意見書

破産法等の見直しに関する中間試案に関する意見書(2002年11月21日)



                 2002年(平成14年)11月21日
法務省民事局参事官室       御 中
日本弁護士連合会
    会 長  本  林      徹  殿

                                                                       京都弁護士会
               会 長  田  畑  佑  晃


意    見    書


  破産法等の見直しに関する中間試案中の「第2部  個人の破産手続きの特則及び免責手続等」に関して次の
通り意見を述べる。なお、下記部分以外の第2部についての改正内容については、賛成である。





1  第1の1(1)2(1)  について

        金銭(民事執行法第131条第3号参照)については、金額を引き上げる
(注1)饌(1)について、どの程度の金額にするか、破産法独自の観点から個別執行における差押禁止財産
の金額よりも拡大するかどうかについては、担保・執行法制部会における差押禁止財産の範囲の拡張に関する
検討状況を踏まえ、それとの均衡も考慮に入れて、なお検討する。

<意見>自由財産として金銭を認め、その額を現行の民事執行法第131条第3号(標準的な世帯の1ヶ月間
の必要生活費)から引き上げることについては賛成であるが、認められる金銭の額については、標準的な世帯
の5ヶ月間の必要生活費程度にすべきである。
<理由>中間試案では民事執行法131条3号が定める1ヶ月の一般的な生活費の額から引き上げるとされる
が、生活費の何ヶ月分にするかについては具体的な方針は示されていない。
今般の破産法改正にあたっては、債務者が生活再建でき、2度と多重債務に陥らないことを重視すべきであり
、差し押さえ禁止財産の範囲の問題とは区別して考慮する必要があること、債務者の中には従前従事していた
事業をやめたり、失職したりなどの事情が往々にして見られ、再び職を得て経済的に安定するまでの間の生活
費が必要とされること及び近時破産者を狙った闇金融の被害が激増しているが、これを防止する見地も必要で
あることから、5か月間程度の生活費の額を自由財産として保持することを認めるべきである。

2  第1の1(2)1について

    裁判所は、破産者の申立てにより、決定で、破産者の生活の状況その他の事情を考慮して、自由財産とな
るべき財産(民事執行法第132条、第153条及び第167条参照)の範囲を拡張することができるものと
する。
(注1)職権により1の決定をすることができるものとする考え方の当否については、なお検討するものとす
る。

  
<意見>自由財産の範囲の拡張の裁判について定めることについては賛成であるが、申立を必須とすべきでな
く必要に応じて裁判所が職権で判断することができるようにすべきである。
<理由>個人が破産申立を行う場合には、代理人を付さず本人申立によることも多い。法律の素人が自由財産
範囲拡張の申立書面を作成し、適切に資料を添付することは極めて困難とみられる。そこで、裁判所において
本人の申述や持参した資料等から拡張の判断が可能と見られる場合には職権で判断できる余地を与えるべきで
ある。

3  第2の1(1)3について
  
    饌ただし書の申述をした債務者は、1の免責の申立てをすることができないものとする。


<意見>削除すべきである。
<理由>上記3は、債務者が破産を申立てたと同時に免責を求めないとの申述を行えば、2度と免責の申立を
できないと定めるものである。しかし殊に本人申立ての場合破産申立時には未だ混乱状態にあり一部の債権者
の強い影響下に免責を求めないことを申述せざるをえないことも考えられるので、破産手続きが進み落ち着い
た段階で再考して免責を申立てられる機会が与えられるべきである。

4  第2の3 1について

    免責の申立てがあり、かつ、破産終結決定又は破産廃止決定があったときは、免責の申立てに関する裁判
が確定するまでの間、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分又は一般の先取特
権による競売(以下1において「強制執行等」という。)の手続はすることができず、破産者の財産に対して
破産宣告前に既にされている強制執行等の手続は中止するものとする。

  
<意見>破産廃止(終結)決定があったときは、破産宣告前に破産者の財産に既になされている強制執行等の手
続きは中止すると定めるが、さらに進んで申立により強制執行等の手続きを取り消し得ることとすべきである。
<理由>破産者の給与債権に対する差押えの場合は、差押え手続きを中止するだけでは破産者に対して給与差
押え部分の支払いが再開されるわけではない。本条項は免責手続きに入れば免責決定を得られる見通しが高い
ことから免責手続中の個別の強制執行を禁じており、そうであれば破産宣告前に既にされている強制執行につ
いても中止効だけでなく進んで取消も認められるべきである。また「個人の債務者について経済生活の再生の
機会を確保する」(補足説明89ページ)必要があること、及び民事再生法第26条第3項においては取消し
も認められていることとの均衡上も、取消し規定は必要であると考える。

5  第2の4(2)について

破産法第366条ノ9第4号については、破産者について次の(1)から(3)までに掲げる事由のいずれか
がある場合において、それぞれ(1)から(3)までに定める日から7年以内に免責の申立てがされたことを
もって、免責不許可事由とするものとする。
(1)  免責の決定が確定したこと  当該決定の確定の日
(2)  給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと  当該再生計画認可の決定の確定の日
(3)  民事再生法第235条第1項(同法第244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決
定が確定したこと  当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
(注1)民事再生法の給与所得者等再生において、過去に破産免責等を受けた者につき、給与所得者等再生の
利用を制限している同法第239条第5項第2号イ、ロ及びハの規定についても、同様に制限期間を7年とす
るものとする。
(注2)第366条ノ9第1号の見直しについては、なお検討する。


<意見>再度の免責の制限期間を7年に短縮することは賛成であるが、(2)給与所得者等再生計画が履行され
た場合、(3)ハードシップ免責がなされた場合については7年間の破産免責制限期間を設けることには反対で
ある。
<理由>再度の自己破産についての免責制限期間を設けることはやむを得ないとしても、自己破産を選択しな
いで、一定金額を支払う個人再生手続を選択して、誠実に履行し、あるいは病気等やむを得ない事情で履行で
きなくなって免責を受けた債務者については、自己破産手続の選択は初めてなのであるから、免責制限期間を
設ける必要は無い。
給与所得者等再生手続の選択にあたって、期間制限が設けられていることとの均衡が理由とされているが、給
与所得者等再生手続を申立て得る者は、小規模個人再生手続を申立て得るのであるから、同手続により救済し
得る。これに対し、サラリーマン時に給与所得者等再生手続を利用して履行したが、その後、リストラされて
収入が無くなった場合などは、破産手続しか利用できないし、かつ、その利用を妨げる必要性はない。また、
ハードシップ免責は、そもそも再生計画の4分の3以上を履行し、かつ、病気など再生債務者の責めに帰すこ
とができない事情がある場合に限定されて認められる制度であるから、通常の破産免責を受けた場合と同様の
免責制限期間を設けるのは債務者に酷であり、かつ、その必要性も無い。

6.  第2の5の(後注2)  について

次の(1)又は(2)に掲げる債権を非免責債権(破産法第366条ノ12参照)に加えるものとする。
(1)破産者による人の生命又は身体を侵害する不法行為で故意又は重大な過失によるものに基づく損害賠償
請求権(破産法第366条ノ12第2号に該当するものを除く。)
(2)破産者が養育者又は扶養義務者として負担すべき費用に関する債権
(免責手続き関係後注2)破産法第366条ノ9第2号を免責不許可事由から除外して、詐術に係る債権を非
免責債権とするものとする考え方の当否については、なお検討する。


<意見>詐術に係る債権を非免責債権とする考え方が検討されているが、このような考え方については強く反
対する。
<理由>  詐術に係る債権を非免責債権とする考え方は、一見したところ、被害を受けた債権者の救済に資す
るようにみえるが、実際には多重債務に既に陥っている債務者に、形式的に実情と異なる「申込み書」を作成
させて融資を行い、破産申立て後も、「詐術」を主張し、免責後も「悪意を以って加えたる不法行為」による
非免責債権を主張して訴訟提起してくる一部金融業者がいる現状からすれば、このような改正をすれば、債務
者は免責確定後も「詐術」を主張する債権者の追及を受け続けることになり、債務者の生活再建は著しく妨げ
られてしまう恐れが極めて強い。
また、事業者では真面目な債務者であればあるほど、自転車操業の期間が長く、自転車操業が詐術と認定され
る恐れも強い。
今般の破産法改正にあたっては、債務者が生活再建でき、2度と多重債務に陥らないことを重視すべきで、「詐
術」を免責不許可事由から削除するか否かにかかわらず、非免責債権に加えることには強く反対する。

                                                                                    以  上



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