声明

「海賊行為対処法案」に反対する会長声明(2009年5月18日)


1  ソマリア沖では、本年3月末より、海上自衛隊の護衛艦2隻が、自衛隊法82条に基づく海上警備行動を開始している。しかし、日本の領海を遙かに超えたソマリア沖での自衛隊の活動は、我が国を防衛するという自衛隊の主たる任務からは想定されていない事態であり、憲法9条及び自衛隊法3条1項,2項に違反するおそれがある。

2  さらに政府与党は、4月23日、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(海賊行為対処法案)を5日間の審議で衆議院を通過させ、参議院に送付した。
(1)  ソマリア沖は、海賊行為が「平和に対する脅威」であることを前提に海賊制圧のためソマリア国内で「あらゆる措置を講じること」を認める国連安保理決議にもとづいて、各国が軍隊を派遣して作戦を展開している緊迫した海域である。
  これまでの自衛隊海外派遣において武器の使用範囲は正当防衛や緊急避難の場合に限定されていたが、法案は、制止の措置に従わず他の船舶につきまとう等の行為を継続する海賊船を停止させるための武器使用を認めている。このように武器使用範囲を拡大し、任務遂行のための武器使用を認める法案は、武力の行使に至る危険があり、憲法9条1項に違反するおそれがある。
  また法案は、海賊行為の対象を我が国の船舶に限定していないから、他国の軍艦と共同で海賊船に対して武器を使用する事態も予想され、集団的自衛権の行使に及ぶ危険性も否定できない。
(2)  このように重大な問題があるにもかかわらず、法案は、海賊対処行動について国会へ事後報告で足るとして承認を要件としていない。法案には、国民代表機関たる国会によるコントロールが及ばないという欠陥がある。

3  かつてマラッカ海峡で海賊被害が多発した際、日本は、アジア諸国に対して海賊取締技術の提供や、海上保安庁を派遣しての連携訓練といった協力を行い、これにより海賊行為を減少させた実績がある。ソマリアの海賊問題の根本的な解決にはソマリアの経済復興・貧困解消・秩序回復が不可欠であり、海賊取締に向けた沿岸諸国との協力体制の構築が緊急の課題である。憲法9条を持つ日本には、こうした面での支援こそが求められている。

4  よって、当会は、海賊行為対処法案に反対し、ソマリア沖からの護衛艦の撤退を求め、法案審議については徹底して行うことを要請する。

  2009年(平成21年)5月18日

京都弁護士会              
            
会長  村  井    豊  明
  

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