声明

「死刑執行に対する会長声明」(2012年8月9日)


1  2012年(平成24年)8月3日、東京、大阪の各拘置所において、2名に対する死刑が執行された。死刑制度に関する全社会的議論が十分尽くされていない中で、死刑執行が行われたことは極めて遺憾であり、当会はこれに対し強く抗議する。

2  日本では、4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっている。密室での取調べによる自白調書の信用性を認めた判決の問題点が指摘されているが、このような誤判が生じるに至った制度上、運用上の問題点について抜本的な改善が図られたとは言い難い。また、死刑と無期懲役の量刑につき裁判所によって判断の分かれる例があるが、量刑事情の誤認や量刑判断の誤りについては再審の対象とされていないため、誤って死刑と判断された場合にその判断を是正する方法がない。
    さらに、死刑確定者に対しては、外部交通が厳しく制限されているため、誤った裁判による死刑判決がいったん確定した場合、誤判からの救済は極めて困難となっている。
    失われた命はどのようにしても回復できず、誤判の危険や事後的な是正方法の問題について早急に検討する必要がある。

3  日本政府は、国連をはじめとする国際機関からも繰り返し、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう勧告を受けている。
    かかる国際社会からの要請に対し、今、日本に求められているのは、死刑制度の存廃について早急に広範な議論を行うこと、そしてその前提として死刑制度に関する情報を社会に対して十分に提供することである。
    2012年(平成24年)3月、法務大臣の下に設置されていた「死刑の在り方についての勉強会」が終了し取りまとめ報告書が公表されたが、その後は、法務省政務三役会議の中で絞首刑の在り方に関する議論が開始されたと報道されているのみで議論状況すら公開されていない。死刑制度に関する全社会的議論が行われているものとは到底いえず、死刑の執行が今回行われたことは誠に遺憾である。

4  当会は、本年4月26日にも、死刑執行に対して抗議する会長声明を出したが、その後短期間で死刑執行が繰り返されたことについて、前回同様に抗議するものである。
    当会は、2008年(平成20年)、死刑制度調査検討プロジェクトチームを設置し、2009年より「死刑を考える日」と題する催しを毎年開催し、2011年(平成23年)11月27日には「憲法と人権を考える集い」のテーマとして死刑制度問題を取り上げた。本年度においても、勉強会やシンポジウムの開催を企画しており、市民とともに死刑制度について悩み、広く全社会的議論を呼びかけている。
    当会としては、広く社会内において死刑制度の存廃について議論が尽くされるべきとの立場から、さらに一層議論を呼びかけるものである。

5  当会は、死刑制度についての議論が尽くされないまま、死刑執行が行われたことに厳重に抗議するとともに、改めて、議論が尽くされるまでの間、死刑執行の停止を要請し、また広く死刑制度の存廃についての全社会的議論を呼びかけるものである。


2012年(平成24年)8月9日


京  都  弁  護  士  会

会長  吉  川  哲  朗


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