそ、専門家たる業者のことを信頼するのであって、当該業者が持ちかける新たな取引の内容がよく理解できなかったり、ないしはそれに疑念を抱くことがあったとしても、まさか顧客を騙すことはないだろうと考え、契約の締結に応諾することは往々にして考えられる。
また、(2)については、リスクヘッジ取引と投機取引が紙一重であることはよく知られている。記憶に新しいのは、一部都市銀行が、リスクヘッジと称して、その範囲を逸脱した投機行為としての性質を有する金利スワップ取引の契約締結を融資先に強引に勧誘し、公正取引委員会からの勧告及び金融庁からの業務停止命令を受けた事件である。このように、業者がリスクヘッジ目的であることを強調して、その実は投機的な取引をもちかける危険性は高いのであって、なおのこと不招請勧誘を許容してはならない。
他方、これらの顧客に対して、不招請勧誘を積極的に認めなければならない合理的理由はない。
(7) 金融商品取引法の立法過程の議論及び国際的な情勢
    金融商品取引法の立案過程においても、金融分科会第一部会における委員の議論のなかで、「不招請勧誘についても、原則不招請勧誘の禁止をすべき」「今までの縦割りの法律を横に見る場合でも、説明義務なり適合性原則のところについてはかなり似たような規制がされてきているわけで、それを共通化するということは全然無理ではない」(平成17年10月5日第34回金融審議会金融分科会第一部会議事録における上柳委員の発言)など、不招請勧誘の規制を一般的に設けるべきとの発言が多く見られる。
      また、世界各国においても、例えば、(1)EU諸国においては、2003年7月にいわゆる「通信に関する指令」の合意がなされ、同年10月末より、消費者の事前の同意がない場合に、ダイレクトマーケティングの目的で、自動架電装置によって電話をすること、FAX・電子メールを送信することを全面的に禁止するという「オプト・イン規制」(事前に同意なき限り勧誘してはならないとの規制)が実施され、(2)アメリカでも、電話勧誘について、2003年10月1日以降は、「Do−Not−Call」というリストに登録し電話勧誘拒否の意思を表明した人に対しては、電話勧誘を行ってはならないとする制度が採用され、同年10月末の時点で、全米の総世帯数約1億2000万世帯の半数に迫る約5000万件の登録がなされ、さらに、(3)イギリス、ドイツでは、不招請のFAXは「受信者の用紙と電力の窃取」と解釈されており、事前の同意がない限りFAXで勧誘を行うことを禁止している。
      これに対し、我が国の不招請勧誘規制は立ち後れていると言わざるを得ず、とりわけ、消費者に対する弊害が大きい投資商品の分野においては、原則不招請勧誘禁止の姿勢を打ち出すべきものと考えられる。
(8) 小括
よって、当会は、意見の趣旨1のとおりの意見を述べる。

2  意見の趣旨2について
(1) 勧誘目的を明示せずに顧客を募集することの禁止
      金商業等府令案124条7号は、不招請勧誘禁止対象取引について、勧誘目的を明示せずに顧客を集め、かつ、勧誘する行為について禁止している。しかし、そもそも、集客行為そのものが不招請勧誘の着手といえるのであり、それ自体を禁止すべきである。また、実質的にも、一旦集められれば、集団心理等によって容易に意思決定の自由を阻害され、その後契約締結に及んでしまう可能性が高い。
      この規定は、むしろ、不招請勧誘の僭脱の温床となることが予想されるのであり、顧客を集める行為そのものを禁ずべきである。
よって、当会は、意見の趣旨2(1)のとおりの意見を述べる。
(2) 両建て勧誘の禁止について
      両建て勧誘が禁止されるのは、判断能力が十分でない顧客が手数料稼ぎの食い物にされることを防止するためである。
      かかる危険性は、店頭取引にとどまらず、公開市場における取引でも存する。
      商品取引所法施行規則130条9号が、公開市場における取引である商品先物取引について、取引を理解していない顧客からの両建ての委託を禁止しているのは、公開市場におけるかかる危険性の存在を踏まえてのことである。一般投資家を対象とする金商業等府令案124条25号が、両建て勧誘の禁止を店頭取引に限定する理由はなく、公開市場における取引もその対象とすべきである。
よって、当会は、意見の趣旨2(2)のとおりの意見を述べる。
(3) 迷惑勧誘の禁止について
      金商業等府令案124条27号は、禁止行為の対象を「顧客に迷惑を覚えさせるような時間に電話または訪問により勧誘する行為」と限定する。
同号は、契約を締結するか否かにつき顧客の意思決定の自由を保護するための規定であるところ、同様の趣旨に出た商品取引所法214条6号・特定商取引法施行規則7条とも、「迷惑を覚えさせるような仕方で」「勧誘」することを禁ずるという一般的な規定の仕方をしている。
その上で、商品取引法は、ガイドラインにより具体化されている。迷惑な時間帯の架電・訪問の他、長時間に亘る勧誘、威迫・困惑・不安の念を生じさせるような勧誘等が例示列挙されているのである。また、特定商取引法施行規則7条は通達により具体化されている。不適当な時間帯における勧誘の他、長時間にわたり勧誘することが例示列挙されているのである。これら列挙された行為のいずれもが、契約締結の意思決定の自由を歪めるものであることは明らかであって、金商業等府令案124条27号のように、とりたてて、迷惑な時間帯の架電・訪問のみを禁止する合理的理由は無い。
そこで、迷惑な時間帯の架電・訪問を例示列挙とすることはあり得るも、それのみに限定した規定とされてはならない。限定してしまえば、その他の行為は許されるとの誤解を招きかねず、改悪となりかねないからである。そして、顧客の意思決定の自由を歪める勧誘行為であったか否かは、個々の勧誘行為について個別に検討する他はないと考えられることから、規定の仕方としては一般的な規定とし、事例の集積に応じたガイドラインの整備を行うことが相当である。
よって、当会は、意見の趣旨2(3)のとおりの意見を述べる。
(4)  手仕舞拒否の禁止について
一般投資家が、取引を継続する中で、その損益判断に基づいて取引を止めようとする際に、豊富な説得材料を有する業者が取引を継続するよう勧誘を行えば、投資家が抗うことは困難である。
損失を被って取引から離脱しようとする顧客に対して、「損失を取り戻そう」などとの勧誘は容易であり、損失を被り通常の精神状態でなくなった者の心理としても、かかる勧誘には容易に応じてしまうものである。その結果、損失を拡大し投資資金を超過してしまうことがままある。
商品取引所法施行規則103条7号が、決済を結了する旨の意思を表示した顧客に対し、引き続き当該取引を行うことを勧めることを禁止したことも、かかる理由に基づく。
そして、この意味での投資家保護の必要性は、店頭金融先物取引及び市場金融先物取引についても等しく存するというべきである。
よって、当会は、意見の趣旨2(4)のとおりの意見を述べる。

3  意見の趣旨3について
(1) 広告類似行為の定義について
      金商業等府令案75条は、金商法37条に規定される広告類似行為について、郵便、信書便、ファクシミリ送信、電子メール送信又はビラ・パンフレット配布(住居を訪問して行う配布を除く。)その他の方法で多数の者に同様の内容で行う情報提供を規制対象としている。金商法が広告規制を規定する趣旨は、広告は消費者の意思決定に重大な影響を与えるものであり、そこに不実表示や誤認を招く記載等がないようにすることで、消費者の契約に関する判断を誤らせないことにある。その趣旨からすれば、契約の申し込みを意図しまたこれを可能にする契機になるものであれば広告と同様に消費者の判断を誤らせる可能性を含むものであるから、広告と同様の規制を実施すべきであるところ、広告類似行為の範囲を広くとらえ、規制対象の外延を拡大している点は評価しうるところである。特に、近年の意思伝達手段としてのメディアの急速な多様化に伴い、その他の方法により多数の者に対して同様の内容で行う情報の提供を包括して広告類似行為と規定した点は適切である。
    しかしながら、すでに一般的となっている媒体や方法については、規制対象であることを明確にするためにも出来る限り列挙すべきである。インターネットのホームページ上の商品内容掲載や、特定ないし一定の範囲の商品購入を勧める雑誌記事及びインターネットブログ記事の中にも、広告と同様に消費者を契約に誘導する機能をもつものが見られることからすれば、少なくとも上記の媒体に関しては広告類似行為として明確に列挙すべきである。特に表現に物理的制約のある携帯サイトについては、契約の契機となる点においては何ら他の広告手段と変わりない機能を有する反面、その表現の物理的制約ゆえに野放図な広告活動が行われて消費者の判断を誤らせる可能性は高いのであるから、明確に規制対象であることを示すべきである。
    この点、日本証券業協会は、広告等に関する自主規制である公正慣習規則第7号第2条において、広告等の定義について、「広告、勧誘資料、説明資料、宣伝物その他いかなる名称であるかを問わず、協会員がその営業に関し、・・・取引を誘引する手段として行う表示」としており、また、「インターネット、電子メール等を利用して電磁的方法により提供するもの」も広告等の定義に含まれるとしているところである。
よって、当会は、意見の趣旨3(1)のとおりの意見を述べる。
(2) ビラ・パンフレット配布行為の除外について
    規定ビラ・パンフレット配布については住居を訪問して行う配布を除かれているが、これについては明らかに不適切である。個別訪問等その場で説明勧誘を行う行為を念頭に置き、その際に頒布するビラ等については多数の者に対する情報提供という性質はなく、広告とは性質が異なるという形式的な理由によるものであるが、近年、広告と勧誘とは境界が曖昧になってきており、そのような形式的理由は全く合理性を有しない。ビラ・パンフレット配布はまさしく契約の申し込みを意図し、また、これを可能にする契機になるものであって、配布形態によってその機能が失われることはないのであるから、配布形態の如何によらず広告類似行為として規制対象とすべきである。従って、住居を訪問して行う配布を除外する規定は撤廃されるべきである。
    よって、当会は、意見の趣旨3(2)のとおりの意見を述べる。
(3) 広告内容について
      金商法においては、金融商品取引業者に対する行為規制の一つとして、広告における一定事項の表示義務や広大広告の禁止が明記された(金商法37条)。
      この点に関しては、これまでリスクのある投資商品であったにもかかわらず法的な広告規制が存在しなかった投資信託の販売等や、金融先物業等の金融商品販売関連業種と同様にリスクのある投資商品を取り扱っているにもかかわらず、業としては広告規制がなかった証券会社等に対しても包括的に広告規制を課するものであって、高く評価すべきである。
      もっとも、「はじめに」で指摘したとおり、これら規制の実質的部分の多くは政令や内閣府令に委任をされており、法の実効性を確保するためには政令や内閣府令の内容が極めて重要であるが、その内容については、法の施行により統合されることとなる法律(金融先物取引法、抵当証券業の規制等に関する法律、商品投資に係る事業の規制に関する法律等)に関連する政令等(金融先物取引法施行令、金融先物取引法施行規則等)の内容に準じて規定される必要がある。
      なぜなら、
      (1)法に統合される法律により既に広告規制が存在していた分野(金融先物業、抵当証券業、商品ファンド等)については、法の制定という一事だけをもって他の分野と併せて規制水準を切り下げるべき合理的理由とはならず、また立法事実としても規制水準を切下げるべき必要性は何ら存在しない
      (2)広告規制が存在していなかった分野(証券会社、投資信託の販売等)についても、リスクのある投資商品(もしくはそれを取り扱う業)に関してこれまで何らの広告規制がなかったこと自体が不自然であって、適切な情報を投資家に向けて提供させる必要性は、金融先物業や抵当証券業及び商品ファンドの販売等と何ら変わるものではなく、これら既に広告規制が存在していた分野と別異に規律する合理的理由はない
    からである。
      これを踏まえて今回の政府案を評価した場合、基本的には前記各法令の内容に準じた規定が設けられており、従前の個別法令による規制内容を金融商品取引一般に広げるものとして、一定の評価をすることができる。政府においては、今回の政府案のとおり施行すべきである。
      さらに、今回の政府案においては、金融商品取引業者等が広告等において表示しなければならない事項として、顧客に損失もしくは元本超過損が生じるおそれがあること(金商法施行令案16条4号5号)、及び、重要事項に関する不利益事実(金商業等府令案79条)等を加えている。
      この2点に関しては、情報力に劣る顧客に対して、取引判断における最も重要な情報の提供を業者に対して義務づけるものであり、顧客保護の観点から見て高く評価することができる。このような情報提供については、金融商品の専門家である金融商品取引業者にとって負担になるようなものでもなく、政府においては、政府案のとおり施行すべきである。
よって、当会は、意見の趣旨3(3)のとおりの意見を述べる。

4  意見の趣旨4について
(1) 金商法は、証券取引法の規定と同様に損失補填の禁止規定をおき、損失補填禁止を適用しない場合を「事故」による場合に限定し、その事故確認が不要な場合として、金商業等府令案126条は、
(1)  確定判決
(2)  裁判上の和解(即決和解を除く)
(3)  民事調停法上の調停成立の場合
(4)  金融商品取引業協会又は認定投資者保護団体のあっせんによる和解成立の場合
(5)  弁護士会のあっせんによる和解成立の場合
(6)  消費者基本法に基づくあっせんによる和解成立の場合
(7)  弁護士が顧客を代理し、業者等が顧客に対して支払いをすることとなる額が140万円以下の場合
(8)  補填が10万円以下の事故の場合
(9)  記録上過失等により損失を及ぼしたことが明らかな場合
と規定している。
  これらのうち、従前の証券取引法令において認められていなかった、(5)弁護士会ADR、及び(6)消費者基本法ADRによる和解を加えたことは評価できるが、未だ狭きに失する。
(2)  証券取引法における損失補填の禁止は、1991年の証券不祥事の際、本来、自己責任であるべき証券取引において、損失を出した大企業等に対して、大手の証券会社を中心に損失補填が行われていた実態が明らかになり、社会問題化されたことから、1991年の証券取引法改正により導入された。
  証券取引法では1991年改正以前においても事前の「損失補償約束」は禁止されていたが、上記のとおり、損が出た後の合意により、業者が顧客である大企業などに対して、将来の取引維持・拡大のために損失を補填するという行為が横行する事態が存したことから、事後的な損失補填禁止の規定がおかれたのである。
  しかし、この規定がおかれた後、証券会社外務員の違法行為により損害を被った顧客からの損害賠償請求に対して、多くの証券会社が損失補填禁止規定を口実に、示談解決を拒否するようになり、事実上、証券事件においてそれまで行われていた示談解決を図ることが極めて困難となり、被害救済に重大な支障となった。
  もとより、自己責任を負うべき企業等に対する損失補填と違法行為による損害賠償は性質を全く異にするものであるが、両者の区別が困難であるなどとして、示談解決拒否の理由として用いられたのである。
(3) このような損失補填規定が及ぼした消費者被害救済の後退状況を回復するためには、違法行為による損害賠償であることが他者の関与により十分に確認できる保証がある場合には、広く事故確認を不要とすべきである。
  具体的には、弁護士会ADR、消費者基本法ADRのほか、弁護士が顧客を代理しているケースの全て、及び訴え提起前の和解(民訴法275条、即決和解)を追加するべきである。
  金商業等府令案においては、弁護士が顧客を代理しているケースにつき、和解金額が140万円を超えないことという限定を付しているが、弁護士が違法行為の被害者側代理人に就任し、当該紛争が違法行為による損害賠償を請求するものであることを確認し、損失補填ではないとの区別ができている以上、和解金額の多寡は問題となるはずがなく、このような限定は不要である。
  また、即決和解も、公的機関である裁判所が関与して行われる解決であり、当該紛争が違法行為による損害賠償を請求するものであることを裁判所が確認する点において、既に事故確認不要とされている裁判上の和解、民事調停に準ずるものであるから、当然に認められるべきである。
(4) よって、当会は、意見の趣旨4のとおりの意見を述べる。


以  上


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