「市民の大きな司法」の実現のため、司法改革予算及び司法関連予算の抜本的増額を求める決議(2002年5月28日)



日本弁護士会連合会は、今次司法改革において、「小さな官僚司法」から「市民の大きな司法」への転換をめざして取り組みをすすめてきた。2001年(平成13年)6月、司法制度改革審議会意見書が公表され、これを受け、司法制度改革推進法の制定がなされ、司法改革は立法段階に入っている。2002年(平成14年)3月19日、閣議決定がなされた政府の「司法制度改革推進計画」は、司法制度改革推進法の基本理念のうえに、「司法の基本的制度が新しい時代にふさわしく、国民にとって身近なものとなるよう、国民の視点から、これを抜本的に見直し、司法の機能を充実強化することが不可欠」とし、司法制度改革を総合的・集中的推進がなされることなった。
しかしながら、今次司法改革の立法作業が進む今年度、これに逆行する事態する事態が招来されている。たとえば、法律扶助予算は、今次司法改革において、「法の支配」を地域のすみずみに及ぼす前提となるものであり、地域の市民の寄せる期待は大きなものがあるにもかかわらず、財団法人法律扶助協会に対する政府支出額はほとんど増額がなく、その結果、同協会京都支部における2002年度(平成14年度)の代理援助件数は、2001年度(平成13年度)実績より後退するに至り、多額の財源不足をもたらしかねない深刻な事態となっている。このような事態をみるとき,財政事情を理由として司法制度改革の制度設計そのものが歪められることにもなりかねない。
裁判官等の大幅増員、法科大学院の開設、国費による被疑者弁護制度や裁判員裁判制度の実施など、国民の期待する司法制度、これを支える法曹等人的基盤の充実、そして、司法の国民的基盤の確立、司法制度改革審議会意見書の趣旨の実現のためには、必要にして十分な財政的裏付けが用意されるべきであり,そのための格別の財政措置がとられなくてはならない。同意見書も、「政府におかれては、今般の司法制度改革の意義及び重要性を踏まえ、本改革の早期かつ確実な実現に向け、内閣を挙げ、本格的に取り組まれることを期待する。本改革の実現には、これに必要とされる人員・予算の確保が不可欠であり、厳しい財政事情の中にあって相当程度の負担を伴うものであるが、政府におかれては、これまでの経緯にとらわれることなく、真にこれらの諸改革を実現しうる方策をもって、大胆かつ積極的な措置を講じられるよう、強く要望する次第である。」とし、また、「裁判所、検察庁等の人的体制の充実を始め、今般の司法制度改革を実現するためには、財政面での十分な手当が不可欠であるため、政府に対して、司法制度改革に関する施策を実施するために必要な財政上の措置について、特段の配慮をなされるよう求める。」と繰り返し強調するところである。
当会は、政府・国会・最高裁判所に対し、今次司法改革に対する国民の大きな期待を裏切りかねない政府の財政措置について、深い憂慮を表明し、仮に国家財政の困難の中にあっても、百年の計のもと、同意見書の趣旨の実現を図り、司法改革予算及び司法関連予算の抜本的増額のため、速やかに果断な財政措置を講じることを強く求めるものである。

2002年(平成14年)5月28日

京 都 弁 護 士 会


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