「消費者が主役の一元的消費者行政組織の実現を求める会長声明」(2008年5月19日)


  現在、消費者を取り巻く環境は、食の安全(餃子問題、表示偽装問題など)、製品の安全(パロマガス機器一酸化炭素中毒事故、シュレッダーによる指切断事故など)、取引分野における様々な問題(不当約款に基づく解約金や敷金の不返還など)、手を替え品を替えて繰り返される各種悪質商法及び多重債務問題など、安全・安心を脅かす事件・事故が後を絶たない。
  こうした中で、去る4月23日、福田康夫内閣総理大臣は、消費者行政推進会議において「来年度から消費者庁を発足させること」を表明した。長年、消費者問題に取り組んできた当会としては、これまでの消費者問題の原因の一つは、各省庁の組織・施策が、産業振興を第一としてきたことや行政組織がタテ割りであることにあると考えるため、福田総理の表明した消費者庁構想自体は高く評価するものである。
  ただ、消費者問題を根本的に改善するためには、新たな省庁として消費者庁を創設するだけではなく、消費者の権利・利益の実現を主眼とした消費者主役の組織でなければならない。
  当会は、新組織の在り方についての調査・研究・提言を行うべく消費者行政一元化推進本部を設置したところである。今後も様々なシンポジウムを開催し、関係各所に対する意見等を発信していく予定であるが、まずは、新組織には次のような権限・機能を措置することが必要であると考える。
1.関係法令を主管するとともに、他の省庁及び事業者に対する強い権限を有すること。
2.法令等が未整備の消費者問題発生分野について、適時適切に消費者政策の企画・立案・実行をするとともに、これらが可能な人的及び予算的措置が講じられていること。
3.消費者に一番身近な行政機関である地方自治体における相談窓口の人員及び予算の拡充を行ったうえで、新組織と地方自治体との間で人・情報・権限の連携・相互補完体制を構築できる組織であること。
4.被害の拡散防止と個々の被害の回復のために、あらゆる消費者被害情報を迅速かつ一元的に収集し、適切に分析し、消費者に公表することができる組織であること。
5.事業者のやり得を許さないために違法収益をはく奪できる権限を措置すること。
6.消費者施策の企画・立案・実行には、消費者問題に携わる民間人や消費者団体を積極的に活用するとともに、これらの民間組織の活動を支援する制度を整備すること。


    2008(平成20)年5月19日

京都弁護士会                
            
会 長  石  川  良  一


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