陸上自衛隊情報保全隊による国民監視活動に抗議し中止を求める声明(2007年8月9日)



  2007年6月6日、陸上自衛隊情報保全隊が、イラク自衛隊派遣に反対する個人・団体の動向を監視し、その情報を系統的に収集、分析していたことが明らかとなった。情報収集の対象とされたのは、市民団体、宗教団体、市議会、弁護士会、ジャーナリスト、学生等の各方面にわたり、全国41都道府県、289団体・個人に及び、それらの意見書採択、デモ、ビラ配布、街頭宣伝、集会、写真展、発言、取材活動に至るまで、網羅的に細かく情報収集し、写真撮影まで行っている。上記情報保全隊による文書には、京都府下の団体の集会、デモ、街頭宣伝・ビラ配布などの情報資料も含まれており、活動内容や集会の日時、場所、参加人数等が具体的に記載されている。情報保全隊はこれらの活動を「反自衛隊活動」と位置づけている。かかる情報収集活動を陸上自衛隊が行っていたことは政府も認めているところである。
  国家権力たる自衛隊が、詳細かつ継続的に個人・団体の表現行為を監視し、情報を収集・分析することは、言論・表現・報道・集会・結社の自由に対し、著しい萎縮効果をもたらすものであり、憲法21条で保障された表現活動の自由を侵害するものである。さらに、集会・デモに参加した市民の写真撮影は憲法13条で保障されたプライバシーの権利を侵害するものと言わなければならない。
  そもそも、情報保全隊は2003年3月に新設されたが、その法的根拠は、自衛隊法施行令32条「自衛隊の部隊の組織、編成及び警備区域に関し必要な事項は、防衛大臣が定める。」という規定及び陸上自衛隊情報保全隊に関する訓令にあり、その任務は「部隊及び機関並びに施設等の情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行うこと」、つまり自衛隊の保有する内部情報の流出や漏洩を防止することにある。個人・団体に対する監視活動は、その任務の範囲を逸脱していることは明かであり、法的根拠を欠く違法な行為と言うべきである。
  当会は、このような違憲・違法な陸上自衛隊の情報保全隊による監視活動に対し強く抗議するとともに、かかる監視活動を即刻中止することを求めるものである。

  2007年(平成19年)8月9日

京都弁護士会                            

会  長  中      村      利      雄


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