「秘密保全法制定に反対する会長声明」(2012年6月21日)


  政府は、2011年(平成23年)8月に「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が提出した報告書を受けて、現在、秘密保全法制に関する法案提出を目指して準備を進めているとされている。

  この法案は未だ公表されていないが、前記報告書によれば、①新たに「特別秘密」を指定し、②従来の情報の物的管理に加えて「人的管理」を導入し、③過失による漏洩や独立教唆・扇動行為、共謀行為のみならず「特定取得行為」と称する秘密探知行為を処罰対象とし、④さらに罰則を強化するという方向で法案が作成されるものと思われる。

  しかし、このような方向で作成される法案には、以下のような問題点がある。
(1)「特別秘密」の範囲が曖昧かつ広範で、解釈・運用によっては原発事故に関する情報など本来広く社会に公表されるべき情報までが隠匿され、知る権利が害されるおそれがある。
(2)「人的管理」の対象となる者及びその周辺の人々のプライバシーが侵害されるおそれがある。
(3)処罰範囲が不明確かつ広範であって罪刑法定主義に反するとともに、「特定取得行為」として取材活動が広く規制され、報道機関等の取材・報道の自由が侵害され、言論の自由に対する萎縮効果が大きい。
(4)罰則を強化すべき必要性・相当性に疑問がある。

  このように、上記報告書に依拠した秘密保全法制には重大な問題があるので、当会は、当該秘密保全法の制定に反対であり、同法案が国会に提出されないよう強く求めるものである。


2012年(平成24年)6月21日


京  都  弁  護  士  会

会長  吉  川  哲  朗



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