提言

京都市の出資法人の情報公開制度に関する提言(2002年12月18日)




                                                2002年(平成14年)12月18日
京都市長  桝  本  頼  兼  殿

                                                                        京都弁護士会
                                                                会長  田  畑  佑  晃


                        京都市の出資法人の情報公開制度に関する提言


1、京都市は京都市情報公開条例を改正し、次のような規定を置くべきである。
    なお、以下に「出資法人」というのは、京都市が資本金その他これに準ずるものの2分の
    1以上を出資している法人をいう。
    
  (1)京都市住宅供給公社、京都市土地開発公社を実施機関とする。
  
  (2)出資法人の情報公開に関し、次のように定める。
  
      市長は、出資法人に対し、その保有する情報の公開を推進するために必要な助言、指導
    等を行うとともに、法令等の規定に基づき、出資法人の保有する文書を積極的に収集する
    よう努めるものとする。
      市長は、出資法人に関する文書について公開請求があった場合において、当該公開請求
    に係る文書を保有していないときは、当該出資法人に対し、当該文書を提出するよう求め
    ることができる。
    
2、京都市長は、出資法人について、情報公開の規定を早急に策定し整備するよう指導する。
    出資法人の情報公開の規定には、非開示決定に対する不服申立手続を設け、京都市出資法
    人情報公開審査会への諮問を義務付けその回答を尊重しなければならない旨を定める。
      京都市長は、出資法人の連絡協議会を組織し、この連絡協議会に情報公開に関する不服
    申立について調査審議するため、京都市出資法人情報公開審査会を設置するよう指導する。


                                  提  案  理  由


1、地方自治体の出資法人の情報公開
    近時、我国の民主主義の成熟とともに、行政に対する住民の関心が高まっている。いうま
    でもなく、行政は、政治の主人公である国民に開かれた透明なものでなければならない。
      すでに、都道府県レベルでは情報公開条例により、国レベルにおいても情報公開法が施
    行され、住民の知る権利の具体化が図られている。
      さて、京都市が出資して設立した法人いわゆる京都市の「外郭団体」は、行政が、資本
    金・出資金を出捐し、財政的人的援助を行っているものであり、その運営が適切に行なわ
    れるか否かは住民の利害に直結する。住民の「知る権利」の観点からすれば、出資法人に
    も行政と同様の情報公開を求める声が高まってきているのは当然の要請であると思われる。
      このような背景の下、当会では、京都市の出資法人の情報公開の実態を調査するととも
    に、これを分析してあるべき制度を検討することとした。
  
2、京都市の出資法人の情報公開の実態
    当会は、平成14年3月、京都市の出資法人に対し、情報公開に関するアンケート調査を行った。
    その調査項目と回答の結果は、別紙のとおりである。
      京都市の外郭団体の場合、情報を公開する規定については、すでにこれを規定している
    ところがかなり見られるが、半数以上の法人がいまだ制定していない。京都市においては、
    出資法人の情報公開について、対応がまだまだ遅れていると指摘せざるをえない。市長に
    おかれては、各団体に対し、すみやかに規定が策定されるよう強力な指導力が発揮される
    べきである。
    そして、出資法人の情報公開の規定を制定するにあたっては、つぎのような観点が不可欠
    であると考える。
  
3、出資法人を京都市情報公開条例の「実施機関」とする方策

  (1)地方三公社について
  
    (ア)これまで地方三公社(土地開発公社、住宅供給公社、道路公社)は、地方自治体と
          法人格を異にするという形式的な理由で、情報公開条例の実施機関から除外されて
          きた。しかし、地方三公社は、公用土地の取得や住宅用地の確保等特別法に基づく
          公共性の高い事業を目的とし、自治体行政の重要な一翼を担っているだけでなく、
          地方三公社への出資割合も100%自治体からのものである。また、地方三公社に対
          しては、理事長等が自治体の長によって任命されているだけでなく、議会による監
          督も及んでいる。これらのことを考慮するならば、地方三公社は、実質的には自治
          体の一部を構成するものであるということができる。
            最近では、自治体が出資した多額の資金の使途や運用に関する関心も高まってき
          ており、地方三公社が保有する情報に関しては的確な公開が要請される。このため
          には、地方三公社を情報公開条例の実施機関とすることにより、自治体の保有する
          情報と同様の情報公開を実施することが簡明である。
    (イ)国においても、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下、「独立
          行政法人等情報公開法」という。)が公布され、地方三公社に対応する独立行政法
          人や特殊法人について、行政機関と同程度の情報公開を認めるに至っている。
            国と地方との整合性のある取り扱いを実行に移すという観点からも、地方三公社
          について自治体と同じように情報を公開することが求められる。
          
    (ウ)地方三公社を実施機関とすることが、地方三公社の設立根拠法に違反するのではな
          いかとの疑問がかつてはあった。
            しかし、旧自治省と旧建設省は、独立行政法人等情報公開法の立法化の過程で、
          地方三公社を情報公開条例の実施機関にすることは、それぞれの設立根拠法に違反
          しない旨の見解を示している(「特殊法人等の情報公開制の整備充実に関する意見」
          平成12年7月27日・特殊法人情報公開検討委員会)。このことからも、地方三公社
          を実施機関とすることの法律上の障害は存在しない。
          
    (エ)そして、すでに、福岡市情報公開条例(平成14年3月28日福岡市条例第3号)におい
          ては、福岡市住宅供給公社及び福岡市土地開発公社は「実施機関」と規定されてい
          る。
            京都市においても、すみやかに京都市情報公開条例を改正し、京都市住宅供給公
          社、京都市土地開発公社及び京都市道路公社を「実施機関」とする措置をとるべき
          である。
          
  (2)その他の出資法人について
  
        地方三公社以外の出資法人の法人形態は、民法34条に基づく公益法人(財団及び社団)
        のほか、社会福祉法人、商法法人等多様である。これらの出資法人にも、自治体の内
        部機関と同様の情報公開義務を課すことが出来れば事は簡明であるが、そうなると、
        法人の設立趣旨を損なうことにならないか、またその自主性及び独立性を害すること
        にならないか等問題が多い。出資法人の情報公開については、すべてを一律に取り扱
        うことは困難である。
          しかし、出資法人は、自治体の事業の一部を補完しその一翼を担っており、また、
        自治体からの財政的人的援助を受けているのであるから、自治体が、市民に対する説
        明責任を果たすためにも、最大限の情報公開を促進させる方策が講じられなければな
        らない。
  
4、市長が出資法人の保有する情報を積極的に収集し公開していく方策

  (1)市が出資している法人については、市が財政的人的な援助を行っている以上、市長が
        出資法人に対し、指導監督する立場にある。したがって、出資法人の保有する情報に
        ついても、提出を求め、これを収集する権限が付与されている。
          市長が出資法人の情報を保有していれば、市民は、京都市情報公開条例にもとづい
        てこれらの情報を入手することが出来るようになり、実質的に出資法人の情報公開が
        図られることになる。
          この点、京都市情報公開条例は、第36条(出資法人の情報公開)において、
          
          1.  本市が資本金、基本金その他これに準ずるものを出資する法人であって、別に
              定めるもの(以下「出資法人」という。)は、この条例の趣旨にのっとり、そ
              の保有する情報の公開に関して必要な措置を講じるよう努めなければならない。
              
          2.  実施機関は、出資法人に関する情報を収集し、公開するよう努めるとともに、
              出資法人に対し、前項に規定する必要な措置を講じるよう指導に努めなければ
              ならない。
              
        と定めるだけである。
        
  (2)当会は、この方策に関し、他の地方自治体の情報公開条例の規定を調査したが、その
        内容の概要は、別表に記載したとおりである。
          この点の取り組みについても、京都市は他府県に比較して大幅に遅れていると指摘
        せざるをえず、すみやかに京都市情報公開条例を改正し、提言に述べるような規定を
        置くべきである。
  
5、出資法人の非開示決定に対する不服申立手続

  (1)出資法人が自ら情報を公開する規定を制定した場合、公開請求に対し、出資法人が非
        開示決定をしたときには、これに対し、不服申立をする手続が整備されていなければ
        ならない。
          不服申立については、団体自身に対する異議申立を認める方式を規定している出資
        法人がある。しかし、団体自身に再度の考案をさせるだけでは、当初の非開示決定が
        新たに見直される可能性は当然低くなり、不服申立としての意味はあまりない。不服
        申立手続においては、第三者性を有する者が参加して、非開示とした原決定の当否を
        審査しなければ、適切な判断がなされる保障がない。
          各地方公共団体の公文書情報公開条例が、行政不服審査法による不服申立について、
        決定主体(審査庁)を行政庁としつつ、情報公開審査会への諮問を義務付けその回答
        を尊重すべく規定しているのは、この要請による。
        
  (2)東京都や大阪府の「監理団体情報公開モデル要綱」はこの方式を採用しているという
        ことができる。すなわち、団体ごとに「情報公開審査会」を設け、その意見を聴くこ
        とを義務付けている。
          しかし、この方式の有用性については疑問なしとはしない。
          地方自治体という大きい単位につき、一つの審査会を置いて、管轄部局を問わず一
        括して不服申立の審査を行うことと比較すると、出資法人ごとに審査会を置くという
        のは、いわば地方の各部局ごとに審査会を置くようなものであり、その効率性、事務
        局体制、経費負担の点で実効性が薄い。また、審査会委員の人選の面でも、規模が小
        さくなるほど第三者性の確保が難しくなる。
          したがって、東京都や大阪府のモデル要綱に準じた制度を京都においても導入する
        ことは、その実現が難しく実質的な意味を持たないと思われる。
          よって、当会は、京都市においては、すべての出資法人の連絡協議会のようなもの
        を組織し、その協議会において一つの「出資法人情報公開審査会」を置いて、出資法
        人に対するすべての不服申立をその審査会において調査審議するという方式を持つこ
        とを提案する。
        
        
        
                                                                              以  上

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