「独立行政法人国民生活センターの機能強化を求める会長声明」(2010年5月18日)


  2010年4月28日に独立行政法人国民生活センター(以下「国民生活センター」という。)に対する事業仕分けの評価結果が公表された。この評価結果をふまえ、当会は国民生活センターの在り方について政府に次のとおり求める。

1.消費者行政の在り方については「消費者庁と国民生活センターの役割、連携の在り方を整理すべき」とした上で「経費の削減や拡充をすべきところはする」とされている。
    当会では、2007年11月6日付け「独立行政法人国民生活センターの整理統合化計画についての意見書」を公表し、国民生活センターの機能・権限の強化を求めた。国民生活センターが2009年8月に公表した年度別消費生活相談件数では2008年度は約94万件と6年ぶりに100万件を下回ったものの依然高水準で推移している。全国の消費者被害の状況に大きな変化はなく国民生活センターの機能・権限を強化すべき必要性は何ら減退していない。
    このため、国民生活センターの機能・権限を拡充、強化することを求める。

2.商品テスト事業については「農林水産消費安全技術センター、製品評価技術基盤機構に加え、民間検査機関と有機的なつながりをつくり、効果的かつ迅速に商品テストに結びつける体制を早急に整えるべき」とされている。
  消費者の安心・安全のためには実際に商品を使用する消費者の目線に立って商品テストを実施することが必要不可欠であり、そのためには被害相談を踏まえた商品テストを実施する国民生活センターが中核機能を担う必要がある。
    このため、 国民生活センターが行う商品テスト事業について、他のテスト機関との有機的な連携体制を整備するに際し、国民生活センターの役割、機能が後退することにならないよう求める。

3.研修事業については「国民生活センターでの研修事業の廃止を含めた見直し」とされている。
    各地の相談現場における苦情相談、あっせん機能の強化、あっせん率向上のためには職員、相談員のレベルアップが不可欠である。このレベルアップは各地の予算、人員体制に応じて行われればよいというものではなく全国的に行われる必要がある。そのためには、国民生活センターの研修事業は極めて重要であり、存続はもとより更に拡充することが必要である。相模原の研修施設については昨年度以降の地方消費者行政強化の取組みにより各地の研修予算が増額され、相模原の同施設の利用増加の見通しがあることから、今後の状況を踏まえて在り方を検討すべきである。現在の稼働率のみから拙速に判断すべきではない。
    このため、国民生活センターの研修事業について、存続はもとより更に拡充することを求める。また、相模原の研修施設の在り方については同施設における今後の研修の在り方、成果を踏まえた上で慎重に検討することを求める。

4.消費者庁及び消費者委員会設置法附則第3項において国民生活センターの業務等の整備に関する規定がされているところ、消費者庁関連3法案に対する衆参両議院の附帯決議では、附則各項に規定された見直しに関する検討に際しては、消費者委員会の意見を十分に尊重すべきこととされている。
    このため、国民生活センターの業務等の見直しについては、消費者委員会の意見を十分に尊重して行うことを求める。
  
    2010年(平成22年)5月18日
                                                                                                          

京都弁護士会                  
会  長    安  保  嘉  博

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