「実効性ある集団的消費者被害救済制度の創設を求める会長声明」(2011年12月22日)


  当会は、2011年6月4日、集団的消費者被害救済制度に関するシンポジウムを開催し、同月23日、集団的消費者被害救済制度要綱試案を公表し、実効性ある同制度の実現に向けた調査、研究を行ってきた。

  内閣府の外局である消費者委員会に設けられた集団的消費者被害救済制度専門調査会は、2011年8月19日、集団的消費者被害救済制度に関する報告書をとりまとめ、これを受けて現在、消費者庁において同制度の立法化作業が行われている。同制度は、第1段階において適格消費者団体が事業者の違法行為の確認を求め、これが確認された際に、第2段階として適格消費者団体が個別の消費者から授権を受け、事業者から金銭支払いを受け、これを個別の消費者に分配する制度である。これは、被害が多数ではあるが、少額にとどまっているため泣き寝入りすることが多く、従前十分な救済が図られてこなかったという消費者被害の救済制度を新たに創設するものであり、早期に立法化をする必要がある。

  また、効果的な消費者被害の救済には、その実効性を確保することが重要であり、中でも、さまざまな消費者被害事案が対象となるよう対象事案をなるべく広く確保することが重要である。上記報告書で取り上げられている、個人情報流出事案および有価証券報告書等の虚偽記載等に係る事案は必ずしもこれまで十分な被害救済がなされてこなかった事案であり、是非対象事案に含めるべきである。

  さらに、同制度の実効性を確保するためには、手続追行主体となる適格消費者団体が持続的にこの制度を活用できることが必要であり、適格消費者団体の経済的負担等については特に考慮すべきである。

  当会は、このような見地から、同制度の内容について、上記報告書を踏まえ、特に下記が実現されるよう、政府、国会等に対し強く求めるものである。

1  集団的消費者被害救済制度の対象事案については、制度の実効性を確保するために適用範囲を広くし、個人情報流出事案および有価証券報告書等の虚偽記載等に係る事案は対象に含めること。
2  同制度の早期実現を図るべく、2012年通常国会で立法化すること。
3  同制度の手続追行主体である適格消費者団体が、この制度を継続的に活用できるよう適格消費者団体の経済的負担につき考慮した上、この制度を担う適格消費者団体に対して、財政的、制度的支援措置が設けられること。

2011年(平成23年)12月22日

京  都  弁  護  士  会

会長 小  川  達  雄

  

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