意見書

「一般廃棄物の不法投棄の防止に関する提言」(2011年7月28日)



2011年(平成23年)7月28日


京  都  弁  護  士  会

会長  小  川  達  雄


第1  提言の趣旨

当会は、一般廃棄物の不法投棄問題に関し、以下のとおり提言する。
1  国に対して
(1) 製品廃棄物について製造者に引き取る義務を課すことを原則とし、そのための回収、再利用及びリサイクルのシステムの構築とあわせ、早急に当初の対象製品の選定、実施主体、今後の拡大の方向性及び導入時期等に関する検討を開始すること
(2) 家電リサイクル法の対象品目をさらに拡大するとともに、対象品目の回収について自治体の「大型ごみ」の収集運搬ルートをも用いること
(3) 廃棄物処理法を改正し、即時強制の範囲を拡大するとともに廃棄物除去権限を民間委託することができるようにすること
2  地方自治体に対して
(1) 家電リサイクル法の対象品目についても、それ以外の「大型ごみ」と同様に、収集運搬を行うこと。
(2) 以下の事項を含む条例を制定すること。
①  一般廃棄物(一般廃棄物の疑いのある物も含む。)が保管又は埋め立てされており(保管または埋め立ての疑いがある場合も含む。)、地域の環境を保全するために必要があると認められる場合は、地方自治体の長は、当該保管等を行う者の事務所、事業所、住居その他の場所又は当該保管等の行われている場所に立ち入り、必要な検査を行うことができること
②  何人も地域の環境を保全するために必要があると思料するときは、地方自治体の長に対し上記立入検査を行うよう申し立てることができること
③  当該地方自治体の長の認定する団体は、当該立入検査への同行を求めることができること
④  廃棄物の不法投棄に対して過料を科すこととして、上記認定団体に過料の徴収権限を委託すること
3  製品製造者に対して
国による製品廃棄物に関する製造者引取義務化の有無ないし対象範囲にかかわらず、製品の設計、生産から使用中、使用後までの過程で廃棄物の発生を極力抑制するため、製品及び部品については一般的に、再使用及びリサイクルに適したものとすること
4  消費者に対して
大量生産された商品を次々に購入・消費する習慣を改め、できるだけ長持ちする商品、再利用可能な商品を選び、購入せずにレンタルで済ませることも選択肢に入れるなどの生活様式に移行すること

第2  提言の理由

1  はじめに(不法投棄の現状と本提言の必要性)
(1) 近年、家電品や引越ゴミのような一般廃棄物が道ばたなどに大量に不法投棄されている例が目に付くようになっている。
場所としては人目につきにくく、かつ車で乗り入れやすい都市周辺部の山道、道路高架下、田畑等に、廃家電や、家庭から出たと思われる家財道具、新聞雑誌類等の引越ゴミ、解体ゴミ、自転車、バイク等の様々な雑多なゴミが、何者かによって大量に捨てられている。
環境省の調査によれば、家電リサイクル法の対象となる家電製品に限ってのものであるが、平成15年度をピークに全国で17万5000台(エアコン約1万8000台、テレビ約8万8000台、冷蔵庫約3万8000台、洗濯機約3万1000台)が不法投棄され、その後やや減少傾向にあるものの、平成19年度でも11万5815台(エアコン3821台、テレビ6万7838台、冷蔵庫・冷凍庫2万6677台、洗濯機約1万7479台)がなお不法投棄されている。
産業廃棄物の不法投棄は久しく言われてきた深刻な問題であるが、こうした一般廃棄物の不法投棄についても、地域の景観や美観の悪化、通行の妨害、新たな不法投棄の誘発、悪臭、土壌汚染、水質汚染の原因となるなど、生活環境、自然環境、健康被害の懸念の観点からも、決して捨て置けない問題となっている。
(2) この問題は国内に留まらず、廃家電が日本から不適正に中国等に輸出され、中国国内の農村部で基板やICチップなど有用部品や貴金属が不適切な処理方法で回収される過程で、有用部分以外の野焼き、有害物質を含む廃薬液の垂れ流しなど、深刻な環境汚染を引き起こしているとも言われている。
(3) 2011年7月24日に迫ったテレビ放送(地上波)の完全デジタル化に伴い、テレビ関連家電に関する不法投棄の増加が強く懸念されることからも、一般廃棄物の不法投棄対策は今まさに喫緊の課題といえる。
(4) こうした現状を踏まえ、当会は、一般廃棄物の不法投棄を防止するための提言をするものである。
2  不法投棄の原因
(1) 当会が京都府警本部に聞き取り調査した検挙例によれば、不法投棄の行為者については、出たゴミを自ら捨てに行っている個人が相当割合にのぼると思われる。
この他にもたとえば、引越業者や解体業者がサービスで事実上処理を請け負ったり、街中を無償で廃品を回収している業者から流出しているのではないかとの疑念も耳にする。ただし、当会が調査した限りでは、そのような確たる資料は得られなかった。
(2) 行為者がいずれであれ、不法投棄をする動機は、法によるリサイクル費用や大型粗大ゴミの処理費用がもったいない、既にゴミが捨てられている場所であれば捨てやすい、紛れて分からないだろう、見つかって処罰されることはないであろう、処罰されても大きな刑罰ではないであろう、といったことであろうと推察される。
産業廃棄物の不法投棄の場合のように、大きなリスクを冒しながらもそれを超える巨額の利益を見込めるために行う、といった根深い構造は一般廃棄物の場合には当てはまらない。すなわち、一般廃棄物の不法投棄の直接の原因は、捨てる個人のモラルの低さに起因すると一応言うことができる。
ただし、本質的には、廃棄の段階を十分に考えていない大量生産、大量消費の社会・産業構造自体に根本的な原因があり、廃棄コストを製造者ではなく消費者に転嫁している点こそが強い誘因となっていることを認識しなければならない。私たち一人一人が、こうした複層の原因を理解しつつ、それぞれが出来ることから改善を図ることが必要である。
3  不法投棄防止のための法制度
(1) 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)について
①  現行法の概要
その名のとおり、現行法が対象とする家庭用機器は限定されており、当初は、エアコン・ブラウン管式テレビ・電気冷蔵庫・電気洗濯機の四品目のみが政令により指定されていた(後記のとおり拡大されている)。なお、パソコンについては法の対象からは外れているが、メーカーが、自主的に回収及び再商品化に取り組んでいる。
消費者等は、同法が対象とする家庭用機器を廃棄等する際、一定のリサイクル費用を支払い、小売業者に引き渡すかメーカーの設置する指定引取場所に持参する。消費者等から対象機器を引き取った小売業者は、中古家電として再利用するケースを除き、これをメーカー(不分明な場合には指定法人)に引き渡し、消費者等から受領した上記リサイクル費用を支払う。そしてメーカーあるいは指定法人が、対象機器を再商品化する義務を負う。
なお、対象機器がメーカーあるいは指定法人に確実に引き渡される担保のため、管理票(マニフェスト)制度が導入されている。
②  現行法の問題点等
ア  対象機器の限定
2009年4月1日、家電リサイクル法施行令の一部改正により、①指定商品の追加(液晶式・プラズマ式テレビや衣類乾燥機)、②電気洗濯機からのフロン類等回収破壊義務の追加、③指定商品に関する再商品化等基準の見直しを行った。
これは、再商品化の対象拡大による資源の有効利用という同法の趣旨に沿ったものではある。しかしながら、再商品化の自主的取組がある程度進んでいるパソコンを含めても、再商品化の対象品目は極めて限定されており、はなはだ不十分いるといわざるを得ない。一般家庭に普及している家電製品は、電子レンジ・オーディオ機器をはじめとして多品目に上り、これらは、一部を除き、粗大ごみ等として埋立てにまわされているのが実情である。
イ  リサイクル費用の負担と管理の在りかた
同法の対象機器が、再商品化の流れに乗せられずに処理されているケースがままみられるのは、下に述べるとおりである。
まず、消費者が、廃棄時のリサイクル費用負担を嫌い、小売業者に引き渡すことなく不法投棄し、あるいは「無償引取り」を宣伝する回収業者に引き渡すことがある。前者が環境汚染を引き起こすものであって問題であることはいうまでもない。また、後者についても、引き取られた対象機器が国内外における中古品として使用に供されているのであれば格別、適正処理がなされないまま廃棄に至っているケースがあるとの報道もあり、そうであれば前者同様の問題点を指摘することができる。
また、消費者から対象機器を引き取った小売業者が、メーカー等に引き渡すことなく、不法に処分を行うケースも散見される。管理票制度の機能不全ゆえにかかるケースが発生するものであり、制度の改善強化がなされるべきである。
ウ  小売業者の負担の大きさ
現在、消費者は、対象機器を排出する際に、一定すなわち横並びのリサイクル料金と、別途運搬料を支払っている。そして対象機器の引渡しを受けた小売業者等は、多くの場合、これを指定引取場所へと運搬している。
しかし、個々の対象機器を引き受けるごとに指定引取場所に運搬することは不経済であり現実味に乏しく、保管コストが一定かかることとなる。また、消費者からの引取あるいは指定引取場所への運搬について、支払を受けた運搬料以上のコストがかかることも多い。
引取義務を課せられた小売業者が、大きな負担感を感じていることは、当会の行った業者からのヒアリング結果においても明白である。
エ  まとめ
同法は、リサイクル費用を、消費者が排出時に支払うものとしており、しかも、リサイクル費用は「一定」すなわち横並びとされている。したがって、メーカーには、後述の「価格の内在化」の場合と異なり、同法の本来の理念である「リサイクルしやすい商品」の開発製造の動機付けが働かない。
すなわち、リサイクル費用の内在化が図られている場合、各メーカーには、商品の価格競争に耐えるべく、リサイクルしやすい商品を開発してリサイクル費用を抑制しようとする動機付けが働くところ、現行制度においては、かかる動機付けが働かないのである。
また、現行法の構造は、包括法である資源有効利用促進法第4条において事業者等に対する原材料等使用の合理化や再生資源・再生部品利用の努力義務が一般に定められているほか、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、建設リサイクル法、食品リサイクル法、自動車リサイクル法といった個別品目を対象としたリサイクル法によってリサイクルシステムが構築されているものであるが、こうした個別品目の規制だけでは不十分である。
なお、2011年2月10日付毎日新聞によれば、環境相が携帯電話やゲーム機などの小型家電についてもリサイクル制度の創設を諮問した旨報道されているが、あくまでレアメタル(希少金属)回収を主たる目的としているものであって、不法投棄防止のための方策ではない。
したがって、狭きに過ぎる家電リサイクル法の対象機器を拡大すること自体は重要ではあるものの、それだけでは不法投棄対策としては不十分である。
進むべき方向性としては、製品廃棄物一般について製造者に引き取る義務を課すことを原則とし、回収、再利用及びリサイクルのしくみを作るべきであって、即座の実現は難しいとしても、そのための検討を開始すべきである。
(2) 廃棄物処理法について
①  刑事責任
廃棄物処理法は、不法投棄をした者に対して原状回復命令を課す方式ではなく、直罰主義を採用している。
すなわち、同法では不法投棄罪(16条)、不法焼却罪(16条の2)を設け、違反者には刑事罰を科している。そして、2000年改正では罰則の強化、2003年改正では不法投棄の未遂処罰規定の新設等がなされた。
しかし、同法の「廃棄物」(2条1項)の概念は曖昧であり、また不法投棄罪の構成要件の「みだりに捨てる」という概念も明確とは言い難い。このためしばしば「廃棄物ではない」とか「保管しているだけだ」等といった抗弁がまかり通ってしまう現実がある。
罪刑法定主義の下で刑事責任を課すためには、これら要件をさらに緩和することは困難であるうえ、以下に述べるとおり行政罰の機能不全の状況と相まって、刑事罰によって不法投棄を規制することには限界があると言わざるを得ない。
②  原状回復命令
同法の予定する原状回復等の措置命令は、「生活環境上の保全上支障が生じ又は生ずるおそれが認められるとき」に限られている(19条の4以下)。このため、たとえば大岩街道を挟む南北の道路(農道や、ゴルフ場・神社に至る簡易舗装された私道)の脇、人目につかないところに多くのゴミが不法投棄されていたケースのように、不法投棄場所が集落から離れている場合には措置命令は発令されない。上記生活環境の保全要件が課せられていること自体は、廃棄物処理法が「生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」を目的とすること(1条)や行政命令の性質に照らしやむを得ないところではあるが、やはり限界があると言わざるを得ない。
③  即時強制
不法投棄された廃棄物を除去するために最も直接的な方法は、現に存在する廃棄物を市町村が直接に撤去することである(即時強制すなわち、急迫の障害を除去するため義務を命ずる余裕がない場合に、直接に人の身体または財産に実力を加えて行政上必要な状態を実現すること)。
しかし同法は、即時強制による生活環境の保全上の支障の除去措置を、行政命令が奏功しなかったときの補充措置として位置づけており(19条の7以下)、現行制度では積極的な実施は予定されていない。不法投棄対策としては心許ないというほかない。
(3) 海外(EU)の法制度について
EUでは、製品の製造段階において、化学物質について既存物質と新規物質に分類したうえでリスク管理をはかる「REACH規則(2007年6月施行)」や、電気・電子機器について特定有害化学物質の使用を制限する「RoHS指令」(2003年2月発効)等によって、廃棄物自体の危険性をコントロールしているが、そのうえで、自動車(ELV指令)や電気・電子機器等(WEEE指令)について、以下のとおり廃棄物の排出抑制及びリサイクル推進のためのしくみを設けている。
すなわち、ELV指令やWEEE指令では、製造者に廃製品等を最終所有者から無償で回収するシステムを構築する義務が課されているだけでなく、リサイクル材料の使用や回収物の再生をも含めたシステムを整えなければならないとされている。
このように製造者に対し製品廃棄物引取義務を課すだけでなく製品自体についても回収、再利用及びリサイクルに適したものとすることを義務付け、消費者には別段の負担を課さないことにより、廃棄物の回収、再利用及びリサイクルに要する費用が製品に「内在化」される。製品価格は多少上昇することにはなるが、費用負担を免れるための不法投棄は著しく減少することになるに違いない。新製品を次々発売し購入意欲を刺激するといった「大量生産・大量消費」社会から脱却し、資源循環型社会に踏み出すためには、極めて有用な制度である。
4  提言
(1) 家電リサイクル法の改正を含む、回収・再利用及びリサイクルのためのシステムの再構築について
①  リサイクル費用の負担のあり方について
ア  価格の内在化
前記問題点の項で述べたとおり、現行の家電リサイクル法等の各リサイクル法は対象機器等が狭きに過ぎ、さらなる拡大が必要ではあるものの、それだけでは不法投棄対策として十分とは言えない。
消費者等は、排出時の費用負担を避けようとして、対象機器を不法に投棄し、あるいは違法行為を行う業者に引き渡し、いわゆる「見えないフロー」として、その一部が不法投棄されていると思われる。
かかる問題は、リサイクル費用を当初の製品価格に含める制度とすることによって、コストの点がクリアされることから、かなりの程度解決するはずである。すなわち、前記EUの法制度のように製造者に対し製品廃棄物引取義務を広く課すことによって、廃棄物の回収、再利用及びリサイクルに要する費用を製品に「内在化」するように誘導していくのである。そして製品価格にリサイクル費用を含ませることは、メーカーに対し、売価を抑制するために、リサイクルしやすい商品を開発製造する強力な動機付けとなる。
既に、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律等では、リサイクル費用の製品価格への転嫁が一部実現しており、同じリサイクル法として制度を同じくすることは合理的でもあり適切でもある。
ただし、あらゆる製品について廃棄物引取義務を課すことは現実には困難である。現にEUといえども、あらゆる製品を対象とする制度を導入しているわけでもない。
以上をふまえ、また、前記のとおり一般廃棄物に関する不法投棄の最大の動機はリサイクル費用や大型ゴミ処理費用を惜しむ点にあると思われることからすれば、製造者に製品廃棄物の引取義務を課すことを原則としつつ、具体的品目については再製品化が容易なものから始め徐々に拡大していくこととし、そのための回収・再利用及びリサイクルのためのシステムを構築していくべきであって、具体的品目の選択等を含めた検討が、国によって早急に開始されるべきである。これにより、回収、再利用及びリサイクルに要する費用の製品販売価格への「内在化」が促進され、不法投棄の減少がはかられる。
イ  収集運搬の問題
次に、収集運搬が小売業者にとって多大な負担となっている現状からしてみれば、小売業者等の負担を軽減し円滑な収集運搬を実現するために、自治体を責任主体として実施されている「大型ごみ」の収集運搬ルートをも用いて、対象機器の回収を行うべきである。
現状は、たとえば京都市大型ゴミ受付センターのホームページでも「※原則として,家電リサイクル法対象品目(エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機)は受付できません。」と表記されているとおり、自治体は同法対象品目について収集運搬を行うことについては消極的姿勢をとっている。しかし、家電リサイクル法はあくまで小売業者に対し「特定家庭用機器廃棄物の引取りを求められたとき」の引取義務を課しているに過ぎず、決して一般廃棄物に関する自治体の収集運搬責任(廃棄物処理法6条の2)を免責するものではないことからすれば、このような運用は必ずしも合理的とはいえない。前記のとおり小売店による収集運搬はとりわけ零細小売店にとって大きな負担になっていることにも鑑みれば、地方自治体は家電リサイクル法の対象品目についても、それ以外の大型ゴミと同様に、収集運搬を行うべきである。
なお、収集運搬に係る費用については、従前通り、しかるべき手数料を徴収することとなる。
上記手法はリサイクル費用の負担者を変更するものではないし、現行の家電リサイクルによる収集運搬システムと併存させた上、既に確立されている大型ごみの収集運搬ルートを利用するものであって現行制度の全体像を大きく変動させる必要性もないことから、比較的スムーズに実施できるし、自治体が収集運搬に積極的に関与することにより、管理票(マニフェスト)による再商品化の管理もより精度が上がることが期待できる。
②  指定商品の拡大
指定商品の範囲が拡大されたとはいえ、現行法の対象機器が未だ狭きに失することは既に述べたとおりであり、外国法制等を参考にしながら、指定品目を増やすべきである。
(2) 廃棄物処理法の改正について
上記のとおり不法投棄者に刑事責任を問うためには罪刑法定主義の限界があるうえ、原状回復等の措置命令についても、廃棄物処理法の目的等に照らし、一定の限界がある。
そもそも地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担わされているうえ(地方自治法1条の2第1項)、廃棄物処理法上も市町村の責務として、一般廃棄物の適正な処理のための必要な措置、職員の資質の向上、施設の整備及び作業方法の改善等の努力義務が課せられている(4条)。
とすれば、一般廃棄物の不法投棄対策として、以下のように即時強制制度を拡大すること等もまた、市町村に期待された使命であるといわなければならない。
①  即時強制制度の拡大
上記のとおり、現行法における即時強制制度は行政命令が奏功しなかった場合に限っての補充措置としての位置づけにとどまっているが、これを改め、たとえば、生活環境の保全及び又は公衆衛生の向上を図るために必要があると認めるときには直ちに行うことができるようにすることが考えられる。
このように、不法投棄された廃棄物について、生活環境の保全及び又は公衆衛生の向上という要件のもと、行政命令を経ずとも行政の積極関与によって除去を可能とすることによって、迅速な対応が可能になる。
ただし、除去に要する行政リソース(とりわけ人員)の確保をどう図るか、除去費用についての予算措置の確保、さらには数多い不法投棄案件の中で除去する基準をどのように策定するのかという問題は残り、運用次第では現行法と変わらない可能性もありうる。
なお、即時強制制度については事実上、民有地においては地権者の承諾がない限り行われないのが通例であるが、制度上は公有地、民有地を問わず実施可能なのであるから、民有地であることのみをもって即時強制制度の運用が消極に解されてはならないのは当然である。
②  民間委託
また、上記に関連し、不法投棄対策のため、廃棄物除去権限を民間委託するという方法も考えられる(屋外広告物法7条4項参照)。
この場合、トラブル防止のためには、ごみであることを事前に市町村長が認定する制度を設けたり、当該事務に従事している民間人についてはみなし公務員とする等の規定を置くことが考えられる。
(3) 条例の制定について
上述のとおり、一般廃棄物の不法投棄件数が近年増加している要因として、家電リサイクル法の対象となる家電商品の廃棄にかかる消費者の金銭的・心理的負担によるところが極めて大きいと考えられ、また、採算性のない収集運搬作業を行わざるを得ない家電小売店の負担も無視できないものとなっている。
このように、不法投棄の大きな要因ないし背景事情として費用の問題がある以上、取り締まりや啓発活動ももちろん重要ではあるが、それだけでは限界がある。
そもそも不法投棄に最も利害関係をもつのは当該各地域であることからすれば、不法投棄対策のさらなる充実化のためには、各地方自治体の責任が強化されることが必要である。
具体的には、不要になった家電リサイクル法対象家電製品についても各地方自治体において回収する責任があることを再確認(地方自治体は家電リサイクル法により家電リサイクル法の対象家電製品の収集責任が免除されるものではないこと)すべきである。収集運搬費用については、前述したとおり、しかるべき手数料を徴収することとなる。
また、前記廃棄物処理法の項目で述べた内容について、条例を制定することによって自治体自ら積極的に不法投棄対策に乗り出すことも必要である。具体的には、以下の4点を盛り込んだ条例を制定することが考えられる。
ⅰ  地方自治体の長による立入検査権
ⅱ  立入検査の申立権の住民への付与
ⅲ  地方自治体の長の認定団体に対する立入検査への同行権付与
ⅳ  廃棄物の不法投棄に対して過料を科し、上記認定団体に過料の徴収権限を委託すること
地方自治体は、自主的なパトロール、市民からの通報等によって相当数の不法投棄を把握しているにもかかわらず、法的根拠を欠く現状では地方自治体による行為者に対する直接の指導等は困難である。
このため、上記ⅰないしⅳを盛り込んだ条例を制定し、自治体の権限を強化するとともに地域住民の活動を積極的に法制度の中に取り込み、地域住民に不法投棄対策のためのインセンティブを与えることは、廃棄物の不法投棄対策という法政策に照らして十分に合理的な方策である。
なお、過料の徴収について、違反事実を現認した場所で即時的に行うことが可能で、かつ効果的なことは、たとえば東京都千代田区の「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」における路上喫煙及びポイ捨てに対する例などで実証済みである。
そして、行政処分である過料を科す権限の民間委託の例としては道路交通法における放置車両の確認等があり、現に一定の成功を収めている。
なお、京都市でもたとえば「京都市路上喫煙等の禁止等に関する条例」において路上喫煙等監視指導員による過料徴収等を行っているが、徴収初年度(平成20年度)は478件、同21年度は391件にとどまったものの、禁止区域を拡大し徴収を本格化させた同22年度には、平成23年1月末時点で2200件と、飛躍的に件数を伸ばしている。
上記のような条例の制定によって地方自治体による不法投棄の監視や地域住民等の積極的参加が可能となれば、廃棄物処理法によるものに加えて更なる抑止効果も期待できるところである。
(4) 製造者がなすべきこと
国において製品廃棄物一般について製造者が引取ることを原則とすべきこと、そのための検討を開始すべきことについては前に述べたが、これを製造者の側から見るに、国による同義務の設定の有無や範囲如何にかかわらず、製造するすべての製品、すべての部品について一般に、再使用及びリサイクルに適したものとすべきである。
というのも、前記資源有効活用促進法は第1条(目的)で、「使用済物品等及び副産物が大量に発生し、その相当部分が廃棄されており、かつ、再生資源及び再生部品の相当部分が利用されずに廃棄されている状況」を指摘した上で、資源の有効利用の確保とともに「廃棄物の発生の抑制」等のため、「使用済物品等及び副産物の発生の抑制並びに再生資源及び再生部品の利用の促進に関する所要の措置」を講ずるとされているものの、前記努力義務(4条)の内容としては、原材料等の使用の合理化及び再生資源・再生部品の利用(1項)、製品の長寿命化促進、製品の全部若しくは一部の再生資源・再生部品化促進及び副産物の全部若しくは一部の再生資源化促進(2項)に留まっている(しかも法的義務ですらない)。
国による規制を待つばかりでは法の目的を達することは覚束ないのであって、製品の設計、生産から使用中、使用後までのあらゆる過程において廃棄物の発生を極力抑制するためには、すべての製品・部品について再使用及びリサイクルに適するものを生産することが、製造者に求められているのである。
(5) 消費者のライフスタイルの転換
戦後、コマーシャリズムにより消費者が受動的に大量消費を煽られる時代が長く続いてきたが、近年は、消費者の側が主体的に自らのニーズを示し、企業側がそれに応えた商品を作るという機運が生まれている。すなわち、習慣にさせられてしまった大量消費、大量廃棄のライフスタイルを消費者が自ら改めて、すぐにゴミになるような商品は買わず、できるだけ長持ちする商品を選んで購入するという消費行動をとることで、企業側が再使用・再生利用ができる商品、ゴミにならず長持ちする商品を生産するインセンティブとなる。実際にも、乾電池や電球などの分野で長寿命製品が消費者のニーズに応える形で普及してきている。
また、物を「所有」したときには、いずれ「捨てる」という行動に至りやすいが、これを「借りる」だけにすれば、不要になればそれを「返す」という行動になるはずであり、物を廃棄しない循環型の社会に近づいていく。実際にも近時、カーシェアリング、一定期間居住用の家具・家電のレンタルなどが普及してきているところである。
消費者側のこのようなライフスタイルの転換こそが、それに見合ったサービスを生み出し、長期的にみて、不法投棄防止に地道な効果をあげるはずである。
(6) まとめ
家電リサイクル法の施行によって一般廃棄物の不法投棄が激減することが期待されたが、実際には不法投棄の量は横ばいで、件数については激増している。その要因として、リサイクル費用が消費者負担であること、回収等に要する費用について小売店の負担が大きいことに加え、ライフスタイルの変化(単身世帯の増加)により、引っ越し等の際に不要となる家電類や生活用品が多く発生すること等、複合的要素が存在する。また、不法投棄対策には行政機関の積極的な関わりが不可欠ではあるが、これまでは必ずしも積極的とはいえなかった面もある。具体的な対策手法としても、事後的な現状回復の実効化とともに「捨てさせない」ための取り組みも不可欠である。さらにそもそも、大量生産・大量消費社会のあり方についても見直すべき時期に来ている。

以上の次第であるので、国、地方自治体、製品製造業者並びに消費者に対して、頭書のとおり提言する。


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