意見書

特殊法人改革における国民生活センターのあり方についての意見書(2001年11月19日)



                                                2001年(平成13年)11月19日
内閣総理大臣  小  泉  純一郎  殿
行政改革・規制改革担当大臣  石  原  伸  晃  殿
                                                        京都弁護士会
会  長  福  井  啓  介
                                                        同 消費者保護委員会
委員長  飯  田      昭

第1  意見の趣旨
      特殊法人国民生活センターの廃止・民営化はもとより、その機能縮小を意味する消費生
    活相談事業及び商品比較テスト・自主調査テスト事業の廃止は反対であり、より機能を拡
    充する方向で検討すべきである。
第2  意見の理由
  1  政府の行政改革委員会は、特殊法人改革として、原則廃止または民営化の方針を打ち出
    している。特殊法人である国民生活センターもその例外ではなく、同センターが行ってい
    る事業についても見直しがなされている。
      現時点で、国民生活センターの全面廃止あるいは全面民営化という意見はでていない。
    ただ同センターが行う事業に関し、1.センターが直接行う消費生活相談事業を廃止し、地
    方公共団体の消費生活センターに対する助言や情報分析に特化すること、2.商品テスト事
    業のうち、商品比較テストや自主調査テストを廃止し、危害商品の苦情処理テストに限定
    すること、3.客観的な事業評価の指標を設定し、外部評価を実施するとともに、外部評価
    の内容を国民に情報提供すること、という意見がでている。
      当会は、国民生活センターの全面廃止及び全面民営化はもとより、1.及び2.の意見につ
    き、強く反対する。その理由は下記のとおりである。
  2  国民生活センターを廃止あるいは民営化することに反対する理由
      特殊法人設立の目的は、戦後、経済復興を促進していくうえで、未だ民間による技術開
    発・システム構築が十分に期待できない分野があることを受けて、国の予算を導入して、
    優れた技術・システムを早期に開発しつつ、当該団体の自主的な運営を尊重しようという
    ものであった。現在、特殊法人が行う各種業務のうち、産業社会の発展により、民間企業
    による技術開発・システム構築が進化した分野も存在する。このような分野をカバーする
    目的で設立された特殊法人については、廃止あるいは民営化の方向を模索することも十分
    考えられる。
      これに対し、国民生活センターが特殊法人として設置された目的は「国民生活の安定及
    び向上に寄与するため、総合的見地から、国民生活に関する情報の提供及び調査研究を行
    うこと」(国民生活センター法1条)である。当該目的は、我が国の経済復興を促進させ
    るというものではなく、経済活動から生じる消費者問題の解決に重点が置かれている。こ
    れは、上記の特殊法人の設立目的とは異質なものである。しかも、国民生活に関する情報
    の提供及び調査研究は、正に国の消費者行政作用であり、本来民営化が予定されていない
    ものである。
      このため国民生活センターについては、特殊法人を廃止あるいは民営化する根拠(民営
    化可能な事業は民営化して経済論理に委ね、国の財政赤字を解消しつつ、民間の活性化を
    図る)が全くあてはまらず、廃止あるいは民営化の方向で考えるべきではない。
      却って規制緩和の流れの中で、今後更なる取引被害や危険な商品が増大することが予想
    され、今後も消費者行政の強化・拡充は必須であるといえる。このため、今後の消費者行
    政は、国として総合的統一的な消費者行政を推進できるよう、消費者庁の設置あるいは公
    正取引委員会のような独立行政委員会の設置などの措置により対応するのが本来のあり
    方であるが、現時点でそのような措置が不可能であれば、むしろ国民生活センターが行う
    事業を強化・拡充すべきであり、センターを廃止すべきではない。
  3  国民生活センターが行う消費生活相談事業及び商品比較テスト・自主テストの民営化に
    反対する理由
      まず消費生活相談事業の民営化が検討されている理由は、国民生活センターの消費生活
    相談事業と地方公共団体の消費生活センターの相談事業が重複しているのではないかと
    いう疑問と、全国における消費生活相談が増加の一途を辿っている(平成12年度分は5
    2万9867件で、過去最高)ことから、国民生活センターとしては情報分析に特化した
    ほうが効率的ではないかという点にあると考えられる。
      しかし、まず国民生活センターが行う直接の消費生活相談事業は、地方公共団体の補完
    的役割ではなく、国として独自に消費者保護政策を施策するために独自の役割がある。
      例えば、近年増加している消費者被害事例である資格商法あるいはインターネット上で
    の取引については、国民生活センターが直接の相談処理を行うことを通じて、その紛争解
    決方式を獲得し、これを各地方公共団体の消費生活センターに提供している。のみならず、
    消費者被害事例を独自に分析し、現行法制の問題点を関係省庁に指摘することにより、結
    果的に関係省庁の行政措置や、立法措置に結びついた例も存在する(割賦販売法の改正等)。
      これらはいずれも、国民生活センターも直接消費生活相談にあたったことからなしえた
    ものであり、現行の全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO−NET)からの
    情報提供にのみ依存してなしうることではない。
      また商品比較テストや自主調査テストの民営化が検討されている理由は、既に民間業者
    が消費者向けに出す雑誌等で行われていることから、民間事業と重複しているのではない
    かという点にあると考えられる。
      しかし、国民生活センターが行う商品テストは、新製品の性能や特徴を比較するだけで
    はなく、製品の安全性や適正な表示の有無等、製品のマイナス面をも含むものである。こ
    れは消費者にとって安全な製品か否かテストすることを重視しており、現実に国民生活セ
    ンターの商品テストが契機となって、その安全性につき警告がなされ、あるいは既存の安
    全性基準について見直しがなされた製品も存在する(レーザーポインター、浄水器、漢方
    降糖薬等)。近時の経済規制緩和路線において、ともすれば製品の性能あるいは特徴のみ
    が強調されがちな中で、行政がいわば消費者保護の視点に立って、総合的な調査と情報提
    供を行うことは非常に有用であるし、かかる視点からの商品テストを、民間業者が行うこ
    と、あるいは地方公共団体にある消費生活センターが実施することは、いずれも困難であ
    ろう。この点で商品比較テストや自主調査テストを、国レベルの行政が行うべき重要性は、
    以前にも増して高まっているものと言わなければならない。
      以上のとおり、国民生活センターが行う相談処理業務及び商品比較テスト等は、いずれ
    も、国民生活センターが消費生活相談の最前線で、現実の消費者被害実態の把握及びこれ
    に対する対策を講じるために必要不可欠の業務である。これを民営化あるいは地方に委ね
    ることは、国民生活センターの設立目的の達成を阻害することになりかねない。
      従って、国民生活センターの業務である相談処理業務及び商品比較テスト等を廃止する
    ことは反対である。

以  上

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