「外国籍弁護士を調停委員の任命から排除しないことを求める会長声明」(2010年3月25日)


  当会は、2009年10月15日付、京都家庭裁判所からの推薦依頼を受けて、2010年(平成22年)4月1日からの任期の調停委員について、2009年11月27日付にて、外国籍弁護士1名を含む7人の調停委員候補者を当会弁護士の中から推薦した。
  ところが、本年1月26日に、京都家庭裁判所からは、今回については、弁護士調停委員の人数は足りているので新規採用のための最高裁判所への任命上申はしないという回答がなされた。
  またその回答の際、京都地方裁判所並びに家庭裁判所職員から、外国籍弁護士については、「調停委員の職務は公権力の行使に当たるので、日本国籍ではない弁護士を推薦されても裁判所としては任命上申することは出来ない」という説明もなされた。
  当会としては、「各単位会は、民事調停委員又は家事調停委員を裁判所に推薦するにあたり、民事又は家事の紛争解決に有用な知識と経験を有する会員を調停委員候補として推薦することとし、日本国籍の有無を考慮しない。」(2005年近弁連大会決議)という見地から、当該外国籍弁護士を家事の紛争解決に有用な知識と経験を有する弁護士として推薦したものであるところ、裁判所は、外国籍弁護士については任命上申をしないというのである。
  そもそも、民事調停委員および家事調停委員規則には国籍要件は規定されておらず、他に国籍要件の根拠となる法律も存在しない。それにもかかわらず、国籍を理由として任命上申をしないことであらかじめ排除することは、不合理な差別であって、憲法第14条、自由権規約26条の法の下の平等原則に反するものである。
  なお、調停委員の職務は、専門的知識や社会生活上の豊富な知識経験を生かして当事者の互譲による紛争解決を支援することにあり、いわゆる公権力の行使に当たるものではない。このことは、確定判決と同一の効力を持つ調停調書も当事者の合意を前提とするものであること、調停の呼出に対する過料の制裁等は付随的処分に過ぎない上に制裁自体は裁判所の裁量による決定であることからしても、変わるものではない。
  したがって、今後は、当会が調停委員候補者として推薦をした紛争解決に有用な知識と経験を有する弁護士については、外国籍であることを理由に調停委員の任命から排除しないことを求める。

    2010年(平成22年)3月25日
                                                                                                                                                  京都弁護士会

会  長    村  井  豊  明

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