「朝鮮学校に通う子どもたちを高校無償化の対象から排除しないことを求める会長声明」(2010年3月16日)


  今国会に上程された「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案」(以下「高校無償化法案」という。)について、現在国会で審議がなされている。この法案においては、「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として文部科学省令で定める各種学校についても対象として規定されている(第2条1項5号)。
  報道によれば、当初、高校無償化法案については、各種学校として認可されている外国人学校をもその適用対象とすることが念頭に置かれていた。ところが、中井洽拉致問題担当相が、拉致問題とからめて無償化の対象から朝鮮学校を外すよう川端達夫文部科学相に要請したことをきっかけに、朝鮮学校に通う子どもたちを本法案の対象外とする動きが表面化することになった。
  しかしながら、朝鮮学校が各種学校としての認可を都道府県知事から受けており、教育課程の確認が容易であること、現在、ほぼ全ての大学において「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」として朝鮮学校卒業生の受験資格が認められ、現に国公立をはじめとする多くの大学に朝鮮学校卒業生が進学していることからすれば、朝鮮学校が「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に該当することは明らかであり、朝鮮学校に通う子どもたちのみが無償化の対象から排除されるべき理由はどこにもない。
  それにも関わらず、国公立及び私立学校、そして専修学校、インターナショナルスクールや中華学校等の各種学校が無償化の対象となる中、朝鮮学校に通う子どもたちのみが無償化の対象から排除されることは、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約及び国際人権規約の禁止する差別にあたることはもとより、憲法第26条1項及び第14条1項に反するものである。また、「教育の機会均等に寄与すること」(第1条)を目的とする同法案の趣旨とも全く相容れないものである。このような子どもたちの教育を受ける権利に関する問題が、拉致問題等の政治的理由により左右されるべきでないことは言うまでもない。
  以上の理由により、当会は、朝鮮学校に通う子どもたちを高校無償化の対象から排除しないことを強く求めるものである。

2010年(平成22年)3月16日      

京  都  弁  護  士  会     

会  長    村  井  豊  明
    

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