周辺事態措置法等に関する決議(1999年6月8日)


  「周辺事態に際してわが国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」「自衛隊法の一部を改正する法律」が今国会において成立し、「日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定」が承認された。国会の審議を通して一部修正が加えられたとはいえ、国民の疑念に応えて慎重な論議を尽くして成立をしたものとは言いがたく、未だ多くの問題点を残していることを指摘せざるを得ない。
  とりわけ、「周辺事態」という概念は曖昧なままにされ、際限なく広げられる危険性を持っているとの危惧は払拭されていないし、何よりも、そうした「周辺事態」で展開される米軍の戦闘行為に対し後方地域支援等の形でわが国の自衛隊が武器をも携えて関与することが、憲法が放棄した国際紛争に対する武力の行使または武力による威嚇に該当するおそれのあることや、他国の紛争に巻き込まれていく危険性のあることについても、問題点が解消されたとは言いがたい。
  また、一部修正され自衛隊等が実施する後方地域支援等については、原則国会の事前承認が必要とされたが、例外規定をおいた上、基本計画の策定やその実施については閣議の決定で足りるものとしており、国権の最高機関たる国会のコントロールが十分およぶのかどうかについて疑念を残している。
  地方自治体や民間企業に要請される協力についても、地方自治の本旨や基本的人権が侵害されるおそれについて、それを防止する手だてが十分とは思われない。
  日本国憲法は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、地方自治の本旨等の諸原則を定め、とりわけ「全世界の国民が」「平和のうちに生存する権利を有すること」を宣言した上で、「日本国民は」「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」た。
  当会は、今回の法律等が上記のような問題点を有していることから、この憲法の諸原則・諸規定に抵触する事態を招かないかについて率直な懸念を表明せざるを得ない。当会は、何よりも日本国憲法が定めるこれらの諸原則・諸規定が、いささかもないがしろにされることがないよう、平和外交に徹するのはもとよりのこと、本法律等の厳格な解釈と慎重な対処を強く求めるものである。
  当会は、先の憲法施行50周年にあたり「平和のうちに安全に生きる権利」の重要性に強い関心を寄せてきた。当会は、今回の法律等の様々な問題点について、さらなる検討を重ね、憲法に抵触するような事態を招かないための具体的手だてを明らかにする等して、基本的人権の擁護と社会正義の実現という使命の実現をはかる決意である。

以上のとおり、決議する。


1999年(平成11年)6月8日

京  都  弁  護  士  会


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