「司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明」(2012年3月22日)


司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明



1  現在、衆議院法務委員会において、司法修習生の修習費用につき、貸与制を前提として資力要件により貸与金償還の繰延べを可能とする政府与党提出の裁判所法改正案と、暫定的に2年間給費制を復活させ、その間に法曹養成制度全体の見直しを行うことを内容とする公明党提出の裁判所法改正案がそれぞれ審議されており、3月23日の衆議院法務委員会において日弁連副会長が参考人として発言を行う予定となっている。
2  司法修習生に対して修習費用を給与として支給する給費制は、平成23年11月1日、貸与制に移行された。現在修習中である65期司法修習生からは、貸与制移行に伴い、大学や法科大学院時代の奨学金だけでなく貸与金の返済も考える必要に迫られ、将来の返済に対して大きな不安が寄せられている。また、司法修習生の就職状況が年々悪化の一途を辿っていることも合わせ、司法修習生は、就職に対する不安、将来の返済に対する不安という二重の不安を抱えながら修習を行わなければならないという深刻な状況となっている。
    さらに、このような法曹養成制度の不安定な状況を受け、優秀な人材が法曹界を敬遠するようになった結果、法科大学院を志望する者の減少傾向が続き、法曹の質の低下が危惧される事態にもなっている。
3  そもそも司法修習費用は、平成22年11月1日に給費制から貸与制に移行される予定であったところ、法曹養成制度が上記のような悪循環に陥っていること等に鑑みて、平成22年11月の臨時国会において裁判所法が改正され、1年間給費制を継続することとされたが、その際の附帯決議においては、この1年の間に、司法修習修了者の経済的状況等を検討して必要な経済的措置を講ずること、法曹の養成に関する制度の在り方全体について検討して順次必要な措置を講ずることが政府及び最高裁判所に求められていた。
    しかし、司法修習生に対して必要な経済的措置は全く講じられないまま、そして法曹養成制度の在り方全体についての具体的な検討がないまま、貸与制に移行されてしまったのである。
4  法曹養成制度は、法曹を志す者の単なる個人的資格取得の問題ではなく、三権分立の一翼を担う司法権の基盤を確立するという点において国の人的インフラの問題なのであり、それは国の在り方を大きく左右する。
    法曹養成過程における経済的な負担の大きさから法曹を目指すことを断念する者が増え、その結果、法曹の多様性が失われたり、質が低下するようなことがあってはならないが、現時点で既にその傾向が現れていることが指摘されており、貸与制移行に伴いその傾向にさらに拍車がかかることが懸念される。従って、司法修習生に対して必要な経済的措置の1つとして、法曹養成制度の在り方全体を検討する間は、給費制は継続されるべきである。
    一方、法曹養成制度の在り方全体についての検討は、現在政府によって設置された「法曹の養成に関するフォーラム」が行っているが、法曹養成の重要性に鑑みると、省庁の申し合わせのみによって開催されている同フォーラムではなく、立法に基づく組織によってこれを行わせることが必要である。
5  当会は、上述したような現在の国会情勢に鑑み、法曹養成制度についての抜本的な見直しを立法に基づく組織で2年以内に行うこと、その間は暫定的に給費制を復活させることを内容とする裁判所法の改正を、ここに改めて強く求めるものである。

    2012年(平成24年)3月22日


京都弁護士会                    

会 長  小  川  達  雄



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