「自衛隊のイラク即時撤退及びイラク特措法廃止を求める会長声明―名古屋高裁判決を受けて―」(2008年5月19日)



1  政府による自衛隊のイラク派遣は憲法9条に抵触する恐れが大きい。
  当会はこれまで、「平和的にイラク問題を解決することを求める声明」(2003年2月19日)、「イラク問題特別措置法案についての会長声明」(2003年7月4日)、「イラク問題特別措置法可決成立に関する会長声明」(2003年7月26日)、「イラク派遣反対会長声明」(2003年12月9日)、「陸上自衛隊のイラク派遣命令に反対する声明」(2004年1月9日)、「自衛隊のイラクからの即時撤退を求める会長声明」(2004年5月21日)、「自衛隊のイラク派遣延長反対、イラクからの即時撤退、並びに『イラクにおける人道復興支援活動等の実施に関する特別措置法』(イラク特措法)の廃止を求める会長声明」(2004年11月30日)、「『イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法』の2年間延長反対、イラクからの自衛隊の即時撤退並びにイラク特措法の廃止を求める会長声明」(2007年6月7日)を発表し、派遣が憲法9条に違反するおそれが大きいことから自衛隊のイラク派遣に反対し、その即時撤退およびイラク特措法の廃止を求めてきた。

2  本年4月17日、名古屋高等裁判所は、いわゆる自衛隊イラク派遣差止訴訟判決において、判決理由の中で「航空自衛隊の空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員をバグダッドへ空輸するものについては、(中略)他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動である」、「現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる。」と判示した。
  さらに、同判決は、平和的生存権について「現代において憲法の保障する基本的人権が平和の基盤なしには存立し得ないことからして、全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であるということができ、単に憲法の基本的精神や理念を表明したに留まるものでない。」とした上で、一定の場合について具体的権利性を認めた。
  同判決は5月2日に確定した。

3  今般の名古屋高裁判決は、これまで当会が指摘してきた自衛隊のイラク派遣の違憲性について、裁判所もこれを認めるに至ったものであり、平和的生存権の具体的権利性を認めたことともあわせ、高く評価できるものといえる。

4  当会は、政府に対し、裁判所が示した違憲の判断を尊重し、直ちに航空自衛隊の空輸活動を停止し、自衛隊をイラクから即時に撤退させること、及びイラク特措法の廃止を改めて強く求めるものである。


      2008年(平成20年)5月19日

京都弁護士会                

会長  石  川  良  一


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