声明

「関西電力大飯原子力発電所の再稼働に対する会長声明」(2012年6月18日)


  2011年(平成23年)3月11日に起きた福島第一原子力発電所の放射性物質大量放出事故(以下「福島原発事故」という。)の後、停止した原子力発電所は運転再開を止めており、2012年5月5日、国内の全ての原子力発電所が運転を停止するに至った。関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)3・4号機についても、3号機が2011年3月18日、4号機が同年7月22日の各定期検査開始日から、運転を停止している。
  当会は、放射性物質による広範囲の汚染被害をもたらした福島原発事故をふまえ、このような大規模人権侵害を二度と発生させることのないよう、2012年2月23日、関西電力を含む原子力事業者及び経済産業大臣に対し、「福井県内に設置された原子力発電所及び原子力施設に関する意見書」を提出し、原発の新増設禁止、10年以内の全原発の廃炉ないし「現在停止中の原子力発電所等については、福島原発事故の原因を解明し、当該事故原因に基づいた万全の安全対策を講じない限り運転を再開しないこと」等を意見の趣旨として申し入れた。
  ところが、2012年6月8日、野田総理大臣が、大飯原発3・4号機を再稼働すべき旨の判断を記者会見において表明したのに続き、政府は、同月16日、上記原発の再稼動を正式に政治決断するに至った。
  しかしながら、大飯原発については、次に述べる事情を考慮するだけでも、「福島原発事故の原因解明」及び「当該事故原因に基づいた万全の安全対策」がなされているとは認められない状況にあり、その再稼動は到底容認できるものではない。
(1) 福島原発事故の調査が完了していないこと
    政府の東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会は、2011年12月に中間報告を提出したが、最終報告書はいまだ提出されておらず、国会に設置された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会も、いまだ報告書を提出していない。また東京電力株式会社の事故調査報告も、同月2日に中間報告を提出したにとどまっている。そして、津波による全電源喪失だけでなく、地震動により配管破断等が生じたのかどうか判明していないことを併せ考えても、事故原因はいまだ解明されていないと言わざるを得ない。
(2) 原子力安全・保安院が指摘した30項目の安全対策も実施されていないこと
    2012年4月6日、原子力発電所に関する四大臣会合は、「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」を発表した。この判断基準は、そもそも(3)に述べる安全設計審査指針のように法的な根拠を有するものではない。また、上記判断基準は、同年2月16日に原子力安全・保安院が作成した「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について(中間とりまとめ)」に基づく30項目の安全対策について、「着実な実施計画が事業者により明らかにされていること」で足りるとするが、計画が明らかにされているだけでは、実際に安全対策が講じられているとは限らないのであって、現に、免震棟の建設やベントフィルターの設置などの対策が実施されていない。
(3) 安全設計審査指針が改訂されていないこと
    原子力安全委員会が原子炉の安全審査において確認すべき基本設計の要求事項を規定した安全設計審査指針について、2001年3月29日に改訂されて以来、福島原発事故後もそのままである。従来の安全設計審査指針は、原子力安全委員会委員長も認めているとおり、長期間にわたる全交流動力電源喪失を考慮する必要はないとの誤った前提のもとに策定されており、抜本的な改訂が必要であるのに改訂されていない。
また、既設発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価(設計の想定を超える外部事象に対する頑健性の総合的な評価。いわゆるストレステスト)については、「設計の想定を超える外部事象」の想定が適切になされていないなど様々な問題があるが、一次評価を終えただけで二次評価さえ終了していない。
  このように、今般、政府は、福島原発事故の事故原因解明はおろか、当該事故原因に基づく万全の安全対策が講じられたとは到底評価できない状況のもとで、大飯原発3・4号機の再稼動を決断したものである。このような政治決断のもとで、大飯原発3・4号機の再稼動が実行されることは、福島原発事故と同様の大規模人権侵害を防止するという観点から、到底容認できるものではない。
  よって、当会は、大飯原発3・4号機の再稼動を容認する今般の政府決定に厳しく抗議するとともに,関西電力が、当該政府決定にしたがって大飯原発3・4号機の運転を再開することがないよう、強く求める。


2012年(平成24年)6月18日

京  都  弁  護  士  会

会長  吉  川  哲  朗



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