声明

入管法改正に反対する会長声明(2009年5月18日)


  外国人の在留管理を国に一元化して強化する出入国管理及び難民認定法などの改正法案(以下、「本法案」という。)が今年3月に国会に上程され、現在、審議中である。
  本法案は、(1)外国人の在留管理を国に一元化すること、(2)外国人登録証明書を廃止し、中長期在留者については在留カード、特別永住者については特別永住者証明書を新設すること、(3)住民基本台帳を外国人にも適用すること、などを主な内容としているが、外国人の人権保障と多民族多文化共生社会の構築の観点からは大きな問題がある。
  したがって、当会は、特に以下の点について、本法案に反対するものである。

1  在留カード、特別永住者証明書については、受領、提示、常時携帯が義務づけられており、受領、提示については1年以下の懲役又は20万円以下の罰金、常時携帯については在留カードは20万円以下の罰金、特別永住者証明書は10万円以下の過料が科せられることになっている。これは、永住者に関しては国連自由権規約委員会が永住者の外国人登録証明書の常時携帯義務違反に刑事罰を科すことは自由権規約26条に違反すると勧告したことに反する上に、戦前から日本で生活する旧植民地出身者やその子孫である特別永住者に過度の負担を課すと同時に外国人全てを監視の対象とすることにより差別や偏見を助長するものとなりかねない。よって、このような受領、提示、常時携帯義務に対する罰則等の規定は削除すべきである。

2  外国人の在留管理が出入国審査や退去強制手続き等を行う国(法務省)に一元化されることに加えて、在留カード、特別永住者証明書のカード番号については住民基本台帳法における住民票コードにおける閲覧・利用に関する制度(告知要求・利用制限)すらないため、カード番号をマスターキーとして、すべての個人情報が名寄せされ、利用される危険がより高い。少なくとも、個人情報保護のための特別な規定を整備すべきである。

3  外国人が所属する学校、勤務先などの機関に変更等が生じたときには、当該外国人が国に届出をしなければならないことに加えて、それらの機関も受入れの開始及び終了「その他の受入れの状況に関する事項」の届出を国に行うよう義務づけられている。しかし、「その他の受入れの状況」にはどのような情報が含まれるのか不明確であり、大学や企業などの外国人を受け入れる機関に外国人を監視させる役割を事実上果たさせ 無用な負担を負わせることになりかねない。このようなことになれば、学問の自由や外国人のプライバシー権などを侵害するものとなりかねないので、かかる規定は削除すべきである。

4  日本人の配偶者等や永住者の配偶者等の在留資格を持つ外国人が「その配偶者の身分を有する者としての活動を継続して三月以上行わない」ときなども、在留資格取消制度の新たな対象とされている。しかし、すでに現行法下においても、外国人配偶者は日本人配偶者の協力がなければ在留期間更新許可が得られないため、日本人配偶者に対して弱い立場に置かれている。外国人配偶者はそもそも言語、生活習慣、文化の違い等により、社会的に孤立しやすい立場に立たされることが少なくないが、それに加えて上記のような在留資格制度のあり方が、不貞行為やDVを行なう日本人配偶者をさらに助長している。
  今回の改正案は、相手方の不貞行為やDV被害などが原因で別居を余儀なくされている者まで取消の対象となりかねず、ただでさえ社会的に孤立しやすい外国人配偶者にさらに暴力等を甘受することを強いる不正義につながるおそれが高いので、かかる規定は削除すべきである。

5  中長期在留者、特別永住者、一時庇護許可者及び仮滞在許可者については、「住民の利便を増進する」こと等を目的とする住民基本台帳に新たに記載することとされている。しかし、このことによって、住民基本台帳に記載されない短期滞在者や不正規滞在者らが、従来の外国人登録制度下では受けることができていた労働法制による保護や医療、子どもの就学等の行政サービスの対象からさえも排除されるおそれがある。これらは、いわば人間らしい生活を送るための最低限のセーフティネットであり、現在でさえも不十分な権利をさらに侵害するものとなるから、これらの対象者を排除する運用は許されるべきではない。

  よって、以上の諸点が修正されない限り当会としては入管法等の改正に反対するものである。


2009年(平成21年)5月18日

京都弁護士会              
            
会長  村  井    豊  明
  

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