決議

「国際人権(自由権)規約等に基づく個人通報制度の早期導入及びパリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の早期設置を求める決議」(2011年3月10日)


  当会は、日本における人権保障を推進し、国際人権基準の実施を確保するため、次のことを政府及び国会に対して強く求める。
1  国際人権(自由権)規約、女性差別撤廃条約、拷問等禁止条約、人種差別撤廃条約等に定める個人通報制度を導入すること
2  国連の「国内人権機関の地位に関する原則」に合致した真に政府から独立した国内人権機関を設置すること

以上のとおり決議する。

提  案  理  由

1  個人通報制度について
    国際人権(自由権)規約、女性差別撤廃条約、拷問等禁止条約、人種差別撤廃条約等の人権条約には、様々な人権保障条項が規定されている。それらの人権を国際的な基準で確保していくための制度の一つとして、個人通報制度がある。
    個人通報制度とは、人権条約の人権保障条項に規定された人権が侵害されているにも拘わらず、国内での法的手続を尽くしてもなお人権救済が実現しない場合、被害者である個人等が各人権条約の定める国際機関に通報し、救済を求める制度である。この個人通報制度を実現するためには、各条約の人権保障条項について個人通報制度を定めている選択議定書等を批准するなどの手続が必要である。
    しかしながら、日本は、国際人権(自由権)規約、女性差別撤廃条約、拷問等禁止条約、人種差別撤廃条約等の人権条約を批准しているものの、これらが有する個人通報制度をこれまで導入してこなかった。残念ながら、日本の裁判所は、国際人権保障条項の適用について積極的とは言えず、国際人権基準の国内実施が極めて不十分となっている。
各人権条約における個人通報制度が日本で実現すれば、被害者である個人等が各人権条約上の委員会に見解・勧告等を直接求めることが可能となり、日本の裁判所も国際的な条約解釈に目を向けることとなる。その結果として、日本における人権保障水準が国際基準にまで前進し、また憲法の人権条項の解釈が前進するなどの著しい向上が期待される。
    日本は、すでに国際人権(自由権)規約委員会から1993年、1998年、2008年と3度にわたり第1選択議定書の批准を勧告され、女性差別撤廃委員会、人権理事会等からも個人通報制度の導入を繰り返し勧告されている。2009年に政権与党となった民主党は、個人通報制度の実現を政権公約として掲げ、外務省内には人権条約履行室も設置された。しかしながら、残念なことに未だ個人通報制度の実現は果たせていない。

2  国内人権機関の設置について
    国連決議及び人権諸条約機関は、国際人権条約及び憲法などで保障される人権が侵害され、その回復が求められる場合には、司法手続よりも簡便で迅速な救済を図ることができる国内人権機関を設置するよう求めており、多数の国が既にこれを設けている。
    国内人権機関を設置する場合、1993年12月の国連総会決議「国内人権機関の地位に関する原則」(以下「パリ原則」という。)に沿ったものである必要がある。具体的には、法律に基づいて設置されること、権限行使の独立性が保障されていること、委員及び職員の人事並びに財政等においても独立性が保障されていること、調査権限及び政策提言機能を持つことが必要とされている。
    日本に対しては、国連人権理事会、人権高等弁務官等の国連人権諸機関や人権諸条約機関の各政府報告書審査の際に、早期にパリ原則に合致した国内人権機関を設置すべきとの勧告がなされており、また、国内の人権NGOからも国内人権機関設置の要望が高まっている。
    現在、日本には法務省人権擁護局の人権擁護委員制度があるが、独立性等の点からも極めて不十分な制度である。
    このような状況の中、昨年6月22日には、法務省政務三役が「新たな人権救済機関の設置に関する中間報告」において、パリ原則に則った国内人権機関の設置に向けた検討を発表するなど、国内人権機関設置に向けた機運は高まっている。

3  近畿弁護士会連合会は、昨年11月19日、同連合会人権擁護大会において、「国際人権(自由権)規約、女性差別撤廃条約、拷問等禁止条約、人種差別撤廃条約などに附帯する個人通報制度実現を求める決議」を採択し、日本弁護士連合会は、2008年11月18日、パリ原則を基準とした「日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱」を発表した。
    当会は、日本における人権保障を推進し、また国際人権基準を日本において完全実施するための人権保障システムを確立するため、国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度を一日も早く導入し、パリ原則に合致した真に政府から独立した国内人権機関を速やかに設置することを政府及び国会に対して強く求めるものである。

2011年(平成23年)3月10日

京  都  弁  護  士  会


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