意見書

「『(仮称)京都水族館』設置許可処分に関する意見書」(2010年6月28日)


2010年(平成22年)6月28日


京都市長  門  川  大  作  殿

意    見    書


京都弁護士会            

会  長  安  保  嘉  博

                                          

意  見  の  趣  旨



1  京都市がオリックス不動産株式会社に対して行った平成22年5月14日付「(仮称)京都水族館」(以下「本件施設」という。)設置許可処分は、その可否を決するために必要不可欠な本件施設に関する詳細な情報に基づかずになされたものであることから、これを事実上凍結し、あらためて結論の妥当性について再検討すべきである。
2  前項の再検討にあたっては、以下の点に留意すべきである。
(1)   京都市環境影響評価条例に準じた環境影響評価手続を実施すること
その手続においては、梅小路公園の防災機能・公園の効用(市民の憩いの場・集いの場としての役割など)、初年度200万人の来館者による公園周辺の住環境とりわけ交通渋滞による環境への影響、温室効果ガスの排出等を評価項目とし、公園利用の中止を含めた複数の代替案の検討を行うべきである。
(2)   そして、改めて第三者によって構成される諮問機関(以下「諮問機関」という。)を設置して諮問すべきである。
「諮問機関」は、公園利用者等を含めた委員で構成されるべきである。
また、本件施設に関するより詳細な情報をもとに、審議を尽くした上で答申を行うべきである。
(3)   その上で、本件施設のより詳細な情報を示してあらためて市民意見を募集し、その結果得られた意見について十分検討すべきである。



意  見  の  理  由


1  はじめに
  平成22年5月14日、京都市は、都市公園法(以下「法」という。)第5条に基づき、オリックス不動産株式会社(以下「事業者」という。)の公園施設設置許可申請に対して、「(仮称)京都水族館」の建築を許可するとする許可処分(以下「本件許可処分」という。)をなした。
これによって、事業者が梅小路公園の一部及び隣接する倉庫跡地に建設を計画している「京都水族館」(仮称。以下「本件施設」という。)が完工に向けて動き出すこととなり、事業者は本年7月15日に着工を計画している(なお、現時点では建築確認は下りていない。)。
本件施設は、第1に、市民から見て防災機能・公園の効用(市民の憩いの場・集いの場としての役割など)を有している梅小路公園の一角に建設されるという点、第2に、市民財産である梅小路公園に特定の営利企業の商業施設が建設されるという点、第3に、内陸型水族館であるという点、第4に、年間予定来館者数が200万人(事業者による開業初年度の需要予測)という大規模施設であるという点に特徴がある。

2  本件施設の特徴を踏まえれば、環境影響評価手続を実施すべきこと
  本件許可処分がなされるに当たって、環境影響評価手続は実施されていない。
しかし前述のように、本件施設は、市民財産である梅小路公園の一角に初年度予定来館者を200万人とする内陸型水族館を建設するというものである。200万人という来館者は、京都太秦映画村の約2倍の規模であって、このような大規模な内陸型水族館は、全国初の試みである。
そこで、このような施設が建設されることで、①公園の市民に対して負う防災機能・公園の効用にどのような影響を与えるか、②公園周辺の自動車交通量の増大に伴う交通事故の危険性や交通渋滞による環境悪化がどの程度になるか、③本件施設の建設及び運営による温室効果ガスの排出量がどの程度になるか、④人工海水を使用する大規模内陸型水族館であるが、排水等の水処理がどのような影響を与えるか等、環境に及ぼす影響については、慎重に評価されるべきである。
この点、後述するように本件施設の比較的詳細な内容が事業者により明らかにされたのは、平成22年4月23日付「(仮称)京都水族館の事業運営についての考え方」によってであり、これは本件許可処分のわずか20日あまり前にすぎない。しかも、これとて本件施設の内容が詳細にわたって明らかになっているとは言い難く、たとえば、建物の構造についてはわずかに平面イメージ図が1枚あるのみである。そうすると、本件施設の環境への影響評価はほとんど行われていないといわざるを得ない。
京都市は、平成20年3月に梅小路公園の再整備についての基本的な考え方をまとめた「梅小路公園再整備の方向性(案)」を示していたが同年12月、下記5項で述べる平成21年意見募集の結果としての市民意見を踏まえるとして、本件許可処分をなす前提としての認識を表す「梅小路公園の再整備に関する京都市の考え方について」(以下「考え方」という。)を示した。
しかし、その中で、上述の①~④に対する検討は、極めて不十分であるといわざるを得ない(注1)。
これは、上述①~④を評価項目とする環境影響評価手続が実施されなかったことが、大きく影響しているものと解される。
たしかに、本件施設は、環境影響評価条例2条(2)の「別に定めるもの」には該当しない。しかし、本件施設の特徴は、いずれも環境に与える影響が大きいものであり、慎重な検討が必要であったことからすれば、本件施設の詳細が明らかになった現段階で、京都市環境影響評価等に関する条例に準じた環境影響評価手続を実施するのが相当である。
そして、本件施設をそのまま建設することが環境に過大な負荷を与えるものであると認められるときは、①本件施設の建設を中止する、②本件施設の建設内容を変更する、③他の利用方法を検討するなど、複数の代替案の検討を行うべきである。

3  「諮問機関」は、公園利用者等を含めた委員で構成されるべきこと
京都市は、本件許可処分をなすにあたり、「京都水族館(仮称)整備構想検討委員会」(以下「第三者委員会」という。)を設置して、平成20年9月3日、第三者委員会に対し、「公園施設」(法第2条第2項第6号・令第5条第5項第1号)の設置許可の妥当性について諮問を行い、同委員会は、平成20年12月24日、京都市に対し、「梅小路公園『京都水族館(仮称)整備構想』に係る都市公園法第5条に基づく公園施設の設置許可の妥当性について」と題する答申書(以下「答申書」という。)を提出した。
京都市による「第三者委員会」の設置・諮問は、公園管理者である京都市が法第5条に基づく公園施設の設置許可の判断の公正を期するためにおこなったものである(京都水族館(仮称)整備構想検討委員会設置要綱第1条)。
京都市が「第三者委員会」のような「諮問機関」を設置して諮問することの意義は、計画に関係する各分野の専門家の知見を得るとともに、広く利用者としての市民、とりわけ本件施設の設置される梅小路公園を日常的に利用する市民や近隣住民(以下「公園利用者等」という。)の意見を聞くことにより、本件施設について、以下の点を的確に判断することにある(注2)。
①   法第2条第2項にいう「公園施設」に該当するか。
  なお、同条によれば、「公園施設」とは「都市公園の効用を全うするため」の施設をいうとされることから、その判断が求められる。
②   法第5条第2項各号の要件を充足するか。
なお、かかる要件該当性判断については、都市公園法運用指針により「第三者に対する公園施設の設置の許可は、都市公園の配置、規模および性格を勘案し、当該公園施設が設置されることとなる都市公園の全体計画に基づいた明確な設計意図のもとに、当該都市公園の効用が全うできるよう行う」こととされていることから、その判断も求められる(注3)。
ところが、京都市が現に設置した「第三者委員会」の委員は、学識経験者(大学教授)3名、公認会計士1名、PTA関係者1名、下京区市政協力委員1名の合計6名で構成され(答申書16頁)、公園利用者等を代表する委員が含まれておらず、その構成は適切であったとはいえない(注4)。

4  「諮問機関」は、本件施設に関する詳細な情報をもとに、審議を尽くした上で答申を行うべきこと
「第三者委員会」が審議を行った期間は、平成20年9月3日から同年12月15日までの3か月あまりの期間であり、審議の回数はわずか5回である(答申書15頁)。
また、本件施設の比較的詳細な内容が事業者より明らかにされたのは、平成22年4月23日付「(仮称)京都水族館の事業運営についての考え方」によってであり、「第三者委員会」が審議を行った時点で事業者から事業内容について提出されていた資料は、2008年7月付「(仮称)京都水族館計画のご提案」に止まっているのであって(答申書57頁以下)、同委員会は、本件施設の詳細ないし確定的な内容を知らされないままに短期間に答申を行っている。たとえば、イルカラグーンをはじめとする展示ゾーンのフロア構成すら審議会資料に添付されていない。
現に「答申書」には、「構想段階ではいまだ明らかになっていない点もある。」(答申書7頁「第3 検討結果 7 提案者、京都市への要請事項等」柱書)、「具体的な事業計画の立案はこれからであり、本提案ではまだまだ未確定の要素も多い」(同9頁「第4 おわりに」第2段落)と述べられている。
このことからすれば、「第三者委員会」に対し、本件施設について、第3項で述べた法第2条第2項・第5条第2項の要件を充足するか否かを正確に判断しうる十分な情報が提供されていたとは到底いえず、その結果審議が十分に尽くされていたとは言い難い(注5)。
そこで、「諮問機関」によって、あらためて、事業者提出の平成22年4月23日付「(仮称)京都水族館の事業運営についての考え方」、および、より本件施設の詳細が分かる資料に基づいて、本件施設についての再検討がなされる必要があるといえよう。
失われた原風景や住環境を取り戻すことは困難を極める。梅小路公園の利用にあたっては、その利用方法が、「子どもからお年寄りまで多くの人々に笑顔と感動のみならず、明日の京都と地球を考える契機を与え、広く市民から愛される」(答申書9頁「第4 おわりに」第3段落)ものとなるよう、「諮問機関」は、本件施設に関する十分な情報を得た上で、あらゆる可能性を検討し、拙速な結論を避け、審議を尽くした上で答申を行うべきである。

5  市民意見の反映が不十分であること
(1)   市民の懸念の払拭の必要性
京都市は、平成20年9月19日~10月21日の間に「京都水族館(仮称)整備構想」への市民意見募集(以下「平成20年意見募集」という。)を行った。
その結果については、249通の意見をインターネット・ホームページにて公表しているが、同市民意見では、環境負荷や立地の問題をはじめとして本件施設の設置を疑問視する意見が多数を占めていた。
すなわち、①京都に水族館を作ることの必要性、②景観、③CO2の大量排出、④ゆったりとした静かな空間・緑地空間が奪われるおそれがあること、⑤隣接する小学校への騒音や安全面での影響、⑥イルカショーは動物愛護・教育の観点から問題であること、⑦排水の処理、⑧交通渋滞やアクセス、⑨ごみや悪臭といった内容が懸念事項の多くを占めている(答申書33頁以下)。
さらに京都市は、「京都市土地利用の調整に係るまちづくりに関する条例」(以下「まちづくり条例」という。)に基づき、「(仮称)京都水族館・(仮称)京都鉄道博物館の開発構想」について、平成21年7月13日から8月10日までの期間にも意見募集(以下「平成21年意見募集」という。)を行い、市民等から186通の意見書が提出された(「考え方」2頁)。
同市民意見では、本件施設の開発構想に対する賛成意見は3通のみであり(条件付き含む)、賛否不明を除き9割以上は反対意見であった。
反対意見は、①CO2の排出などの自然環境や、周辺住民の住環境等環境破壊を理由とするものがもっとも多く、②市民のための貴重な緑地・公共空間であり住民の憩いの場としての役割や、災害時の避難地域としての役割等、梅小路公園の効用維持の必要性を理由とするものも多い。そして、③内陸であること、④動物保護の必要性、⑤京都の伝統、文化、歴史の保護の必要性、⑦収益面、⑧交通問題と多岐に亘っている。
このように、平成20年意見募集の結果で指摘された懸念事項は、平成21年意見募集における市民意見においてもほとんど払拭できていないことがわかる。
まちづくり条例は第1条において、「この条例は、良好なまちづくりの推進を図るため、(中略)開発事業の構想について本市及び市民の意見を反映させるための手続等を定めることにより、まちづくりの方針に適合した土地利用を促し、もって都市の健全な発展と市民の福祉の増進に寄与することを目的とする。」と規定している。
上記市民意見は、市民の意見が具体的に示された結果であるから、京都市は、本件処分をなすにおいても上記市民意見を十分考慮しなければならず、それは上記市民意見で示された市民の懸念を払拭することで示されなければならない。
特に、本件施設が、私有地ではなく京都市の都市公園内に建設されるものであることに鑑みれば、なおさら市民意見の反映には十分考慮する必要があると考えられる。
ところが、京都市は、平成21年意見募集の結果を公表すること自体行っていない。
また、京都市は「考え方」において、平成21年意見募集の結果を踏まえて市民の懸念に答えたとしている(2頁)。しかし、同反対意見の懸念に対して十分に答えているとは言い難く(注6)、平成20年意見募集で示された市民の懸念にも答える必要があるところ、これにも十分答えているとは言い難い。
その意味で、京都市には市民の懸念の払拭について、なお一層の努力が求められるところである。
(2)   上記何れの市民意見も、本件施設の詳細を知らされていない段階でのものであること
前述のように、本件施設の比較的詳細な内容が事業者より明らかにされたのは、平成22年4月23日付「(仮称)京都水族館の事業運営についての考え方」によってであり、しかも、これとて本件施設の内容が詳細にわたって明らかになっているとは言い難い。
そこで、本件施設の詳細な情報を前提として、あらためて市民意見を聴取する機会を設けることが必要であると思われる。
(3)   さらに、市民意見の中には、本件施設の設置ないしイルカショーについて、生物多様性条約第8条・第9条(注7)や、ユネスコ「動物の権利世界宣言」第4条(注8)に違反するとするものがあるが、市民意見に具体的な条文を摘示して主張するものがある以上、その意見については十分に耳を傾け、その検討結果について応答することが求められよう。
(4)  以上の事実を前提とすれば、京都市は、本件施設のより詳細な情報を示してあらためて市民意見を募集し、その結果を踏まえて、本件許可処分の妥当性を再検討すべきである。

6  結語
  以上より、頭書のとおりの意見を申し述べるものである。
以  上


(注1)「考え方」における本文①~③についての検討内容
①  梅小路公園の防災機能について、水族館の整備提案箇所の大部分を占めているのは京神倉庫跡地であり、広域避難場所には含まれず、防災機能への影響はないとしている。
しかし、事業者初年度予測で200万人もの来館者が訪れることによる影響については、何ら言及されていない。また、市民の憩いの場としての公園の効用の低下については、言及がなされていない。
②  交通渋滞等による環境悪化については、自家用車による来園抑制をすると述べるのみであり、具体的な方策については触れられておらず、駐車場の出入口となる七条通りの交通渋滞が付近の環境に与える影響及びこれに対する対策は触れられていない。
③  温室効果ガスの排出量について、京都市は、事業者に対して、省エネルギー機器の導入や施設運営時の具体的な取組に加え、カーボンオフセット事業や排出量取引の導入などの検討を求めており、また本件施設計画が国土交通省の「住宅・環境物省CO2推進モデル事業」に採択されており、温室効果ガス削減のリーディングプロジェクトとして建設・運営されることを期待するとしている。
    この点についても、上記手法を採用した上で予想される温室効果ガスの排出量を示した上で、その排出量が環境に与える影響について検討が不可欠であるが、このような検討はなされていない。

(注2)都市公園法
第二条   この法律において「都市公園」とは、次に掲げる公園又は緑地で、その設置者である地方公共団体又は国が当該公園又は緑地に設ける公園施設を含むものとする。
一   都市計画施設(都市計画法 (昭和四十三年法律第百号)第四条第六項 に規定する都市計画施設をいう。次号において同じ。)である公園又は緑地で地方公共団体が設置するもの及び地方公共団体が同条第二項 に規定する都市計画区域内において設置する公園又は緑地
二   次に掲げる公園又は緑地で国が設置するもの
イ  一の都府県の区域を超えるような広域の見地から設置する都市計画施設である公園又は緑地(ロに該当するものを除く。)
ロ  国家的な記念事業として、又は我が国固有の優れた文化的資産の保存及び活用を図るため閣議の決定を経て設置する都市計画施設である公園又は緑地
2   この法律において「公園施設」とは、都市公園の効用を全うするため当該都市公園に設けられる次の各号に掲げる施設をいう。
一   園路及び広場
二   植栽、花壇、噴水その他の修景施設で政令で定めるもの
三   休憩所、ベンチその他の休養施設で政令で定めるもの
四   ぶらんこ、すべり台、砂場その他の遊戯施設で政令で定めるもの
五   野球場、陸上競技場、水泳プールその他の運動施設で政令で定めるもの
六   植物園、動物園、野外劇場その他の教養施設で政令で定めるもの
七   売店、駐車場、便所その他の便益施設で政令で定めるもの
八   門、さく、管理事務所その他の管理施設で政令で定めるもの
九   前各号に掲げるもののほか、都市公園の効用を全うする施設で政令で定めるもの
第二条の三   都市公園の管理は、地方公共団体の設置に係る都市公園にあっては当該地方公共団体が、国の設置に係る都市公園にあっては国土交通大臣が行う。
第五条   第二条の三の規定により都市公園を管理する者(以下「公園管理者」という。)以外の者は、都市公園に公園施設を設け、又は公園施設を管理しようとするときは、条例(国の設置に係る都市公園にあっては、国土交通省令)で定める事項を記載した申請書を公園管理者に提出してその許可を受けなければならない。許可を受けた事項を変更しようとするときも、同様とする。
2   公園管理者は、公園管理者以外の者が設ける公園施設が次の各号のいずれかに該当する場合に限り、前項の許可をすることができる。
一   当該公園管理者が自ら設け、又は管理することが不適当又は困難であると認められるもの
二   当該公園管理者以外の者が設け、又は管理することが当該都市公園の機能の増進に資すると認められるもの
3   公園管理者以外の者が公園施設を設け、又は管理する期間は、十年をこえることができない。これを更新するときの期間についても、同様とする。

(注3)「都市公園法運用指針」
2.公園管理者以外の者の公園施設の設置等について(法第5条関係)
(1)  趣旨
(2)  運用に当たっての基本的な考え方
①  許可の対象
都市公園法第5条第2項第1号に規定する「公園管理者が自ら設け、又は管理することが不適当又は困難」とは、公園施設を運営するに当たり、一般的には営利行為を伴うもの、又は専門的な経営・運営ノウハウを必要とするものが対象となるものと考えられる。
同法第5条第2項第2号で言うところの「当該都市公園の機能の増進に資する」かどうかについては、対象とする公園施設(同法第2条第2項及び同法施行令第4条各号に掲げるもの)の効用の内容や程度及び当該公園施設の存する都市公園の設置目的や性格等の観点から判断することが必要である。なお、ある公園施設が都市公園の効用を全うするものに該当するか否かについては、個々の都市公園の設置目的や性格に応じて具体的に判断されるべきものである。
また、「当該都市公園の機能の増進に資すると認められるもの」の適用については、例えば、
・ 公園管理者が自ら公園施設を設置又は管理するよりも、地域の状況に即したきめ細かな管理等が期待される場合(例えば地域住民団体による身近な公園における公園施設の設置又は管理など)
・ 公園管理者が自ら公園施設を設置又は管理するよりも、第三者が有する専門的なノウハウや企画力、資金力等により、当該公園施設の機能が向上する場合や、当該公園施設の管理コストが節減される場合(例えば特定のスポーツ競技のための公園施設の設置又は管理を当該スポーツ競技の愛好団体が行う場合、レストランを管理する民間事業者がレストラン前の芝生広場や花壇も一体的に管理して利用者が多い週末等にはオープンカフェとして利用する場合など)などが考えられる。
②  公園計画との関係
第三者に対する公園施設の設置の許可は、都市公園の配置、規模および性格を勘案し、当該公園施設が設置されることとなる都市公園の全体計画に基づいた明確な設計意図のもとに、当該都市公園の効用が全うできるよう行うものであることは、都市公園法第5条第2項各号に共通する考え方である。
(以下、省略)

(注4)このことは、第5回委員会において、平成20年9月19日から10月21日の間に行われた「京都水族館(仮称)整備構想」への市民意見募集の結果について、事務局のまとめた資料が委員に配付されたところ、この結果では、大多数の意見が水族館計画に対し懸念を示すものであったにもかかわらず、これに対し意見を述べた委員は誰1人いなかったという事実からも明らかである。
人数制限等の理由により公園利用者等を構成員とすることが困難であったとも考えられるが、「委員会は、必要があると認めるときは、委員以外の者の意見を聞くことができる。」(京都水族館(仮称)整備構想検討委員会設置要綱第4条第4項)のであるから、少なくとも、積極的にオブザーバーとして公園利用者等を「第三者委員会」に参加させて意見聴取を行うことも可能であったところ、現に行われた「第三者委員会」ではそれはなされていない。一方の利害関係者である事業者側が提案者として、第2回及び第4回の第三者委員会に出席し意見を述べる機会を得ているのに対し、他方の利害関係者である公園利用者等の意見聴取の機会は、書面での意見募集しかなされなかったことと比較すると均衡を失するものであったというべきである。

(注5) 審議が不十分な事項の一例
① 本件施設の目玉の一つがイルカショーであることについて
        第2回委員会において、京都水族館の目玉に関する委員の質問に対し、オリックス不動産株式会社側は、「ある種類の生き物を目玉にするのではなく、水族館の体験活動を売りにし、そこに一緒に動物が関わっていくということを考えている」「なぜその生き物を展示するのかということはしっかりと説明できるようにしていきたい」と回答したものの、その後説明がなく、また、第5回委員会において、「水族館の運営について我々が、少なくとも私が見えている部分は多分狭いと思う。市民から寄せていただいた意見の中に、動物虐待という意見もあって、そういうことも可能性としては有り得るのかとショックというか…新たな目が開かれた」との委員発言もあり、イルカショーについて全く審議されていない。
②  交通・アクセス対策について
        第5回委員会において、「交通・アクセス対策については、構想段階のため詳細な計画まで明らかになっていないので、年間200万人の円滑なアクセスの確保及び周辺住民への影響を最小限に抑えることが可能かどうかという判断はできなかった」との委員発言があり、交通・アクセス対策について十分に審議されていない。
③  建物のデザインについて
        第3回委員会において、「現地視察を踏まえて建物のデザインが大事になると現地を見て実感した」「公園の持つ自然、開放感と、水族館の人工的、閉鎖的な空間とがミスマッチのような印象を受けた」「公園と水族館との調和が大事である。壁のようなものにならないようにしてほしい。技術的な問題であり、よく考えてもらいたい」との委員発言があるにもかかわらず、建物のデザインについて十分に審議されていない。
④  経営計画の妥当性について
第5回委員会において、「収支計画、資金計画については、はっきり言って、オリックス不動産の方から精査するレベルの資料は提出されていない」「委員の中でも、あれだけの設備が当初投資額の金額で本当にできるのだろうかという意見を漏らしてくださった方もおられる」との委員発言があり、経営計画の妥当性について十分に審議されていない。
⑤  市民意見について
第5回委員会において、「水族館事業自体が大多数の市民の理解と関心を得ないと成功しないものであるので、市民の意見とか要望を尊重しながら進めていただく」との委員発言があるにもかかわらず、提出された市民意見の大多数が水族館計画に対し懸念を表していることについて十分に審議されていない。

(注6)十分に答えていないことの一例
①  環境問題について
平成21年意見募集においては、水族館の建設・運営によって、大量の二酸化炭素が排出されることにならないか、という懸念が多数含まれていた。
これに対して京都市は、建築主や事業者に対して排出量削減計画書等の提出を求めたり、二酸化炭素排出の抑制に向けた協議を行っていること、及び、今後も事業者に対して地球温暖化対策に対しての積極的な参加を求めていくつもりであると説明している。
しかし、これらは京都市の排出量抑制のための取り組みの「過程」を説明したに過ぎず、事業者との間で排出量抑制に向けた具体的な合意に至ったことなど具体的な「成果」を示したものではない。
また、平成21年意見募集においては、水族館運営によって発生する騒音・臭気等によって周辺の住環境が悪化することについての懸念が多数含まれていた。
これに対しても京都市は、事業者に対して指導していくつもりであると説明するのみで、何ら具体的な対策等を示していない。
②  交通問題について
平成21年意見募集においては、初年度200万人の来客が見込まれる水族館の建設によって、施設周辺の交通状況が混乱することに対する懸念が多数含まれていた。
これに対して京都市は、歩きやすい環境を整備したり、公共交通機関の利用を促進させるなどして自家用車による来園抑制を図っていると説明している。
しかし、どの地点にどのような歩行者ルートを整備するのか、公共交通機関の運行状況をどのように調整するのかという点については具体的な対策等を示していない。
③  梅小路公園の防災機能について
平成21年意見募集においては、水族館が建築されることによって、従来梅小路公園が担ってきた災害時の広域避難場所としての機能が損なわれるのではないかといった懸念が多数含まれていた。
かかる懸念に対して京都市は、水族館建設予定地の大部分は現在広域避難場所に含まれていない場所なので水族館を建設しても広域避難場所の敷地面積はほとんど減少しないと説明している。
しかし、広域避難場所にあっては、避難場所の敷地の確保のみならずその敷地に通じる避難通路の確保も重要である。しかるに、京都市は避難通路の確保について具体的な説明をしていない。したがって、京都市の説明によっては、広域避難場所としての機能が損なわれることに対する住民の懸念が解消されたとはいえない。

(注7)生物多様性条約  第八条  生息域内保全
  締約国は、可能な限り、かつ、適当な場合には、次のことを行う。
(a)  保護地域又は生物の多様性を保全するために特別の措置をとる必要がある地域に関する制度を確立すること。
(b)  必要な場合には、保護地域又は生物の多様性を保全するために特別の措置をとる必要がある地域の選定、設定及び管理のための指針を作成すること。
(c)  生物の多様性の保全のために重要な生物資源の保全及び持続可能な利用を確保するため、保護地域の内外を問わず、当該生物資源について規制を行い又は管理すること。
(d)  生態系及び自然の生息地の保護並びに存続可能な種の個体群の自然の生息環境における維持を促進すること。
(e)  保護地域における保護を補強するため、保護地域に隣接する地域における開発が環境上適正かつ持続可能なものとなることを促進すること。
(f)  特に、計画その他管理のための戦略の作成及び実施を通じ、劣化した生態系を修復し及び復元し並びに脅威にさらされている種の回復を促進すること。
(g)  バイオテクノロジーにより改変された生物であって環境上の悪影響(生物の多様性の保全及び持続可能な利用に対して及び得るもの)を与えるおそれのあるものの利用及び放出に係る危険について、人の健康に対する危険も考慮して、これを規制し、管理し又は制御するための手段を設定し又は維持すること。
(h)  生態系、生息地若しくは種を脅かす外来種の導入を防止し又はそのような外来種を制御し若しくは撲滅すること。
(i)  現在の利用が生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用と両立するために必要な条件を整えるよう努力すること。
(j)  自国の国内法令に従い、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関連する伝統的な生活様式を有する原住民の社会及び地域社会の知識、工夫及び慣行を尊重し、保存し及び維持すること、そのような知識、工夫及び慣行を有する者の承認及び参加を得てそれらの一層広い適用を促進すること並びにそれらの利用がもたらす利益の衡平な配分を奨励すること。
(k)  脅威にさらされている種及び個体群を保護するために必要な法令その他の規制措置を定め又は維持すること。
(l)  前条の規定により生物の多様性に対し著しい悪影響があると認められる場合には、関係する作用及び活動の種類を規制し又は管理すること。
(m)  (a)から(l)までに規定する生息域内保全のための財政的な支援その他の支援(特に開発途上国に対するもの)を行うことについて協力すること。

第九条  生息域外保全
  締約国は、可能な限り、かつ、適当な場合には、主として生息域内における措置を補完するため、次のことを行う。
  (a)  生物の多様性の構成要素の生息域外保全のための措置をとること。この措置は、生物の多様性の構成要素の原産国においてとることが望ましい。
  (b)  植物、動物及び微生物の生息域外保全及び研究のための施設を設置し及び維持すること。その設置及び維持は、遺伝資源の原産国において行うことが望ましい。
  (c)  脅威にさらされている種を回復し及びその機能を修復するため並びに当該種を適当な条件の下で自然の生息地に再導入するための措置をとること。
  (d)  (c)の規定により生息域外における特別な暫定的措置が必要とされる場合を除くほか、生態系及び生息域内における種の個体群を脅かさないようにするため、生息域外保全を目的とする自然の生息地からの生物資源の採取を規制し及び管理すること。
  (e)  (a)から(d)までに規定する生息域外保全のための財政的な支援その他の支援を行うことについて並びに開発途上国における生息域外保全のための施設の設置及び維持について協力すること。

(注8)  動物の権利世界宣言
第4条  野生種に属するすべての動物は、その固有の自然環境、地上、空中、水中の環境のなかで生きる権利をもつ。
A  たとえ教育目的であっても、あらゆる自由の剥奪はこの権利に反する。



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