司法修習生の給費制を1年延長する『裁判所法の一部を改正する法律』成立にあたっての会長声明(2010年12月15日)


  本年11月26日、司法修習生に対する貸与制の施行を延期する「裁判所法の一部を改正する法律」が国会で可決され、新64期司法修習生に対しては、従来通りの司法修習費用の給費(給費制)が復活することとなった。
  法曹の養成は、「単なる個人的資格の取得」の問題ではなく、競争原理の歪みに対して法の光を当て、人権を擁護する人材を養成し、三権分立の一翼を担う司法権の基盤を確立できるか否かの問題であり、司法修習生の給費制は、司法制度を支える人的基盤である法曹を養成する制度において、必要欠くべからざるものである。
  このような認識のもと、当会は、給費制維持緊急対策本部を本年5月に立ち上げ、8月28日に240名の市民が参加したシンポジウムを開催した他、度重なる街頭宣伝、2万5000筆を超える個人署名と56の団体署名を集めるなどの活動をしてきたが、半年という短期間になされたこの法改正は、当会を含む各単位弁護士会及び日本弁護士連合会、市民連絡会、並びに、若手弁護士や法科大学院生等により結成されたビギナーズネット等の粉骨砕身の活動の結果、多くの市民や団体等が給費制の重要性を理解され、また、多くの国会議員や報道機関・報道関係者等が給費制の維持にご賛同されたことにより、得られた結果である。
  当会は、ご理解・ご支持を頂いた市民や団体の方々、ご賛同戴いた国会議員、報道機関・報道関係者各位に対して心より感謝し、また、この法改正を歓迎することをここに表明する。
  しかしながら、この法改正は、1年という短期間のみ給費制を延期するものに過ぎず、65期以降の司法修習生に対しては依然として貸与制への移行が維持されたままである。
  同法の附帯決議は、「一  改正後の裁判所法附則第四項に規定する日までに、個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること」「二  法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること」としているが、附則第四項が規定する平成23年10月31日までに、これらの検討を経た上で、給費制を維持する改正裁判所法を成立させるためには、国会の日程を勘案すると、残された時間は僅かしかない。
  当会は、政府及び最高裁判所に対して、上記附帯決議に示された項目の検討を早急に開始するよう求めると共に、司法修習生の給費制を完全に維持する改正裁判所法が成立されるよう全力を尽くすことをここに表明する。

2010年(平成22年)12月15日

京  都  弁  護  士  会

会長  安  保  嘉  博

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