「提携リース契約規制法試案」(2012年8月9日)


提携リース契約規制法試案


2012年8月9日  京都弁護士会


第1章  総則

(目的)
第1条  この法律は、リース事業者が販売業者等を利用して顧客と締結するリース契約に係る取引の公正の確保、及びその顧客等が受けることのある損害の防止に必要な措置を講ずることにより、その顧客等の利益を保護し、あわせて商品等の流通を円滑にし、もって、国民経済の発展に寄与することを目的とする。

(定義)
第2条  この法律において、「リース事業者」とは、顧客に対して、販売業者等を利用して物又はソフトウェア等を提供してファイナンス・リースすることを業とする者をいう。
2  この法律において、「販売業者等」とは、自ら又は第三者が所有するリース契約の対象物件をリース事業者に対して販売する又は当該第三者をして販売させることを目的として、以下のいずれかの行為を業として行う者をいう。
一  リース事業者からの委託を受け、又は、リース事業者からの委託を受けた者からの委託(二以上の段階にわたる委託を含む)を受けて、リース契約についての顧客との折衝の全部または一部を行うこと。
二  リース事業者名義のリース契約書、リース申込書又はリース事業者宛の物件受領書(借受書)を顧客に持参その他の方法で交付すること。
三  顧客に対し、リース事業者に先立ち、リース契約の内容の全部または一部についての説明を行うこと。
四  顧客から、リース契約書やリース契約の対象物件の受領書(借受書)に顧客の署名ないし記名・押印を受けること。
五  その他リース事業者との事実上の委託又は提携関係の存在を推察させる前各号に準ずる行為を行うこと。
3  この法律において、「顧客」とは、消費者契約法第2条第1項に定める消費者、営利を目的としない法人及び中小企業基本法第2条第1項に定める中小企業者であって、リース事業者とのリース契約に基づいてリース事業者からリース物件等の提供を受ける者をいう。
4  この法律において規制の対象となるリース契約は、販売事業者等から第2項各号に定めるいずれかの行為を受けた顧客が、リース事業者との間において締結するリース契約(以下「提携リース契約」という。)をいう。

第2章  提携リース契約

(リース条件の表示)
第3条  リース事業者は、提携リース契約を締結しようとするときは、顧客に対して、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、提携リース契約に関する次の事項を示さなければならない。
一  リース料総額、リース期間及び支払時期ごとのリース料
二  リース物件の取得価格
三  リース料総額に含まれるリース物件の保険料・固定資産税等実費の額
四  リース料総額にリース物件を設置等するための役務やリース物件の前払保守費用等、役務提供費用を含む場合、それらの役務提供費用の額
五  リース事業者の手数料の料率
六  第1号から第5号に掲げた金額を明示したリース料算出の計算式
七  前号に掲げるもののほか、経済産業省令・内閣府令で定める事項

(書面の交付)
第4条  リース事業者は、提携リース契約を締結しようとするときは、顧客に対して、遅滞なく、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、次の事項について当該契約の内容を明らかにする書面を顧客に交付しなければならない。
一  リース料総額、リース期間及び支払時期ごとのリース料
二  リース物件の取得価格
三  リース料総額に含まれるリース物件の保険料・固定資産税等実費の額
四  リース料総額にリース物件を設置等するための役務やリース物件の前払保守費用等、役務提供費用を含む場合、それらの役務提供費用の額
五  リース事業者の手数料の料率
六  第1号から第5号に掲げた金額を明示したリース料算出の計算式
七  前号に掲げるもののほか、経済産業省令・内閣府令で定める事項

(提携リース契約の対象となる物件等の規制)
第5条  提携リース契約の対象となる物件は、移動及び返還が可能な動産及びソフトウェアとする。
2  前条第3号及び同条第4号の各金額は、第3条第2号の金額と合算した合計金額に占める割合が10%を超えてはならない。
3  他のリース契約の中途解約手数料等、前条第1号乃至第3号に定めた以外の金額を前条に掲げる金員に上乗せするなどして、提携リース契約の対価に含めてはならない。
4  リース事業者の手数料の料率は、利息制限法より定められた利息を上回ることはできない。
5  本条第1項ないし第3項の規定に反する内容を含む提携リース契約は、無効とする。
6  本条第4項の規定に反する内容を含む提携リース契約は、利息制限法により定められた利息を超過したリース料の支払については、無効とする。

(不適切な勧誘の禁止)
第6条  リース事業者又はリース事業者から提携リース契約書の交付を受けてこれを顧客に提示する販売業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
一  提携リース契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し事実と異なることを告げる行為
二  提携リース契約の締結又はその勧誘に関して、顧客の利益となる旨を告げ、かつ、当該事項について当該顧客の不利益となる事実を故意に告げない行為
三  顧客に対し、将来の変動が不確実な事項について断定的判断を提供して提携リース契約の締結の勧誘をする行為
四  顧客が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しない行為。
五  顧客が、勧誘をしている場所から退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該顧客を退去させない行為
六  提携リース契約の締結の勧誘の要請をしていない顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、提携リース契約の締結の勧誘をする行為
七  提携リース契約の締結の勧誘を受けた顧客が当該リース契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する行為
八  顧客に対して、リース料の一部等名目の如何にかかわらず金銭の提供ないし債務の負担を約束することを告げて勧誘する行為
九  顧客に対して、提携リース契約における顧客の主体を偽って契約を締結するよう勧誘する行為
十  顧客に対して、リース物件の引渡等義務の一部又は全部を行わないことを内容とする契約を締結するよう勧誘する行為
十一  顧客に対して、前条に違反する内容のリース契約を締結するよう勧誘する行為
十二  前各号に掲げるもののほか、顧客の保護に欠けるものとして経済産業省令・内閣府令で定める行為

(リース事業者の調査義務等)
第7条  リース事業者は、提携リース契約を締結するために、継続又は反復してリース契約書または物件受領書(借受書)を販売業者等に交付する場合、その書類の交付に先立って、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、販売業者等による前条各号のいずれかに該当する行為の有無に関する事項であって経済産業省令・内閣府令で定める事項を調査しなければならない。
2  リース事業者は、顧客と提携リース契約を締結するため、販売業者等から顧客の記入したリース契約書または物件受領書(借受書)を受領した時、前条第1号から第12号に定めた勧誘、その他不適切な勧誘の有無を、直接、顧客に確認するなどして調査しなければならない。
3  リース事業者は、顧客と提携リース契約を締結後、顧客から提携リース契約に関する苦情があった場合、その苦情内容について調査し、かつ、これに対して適切な処置をとらなければならない。
4  リース事業者は、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、前3項の規定による調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
5  販売業者等は、本条第1項乃至第3項の規定による調査に協力するよう努めなければならない。

(不適切な勧誘があった場合等のリース契約書等交付等の禁止)
第8条  リース事業者は、第7条第1項乃至第3項の規定による調査その他の方法により知った事項からみて、販売業者等が次の各号のいずれかに該当する行為をしたと疑われるときは、当該販売業者等に対し、提携リース契約書及び物件受領書(借受書)を交付してはならず、提携リース契約の締結を代行させてはならず、また当該販売業者から購入した物件を対象とする提携リース契約を締結してはならない。
一  第6条に規定する行為
二  特定商取引に関する法律第6条第1項から第3項まで、第21条各項、第34条第1項から第3項まで、第44条各項又は第52条第1項若しくは第2項の規定に違反する行為
三  消費者契約法第4条第1項から第3項までに規定する行為

(不適切な勧誘があった場合等のリース契約締結の禁止)
第9条  リース事業者は、第7条第2項の規定による調査その他の方法により知った事項から見て、販売業者等が、提携リース契約締結の勧誘に際して、第6条各号のいずれかに該当する行為をした可能性を認めるときは、当該勧誘の相手方である顧客に対し提携リース契約の申込みをし、又は当該勧誘の相手方である顧客から受けた提携リース契約の申込みを承諾してはならない。

(顧客の支払能力調査義務及び支払能力を超える提携リース契約の禁止)
第10条  リース事業者は、販売業者等を利用して、顧客と提携リース契約を締結しようとする場合には、その契約の締結に先立って、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、年収、預貯金、提携リース契約・信用購入あっせん等に係る債務の支払の状況、借入れの状況その他の顧客の支払可能見込額を算定するために必要な事項として経済産業省令・内閣府令で定めるものを調査しなければならない。ただし、当該顧客の保護に支障を生ずることがない場合として経済産業省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
2  本条における支払可能見込額は、経済産業省令・内閣府令で定める。
3  リース事業者は、販売業者等を利用して、顧客と提携リース契約を締結しようとする場合において、顧客の支払総額のうち1年間に支払うこととなる額が、前条第1項本文の規定による調査により得られた事項を基礎として算定した支払可能見込額を超えるときは、当該提携リース契約を締結してはならない。ただし、当該顧客の保護に支障を生ずることがない場合として経済産業省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
4  リース事業者は、第1項本文の規定による調査を行うときは、指定信用情報機関が保有する特定信用情報を使用しなければならない。
5  リース事業者は、提携リース契約を締結した場合には、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、第1項本文の規定による調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。

(過量リース契約についての調査義務及び過量リース契約締結の禁止)
第11条  リース事業者は、提携リース契約を締結しようとする場合には、その契約の締結に先立って、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、提携リース契約が、顧客の日常生活または日常業務において通常必要とされる分量を著しく超える量の契約に該当するおそれの有無に関する事項として経済産業省令・内閣府令で定めるものを調査しなければならない。ただし、当該顧客の保護に支障を生ずることがない場合として経済産業省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
2  リース事業者は、提携リース契約を締結しようとする場合において、提携リース契約が、顧客の日常生活または日常業務において通常必要とされる分量を著しく超える量の契約に該当するおそれがあるときは、当該提携リース契約を締結してはならない。ただし、当該顧客の保護に支障を生ずることがない場合として経済産業省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
3  リース事業者は、第1項本文の規定による調査を行うときは、指定信用情報機関が保有する特定信用情報を使用しなければならない。
4  リース事業者は、提携リース契約を締結した場合には、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、第1項本文の規定による調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。

第3章  リース事業者の登録等

(リース事業者の登録)
第12条  リース事業は、経済産業省に備えるリース事業者登録簿に登録を受けた法人(以下「登録リース事業者」という。)でなければ、業として営んではならない。ただし、割賦販売法第35条の3の60第1項第4号の団体については、この限りでない。

(登録の申請)
第13条  前条の登録を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を経済産業大臣に提出しなければならない。
一  名称
二  本店その他の営業所の名称及び所在地
三  資本金又は出資の額
四  役員(業務を執行する社員、取締役若しくは執行役又はこれらに準ずる者をいい、いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し、これらの者と同等以上の支配力を有するものと認められる者として経済産業省令で定めるものを含む。以下この節及び次節において同じ。)の氏名
2  前項の申請書には、定款、登記事項証明書その他経済産業省令で定める書類を添付しなければならない。ただし、経済産業省令で定める場合は、登記事項証明書の添付を省略することができる。
3  前項の場合において、定款が電磁的記録で作られているときは、書面に代えて電磁的記録(経済産業省令で定めるものに限る。)を添付することができる。

(登録及びその通知)
第14条  経済産業大臣は、前条第1項の規定による登録の申請があったときは、次条第1項の規定により登録を拒否する場合を除くほか、前条第1項各号に掲げる事項及び登録年月日をリース事業者登録簿に登録しなければならない。
2  経済産業大臣は、第12条の登録をしたときは、遅滞なく、その旨を申請者に通知しなければならない。

(登録の拒否)
第15条  経済産業大臣は、前条第1項の申請書を提出した者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は当該申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
一  法人でない者
二  資本金又は出資の額が顧客を保護するため必要かつ適当であると認められる金額で政令において定めるものに満たない法人
三  資産の合計額から負債の合計額を控除した額が資本金又は出資の額の100分の90に相当する額に満たない法人
四  第19条第1項又は第2項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない法人
五  この法律又は貸金業法(昭和五58年法律第32号)の規定により罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない法人
六  役員のうちに次のいずれかに該当する者のある法人
イ  破産者で復権を得ないもの
ロ  禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ハ  この法律、貸金業法若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)の規定(同法第32条の2第7項の規定を除く。)に違反し、又は刑法(明治40年法律第45号)若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正15年法律第60号)の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ニ  登録リース事業者が第19条第1項又は第2項の規定により登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30日以内にその登録リース事業者の役員であった者で、その処分のあった日から5年を経過しないもの
ホ  暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)
七  暴力団員等がその事業活動を支配する法人
八  暴力団員等をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用するおそれのある法人
九  提携リース契約に係る業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある法人として経済産業省令で定めるもの
十  第10条第1項本文に規定する調査、その他この法律に定める措置の円滑な実施を確保するために必要な体制、顧客の苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制その他の提携リース契約の公正かつ適確な締結を確保するために必要なものとして経済産業省令で定める体制が整備されていると認められない法人
2  割賦販売法第15条第2項及び第3項の規定は、第13条第1項の規定による登録の申請があった場合に準用する。

(変更登録の申請)
第16条  登録リース事業者は、第13条第1項各号に掲げる事項について変更があったときは、遅滞なく、その変更に係る事項を記載した変更登録の申請書を経済産業大臣に提出しなければならない。
2  第13条第2項、第14条並びに前条第1項、割賦販売法第15条第2項及び第3項の規定は、前項の規定による変更登録の申請に準用する。

(登録簿の閲覧)
第17条  経済産業大臣は、リース事業者登録簿を一般の閲覧に供しなければならない。

(改善命令)
第18条  経済産業大臣は、登録リース事業者が第15条第1項第10号の規定に該当することとなったと認めるときは、その必要の限度において、当該登録リース事業者に対し、リースに係る業務の運営を改善するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(登録の取消し)
第19条  経済産業大臣は、登録リース事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消さなければならない。
一  第15条第1項第2号又は第5号から第9号までのいずれかに該当することとなったとき。
二  不正の手段により第12条の登録を受けたとき。
2  経済産業大臣は、登録リース事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消すことができる。
一  第18条の規定による命令に違反したとき。
二  第16第1項の規定による申請をせず、又は虚偽の申請をしたとき。
3  経済産業大臣は、登録リース事業者が前項第1号の命令に違反した場合において、前項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。
4  内閣総理大臣は、登録リース事業者が第2項第1号の命令に違反した場合において、顧客の利益を保護するため必要があると認めるときは、経済産業大臣に対し、同項の規定による処分に関し、必要な意見を述べることができる。
5  経済産業大臣は、第1項又は第2項の規定により登録を取り消したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を当該登録リース事業者であった者に通知しなければならない。

(登録の消除)
第20条  経済産業大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、リース事業者登録簿につき、その登録リース事業者に関する登録を消除しなければならない。
一  前条第1項又は第2項の規定により登録を取り消したとき。
二  リースの営業を廃止したことが判明したとき。
2  前条第3項の規定は、前項第2号の規定により登録を消除した場合に準用する。

(販売業者等の契約の解除)
第21条  登録リース事業者が第19条第1項若しくは第2項の規定により登録を取り消され、又は前条第1項第2号の規定により登録を消除されたときは、当該登録リース事業者とリース契約締結を代行するなどの契約を締結した販売業者等は、将来に向かってその契約を解除することができる。
2  前項の規定に反する特約は、無効とする。

第4章  提携リース契約における顧客の保護

(提携リース契約の申込みの撤回等)
第22条  顧客は、提携リース契約について、書面により、当該提携リース契約の申込みの撤回等(次の各号の提携リース契約の申込みの撤回又は次の各号の提携リース契約の解除をいう。以下この条において同じ。)を行うことができる。ただし、第4条の書面にリース物件の引渡時期若しくは権利移転の時期及び本条に記載した提携リース契約の申込みの撤回または解除に関する事項が記載されている場合、その書面を受領した日(その日前に同条第一項の書面を受領した場合にあっては、当該書面を受領した日)から起算して8日を経過したとき(顧客が、リース事業者若しくは販売業者等が提携リース契約の締結について勧誘をするに際し、若しくは申込みの撤回等を妨げるため、申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は若しくはリース事業者販売業者等が提携リース契約を締結させ、若しくは申込みの撤回等を妨げるため、威迫したことにより困惑し、これらによって当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該顧客が、当該リース事業者又は当該販売業者等が経済産業省令・内閣府令で定めるところにより申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して8日を経過したとき)は、この限りでない。
2  申込みの撤回等は、前項本文の書面を発した時に、その効力を生ずる。
3  申込みの撤回等があった場合においては、リース事業者及び販売業者等は、当該申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
4  リース事業者は、第1項本文の書面を受領した時には、直ちに、販売業者等にその旨を通知しなければならない。
5  顧客が申込みの撤回等を行った場合には、当該申込みの撤回等に係る第1項本文の書面を発する時において現に効力を有する提携リース契約に関連してなされた販売業者等と顧客との間の契約の申込みないし契約は、当該顧客が当該書面を発した時に、撤回されたものとみなし、又は解除されたものとみなす。ただし、当該顧客が当該書面において反対の意思を表示しているときは、この限りでない。
6  前項本文の規定により提携リース契約に関連してなされた販売業者等と顧客との間の契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約に関連してなされた販売業者等と顧客との間の契約が解除されたものとみなされた場合においては、販売業者等は、当該契約の申込みの撤回又は当該契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
7  リース事業者は、第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約が解除されたものとみなされた場合には、既にリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額の販売業者等への交付をしたときにおいても、顧客に対し、販売業者等に対して交付をした当該リース物件の対価の全部又は一部に相当する金額その他リース契約により得られた利益に相当する金銭の支払を請求することができない。
8  販売業者等は、第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約が解除されたものとみなされた場合において、リース事業者から既にリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額の交付を受けたときは、当該リース事業者に対し、当該交付を受けたリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額を返還しなければならない。
9  リース事業者は、申込みの撤回等があり、かつ、第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約が解除されたものとみなされた場合において、顧客から当該提携リース契約に関連して金銭を受領しているときは、当該顧客に対し、速やかに、これを返還しなければならない。
10  第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約が解除されたものとみなされた場合において、当該提携リース契約に係るリース物件の引渡し又は権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、販売業者等の負担とする。
11  販売業者等は、第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は同項第4号若しくは第5号の提携リース契約が解除されたものとみなされた場合には、既に当該提携リース契約に基づき引き渡されたリース物件が使用されたときにおいても、同項第1号、第2号、第4号又は第5号に定める者に対し、そのリース物件の使用により得られた利益その他の金銭の支払を請求することができない。
12  顧客は、第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約が解除されたものとみなされた場合において、当該提携リース契約に関連して顧客の土地又は建物その他の工作物の原状が変更されたときは、リース事業者又は販売業者等に対し、その原状回復に必要な処置を無償で講ずることを請求することができる。
13  第1項から第3項まで、第5項から第7項まで及び第9項から前項までの規定に反する特約であって顧客に不利なものは、無効とする。

(提携リース契約の申込またはその承諾の意思表示の取消)
第23条  顧客は、リース事業者又は販売業者等が提携リース契約について勧誘するに際し、顧客に対して、第6条各号に掲げる行為をしたことにより、提携リース契約の内容及び効用を誤認し、提携リース契約の正確な理解を欠き、もしくは困惑し、それによって、提携リース契約の申込み又は承諾の意思表示をしたときはこれを取り消すことができる。
2  顧客が前項の規定により提携リース契約の申込み又はその承諾の意思表示を取消し、又はその他の事由により初めから提携リース契約が無効である場合には、当該リース事業者は、当該顧客に対し、当該提携リース契約に基づくリース料の支払いを請求することができない。
3  前項の場合において、販売業者等は、リース事業者に対し、当該交付を受けたリース物件の対価の全部に相当する金額を返還しなければならない。
4  第2項の場合において、顧客は、提携リース契約に関連してリース事業者に対して金銭を支払っているときは、その返還を請求することができる。
5  第1項の規定による提携リース契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもつて善意の第三者に対抗することができない。
6  第1項の規定は、同項に規定する提携リース契約の申込み又はその承諾の意思表示に対する民法(明治29法律第89号)第96条の規定の適用を妨げるものと解してはならない。
7  第1項の規定による取消権は、追認をすることができる時から6月間行わないときは、時効によって消滅する。当該提携リース契約の締結の時から5年を経過したときも、同様とする。

(契約の解除等の制限)
第24条  リース事業者は、提携リース契約についてリース料の支払の義務が履行されない場合において、20日以上の相当な期間を定めてその支払を書面で催告し、その期間内にその義務が履行されないときでなければ、支払分の支払の遅滞を理由として、契約を解除し、又は支払時期の到来していない支払分の支払を請求することができない。
2  前項の規定に反する特約は、無効とする。

(契約の解除等に伴う損害賠償等の額の制限)
第25条  リース事業者は、提携リース契約が解除された場合には、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、当該契約に係る支払総額に相当する額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を顧客に対して請求することができない。
2  リース事業者は、前項の契約についてリース料の支払の義務が履行されない場合(契約が解除された場合を除く。)には、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、当該契約に係る支払総額に相当する額から既に支払われた同号の支払分の額を控除した額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を顧客に対して請求することができない。

(リース事業者に対する顧客の支払拒絶権)
第26条  顧客は、リース事業者から提携リース契約に係るリース代金の支払の請求を受けたときは、当該提携リース契約の締結を条件として当該提携リース契約に関連して販売業者等との間に締結された契約について生じている事由をもって、当該支払の請求をするリース事業者に対抗することができる。
2  前項の規定に反する特約であって顧客に不利なものは、無効とする。
3  第1項の規定による対抗をする顧客は、その対抗を受けたリース事業者からその対抗に係る同項の事由の内容を記載した書面の提出を求められたときは、その書面を提出するよう努めなければならない。

(通常必要とされる分量を著しく超える提携リース契約の申込みの撤回等)
第27条  顧客は、顧客の日常生活または業務において、通常必要とされる分量を著しく超える量の提携リース契約の申込みをし、あるいは提携リース契約の締結をした場合には、提携リース契約の申込みの撤回又は提携リース契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、顧客に提携リース契約の締結を必要とする特別の事情があったときは、この限りでない。
2  前項の規定による権利は、当該提携リース契約の締結の時から1年以内に行使しなければならない。
3  申込みの撤回等があった場合においては、リース事業者は、当該申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
4  リース事業者は、申込みの撤回等があった場合には、既にリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額の販売業者等への交付をしたときにおいても、顧客に対し、当該提供者に対して交付をした当該リース物件の対価の全部又は一部に相当する金額その他当該提携リース契約により得られた利益に相当する金銭の支払を請求することができない。ただし、申込みの撤回等があった時前に特定商取引に関する法律第9条第2項又は第9条の2第1項の規定により当該特定契約の申込みが撤回され、又は当該特定契約が解除された場合は、この限りでない。
5  販売業者等は、申込みの撤回等があった場合において、提携リース事業者から既にリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額の交付を受けたときは、当該リース事業者に対し、当該交付を受けたリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額を返還しなければならない。ただし、申込みの撤回等があった時前に特定商取引に関する法律第9条第1項又は第9条の2第1項の規定により当該特定契約の申込みが撤回され、又は当該特定契約が解除された場合は、この限りでない。
6  リース事業者は、申込みの撤回等があった場合において、顧客から当該提携リース契約に関連して金銭を受領しているときは、当該顧客に対し、速やかに、これを返還しなければならない。
7  第1項から第4項まで及び第6項の規定に反する特約であって顧客に不利なものは、無効とする。

(認定リース事業協会の認定及び業務)
第28条  経済産業大臣は、政令で定めるところにより、リース事業者が設立した一般社団法人であって、次に掲げる要件に該当すると認められるものを、その申請により、次項に規定する業務(以下「認定業務」という。)を行う者として認定することができる。
一  提携リース契約に係る取引の健全な発達及び顧客の利益の保護に資することを目的とすること。
二  販売業者等を社員とする旨の定款の定めがあること。
三  次項に規定する業務を適正かつ確実に行うに必要な業務の実施の方法を定めているものであること。
四  次項に規定する業務を適正かつ確実に行うに足りる知識及び能力並びに財産的基礎を有するものであること。
2  前項の規定により認定された一般社団法人(以下「認定リース事業協会」という。)は、次に掲げる業務を行うものとする。
一  提携リース契約に係る取引の公正の確保を図るために必要な規則の制定
二  会員のこの法律の規定若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づく処分又は前号の規則の遵守の状況の調査
三  会員にこの法律の規定若しくはこの法律に基づく命令又は第1号の規則を遵守させるための会員に対する指導又は勧告その他の業務
四  顧客の利益を保護するために必要な情報の収集、整理及び提供
五  会員の行う業務に関する顧客からの苦情の処理
六  顧客に対する広報その他認定リース事業協会の目的を達成するため必要な業務

(社員名簿の縦覧等)
第29条  認定リース事業協会は、社員名簿を公衆の縦覧に供しなければならない。
2  認定リース事業協会でない者は、その名称又は商号中に、認定リース事業協会と誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
3  認定リース事業協会に加入していない者は、その名称又は商号中に、認定リース事業協会会員と誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

(認定リース事業協会への報告)
第30条  会員(リース事業者に限る。以下この条及び次条において同じ。)は、販売業者等が行った顧客の保護に欠ける行為に関する情報その他顧客の利益を保護するために必要な販売業者等に係る情報として経済産業省令で定めるものを取得したときは、これを認定リース事業協会に報告しなければならない。

(認定リース事業協会による情報提供)
第31条  認定リース事業協会は、その保有する前条に規定する情報について会員から提供の請求があったときは、正当な理由がある場合を除き、当該情報を提供しなければならない。

(役職員の秘密保持義務等)
第32条  認定リース事業協会の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
2  認定リース事業協会の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、その職務に関して知り得た秘密を、認定業務の用に供する目的以外に利用してはならない。

(定款の必要的記載事項)
第33条  一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成18年法律第48号)第11条第1項各号に掲げる事項及び第28条第1項第2号に規定する定款の定めのほか、認定リース事業協会は、その定款において、この法律の規定若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づく処分又は同条第2項第1号の規則に違反した社員に対し、定款で定める社員の権利の停止若しくは制限を命じ、又は除名する旨を定めなければならない。

(改善命令等)
第34条  経済産業大臣は、認定業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、この法律の規定の施行に必要の限度において、認定リース事業協会に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
2  経済産業大臣は、認定リース事業協会の業務の運営がこの法律の規定若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反していると認めるときは、その認定を取り消すことができる。





提携リース契約規制法試案  解説


2012年8月9日  京都弁護士会


第1章  総則

(目的)
第1条
    この法律は、リース事業者が販売業者等を利用して顧客と締結するリース契約に係る取引の公正の確保、及びその顧客等が受けることのある損害の防止に必要な措置を講ずることにより、その顧客等の利益を保護し、あわせて商品等の流通を円滑にし、もって、国民経済の発展に寄与することを目的とする。
【解説】
  ・消費者契約法第1条、割賦販売法第1条、特定商取引に関する法律第1条等を参考にした。

(定義)
第2条
①  この法律において、「リース事業者」とは、顧客に対して、販売業者等を利用して物又はソフトウェア等を提供してファイナンス・リースすることを業とする者をいう。
【解説】
  ・ファイナンス・リースの意義ないし法的性質については、最高裁判所平成5年11月25日判決(以下「平成5年最判」という)が「前示事実関係、とりわけ本件リース目的物の種類・性質、本件リース契約締結に至る経緯等によると、本件リース契約はいわゆるファイナンス・リース契約であると解することができるところ、ファイナンス・リース契約は、物件の購入を希望するユーザーに代わって、リース業者が販売業者から物件を購入のうえ、ユーザーに長期間これを使用させ、右購入代金に金利等の諸経費を加えたものをリース料として回収する制度であり、その実体はユーザーに対する金融上の便宜を付与するものである」と判示している。しかし、これはファイナンス・リースを単なる金銭消費貸借と同視したものではない。即ち、この平成5年最判では、ファイナンス・リースについて、①物件の購入を希望する顧客に代わって、リース業者が販売業者から物件を購入のうえ、顧客に長期間これを使用させリース料として回収する制度(購入代行賃貸としての側面)、②リースの実体は顧客に対する金融上の便宜を付与するものであるから、リース料の支払債務は契約の締結と同時にその金額について発生し、顧客に対して月々のリース料の支払という方式による期限の利益を与えるものにすぎず、リース物件の使用とリース料の支払とは対価関係に立つものではない(実質的に金融の便宜を図る側面)と判示し、ファイナンス・リース契約には2つの側面があることを述べているところ、①においてリース契約締結時のリース契約とリース物件との不可分の関係を是認しているのみならず、実質的に金融の便宜を図る側面に関する判示においても「(契約締結後に)ユーザーによるリース物件の使用が不可能になったとしても、これがリース業者の責めに帰すべき事由によるものでないときは、ユーザーにおいて月々のリース料の支払を免れるものではないと解すべきである。」としてリース業者の帰責性が不存在である場合にのみリース物件の使用が不可能になった時のリース会社の顧客に対するリース料の支払義務を認めているのであって、リース物件の使用とリース料の支払との関連、つまりは、リース物件の価格とリース料との関連をむしろ是認しているのである。また、カラオケ装置のリース契約につき、リース会社が顧客に対し、著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を認めた最判平成13年3月2日(金融商事法務1613号79頁)からしても、ファイナンス・リース契約が単なる金融ではなく、購入代行賃貸としての側面があることは最高裁判所も認めていることの表れというべきであるし、さらに、リース料は、「右購入代金に金利等の諸経費を加えたもの」すなわち、リース会社の利益、リース会社の購入代行の借入利息、固定資産税等が加算されていることからしても金銭消費貸借と異なること、明白である。

②  この法律において、「販売業者等」とは、自ら又は第三者が所有するリース契約の対象物件をリース事業者に対して販売する又は当該第三者をして販売させることを目的として、以下のいずれかの行為を業として行う者をいう。
    一  リース事業者からの委託を受け、又は、リース事業者からの委託を受けた者からの委託(二以上の段階にわたる委託を含む)を受けて、リース契約についての顧客との折衝の全部または一部を行うこと。
二  リース事業者名義のリース契約書、リース申込書又はリース事業者宛の物件受領書(借受書)を顧客に持参その他の方法で交付すること。
三  顧客に対し、リース事業者に先立ち、リース契約の内容の全部または一部についての説明を行うこと。
四  顧客から、リース契約書やリース契約の対象物件の受領書(借受書)に顧客の署名ないし記名・押印を受けること。
五  その他リース事業者との事実上の委託又は提携関係の存在を推察させる前各号に準ずる行為を行うこと。
【解説】
  ・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第1項総則(1)提携リース取引の定義について」に対応する条文である。その内容は以下のとおりである。
(1)「提携リース」取引の定義について
規制の対象とすべき「提携リース」取引の定義については、提携リース被害の手口、特徴、その他の被害実態を十分に検討し、被害実態に即したものとすべきであるほか、脱法的手段による規制逃れを防ぐため、現に生じている提携リース被害を残らずカバーできるよう、提携リース取引の法律構成や契約形態にこだわることなく、実質的に同様の経済的効果をもたらす取引の行為自体に着目した定義付けがなされるべきである。
他方で、ファイナンス・リース取引が経済社会において果たしている役割にも鑑み、規制の対象となる取引をできる限り明確にし、必ずしも深刻な利用者被害が生じているとはいいがたい提携リース以外のリース取引における利用者の便宜、リース提供者・供給者の営業活動に対して不当な影響を及ぼさないよう慎重な配慮をするべきである。
  ・上記日弁連意見に対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
新法制定に当たって、規制の対象となる「提携リース」取引を明らかにし、規制対象とされる取引の範囲を明確化することが必要となるが、その場合の「提携リース」取引の定義をどういうものにするのか、という問題がある。この点、提携リース被害における「リース」は、利用者は中途解約ができず、当初契約に基づくリース料全額の支払義務を負うことを要素とするファイナンス・リース契約が一般的であることから、規制の対象となるのは、全てのリース取引ではなく、そのうちの「ファイナンス・リース取引」に限られることが前提とされるべきである。
次に、実際に深刻な利用者被害が生じており、規制の対象とする必要性が高いのは、全てのファイナンス・リース取引ではなく、そのうちの「提携リース取引」と呼ばれるリース取引であることから、現実に多くの利用者被害が生じ規制の必要性が非常に高い「提携リース取引」を他のリース取引と明確に区別して規制の対象とする必要がある。この点、既に述べたように、提携リース取引には、他のリース取引と比べ、利用者の利益を害する内容の契約が締結されやすい様々な特徴があり、また、被害の手口や被害実態及び被害が生じやすい経済的構造・原因についても他のリース取引と比べて顕著な特徴や違いが見られる。したがって、規制の対象となる「提携リース取引」についての定義を定めるに当たっては、以上のような提携リース被害の手口、特徴、その他の被害実態を十分に検討し、実際に深刻な利用者被害が生じており、利用者の要保護性の強い取引を対象とした、被害実態に即したものとすべきである。ただし、特定の法律構成や契約形態を内容とする取引のみを規制の対象とすると、規制対象外の法律構成や契約形態をとることで容易に脱法が可能となってしまうので、こうした脱法を防止し、現に生じている提携リース被害を残らず規制対象とすることを可能とするためには、提携リース取引の法律構成や契約形態にこだわることなく、実質的に同様の経済的効果をもたらす取引の行為自体に着目した定義付けがなされるべきである。さらに、上記定義付けに当たっては、ファイナンス・リース取引が経済社会において果たしている役割にも鑑み、規制の対象となる提携リース取引をできる限り明確にし、必ずしも深刻な利用者被害が生じているとはいえない提携リース以外のリース取引における利用者の便宜、リース提供者・供給者の営業活動に対して不当な影響を及ぼさないよう慎重な配慮をするべきである。

  ・以上の日弁連意見書をふまえ、第2項では、金融法務事情1081号16頁「リース取引におけるサプライヤーの法的地位」を参考としてリース事業者と販売業者の結び付きが強い客観的要素を提携リース契約の要件とした。本条第2項及び第4項により、規制される提携リース契約の範囲を限定している。
  ・金融法務事情1099号37頁「リース取引の申込み・成約から納入までの契約実務と法的意義」において、通常のリース契約の手順について、概要、以下のように説明されている。①物件の特定。物件の売り主が顧客が希望する物件について、機種・銘柄・仕様・数量・価格・納期を交渉し、顧客が物件を選択し、かつ売買ではなく、リース契約を希望すれば売り主がリース会社を紹介する。②リースの申込み。顧客が希望する物件のリースをリース会社に申込み、リース会社との間で、リース期間・リース料・その他のリース条件を交渉する。③リース見積書の提示。リースの申込みを受けたリース会社が物件価格とリース期間を基礎にしてリース料を試算し、顧客に対して「リース見積書(試算書)」を提示する。④信用調査(審査)。リース会社は顧客の信用調査とその案件の審査を行う。⑤リース契約の締結。リース条件が合意されると、リース会社は顧客とリース契約を締結する。⑥売買契約の締結。リース契約が締結されるとリース会社は直ちに売り主と売買契約を締結する。⑦物件の納入。売り主は売買契約に基づいてその物件を指定の場所に直接納入する。⑧借受証(書)の交付・リースの開始。顧客は納入された物件が希望通りの機種、銘柄、仕様のどであるかどうかを検査した上で、リース会社に借受証を交付する。この借受証の交付日がリースの開始日となり、リース料の債務が発生する。⑨物件代金の支払。リース会社は顧客からの借受証を受け取って売り主に対して物件代金を支払う。
    ところで、提携リースにおいては、通常のリースにおいてリース事業者が手順として行うべき③が省略される他、リース事業者の販売管理費・人件費等の経費削減のため、②・⑤・⑦の手順が全てリース事業者に代わって販売業者において行われており、その関係は密接である。また、提携リースにおいては、当初よりリース契約を前提として顧客との折衝が行われることがほとんどであるので、①の段階のような、物件そのものについての交渉もほとんど存在しない(ほぼ全ての事案において、顧客は、物件価格そのものを認識していない)。
    訴訟等において、リース会社は提携契約の存在を否認したり、提携契約書の提出を拒否する傾向にある。そこで、リース事業者と販売業者等との間の提携関係が特に提携契約書などにより立証されなくとも、リース契約書や物件受領書(借受書)の持参・作成・引渡等の代行は、リース事業者からの委託がなければできないはずであり、リース契約の内容自体の説明は本来リース会社が行うべきものであるから、それを販売業者がリース会社に先立って行っているような場合はそこにリース会社との間の事実上の提携関係があると見て差し支えないし、それらに加えて、自己又は第三者の所有するリース物件をリース事業者に売却する目的で、上記の代行を「業として」することから、両者に提携関係が存在するものとみなす趣旨である。

③  この法律において、「顧客」とは、消費者契約法第2条第1項に定める消費者、営利を目的としない法人及び中小企業基本法第2条第1項に定める中小企業者であって、リース事業者とのリース契約に基づいてリース事業者からリース物件等の提供を受ける者をいう。
【解説】
  ・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第1項総則(2)保護の対象となる顧客の範囲について」に対応する条文である。その内容は以下のとおりである。
(2)  保護の対象となる「利用者」の範囲について
保護の対象となる「利用者」の範囲については、法人であると個人であるとを問わず、また、当該利用者が、営業のため、または営業として契約をするかどうかを問わず、全ての利用者を保護の対象とするべきであり、保護の対象となる「利用者」の範囲に限定を設けるべきではない。
  ・また上記日弁連意見に対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
一般にリース取引における利用者は、事業者がほとんどであり、さらに、提携リース取引における利用者の大多数は、わが国の事業者のほとんどを占める中小零細事業者である。既に述べたように、提携リース取引においては、悪質な供給者(提携業者)によって不当なリース契約が締結されて中小零細事業者が経済的破綻を来すという被害が多数生じている。提携リース被害の予防と被害救済のための立法を考えるのであれば、法による保護の対象となる利用者を消費者に限定することは、結果的にほとんどの利用者の利益の保護が図られないこととなってしまい、規制として無意味である。したがって、新法制定によって利益が保護されるべき「利用者」の範囲は、法人であると個人であるとを問わず、また、当該利用者が、「営業のため、または営業として」契約をするかどうかを問わず、全ての利用者を保護の対象とするべきであって、保護の対象となる利用者に限定を設けるべきではない。

  ・野澤正充ジュリスト1200号115頁によれば、フランスの消費者法典に関する判例においては「消費者」の概念について、事業目的で活動しても、その者の「職業者な専門領域の範囲外」の契約については「消費者」とみなされ、消費者法典の適用がある、としているとされ、近時は「事業活動と直接の関係を有するかどうか」となっているとされているが、いずれもその理由を、かかる事業者も当該契約に関しては「他の消費者と同じく無知の状態にある」という点に存する、とされている。
    しかしながら、事業活動と直接か間接かという判断・解釈について、立証等の問題が残ることから、法律時報1019号82頁において発表されたフランチャイズ規制要綱における「加盟者」の範囲を引用した。このような提携リース規制法の適用範囲の限定により、簡便、かつ、提携リース被害救済の立法事実を充足し得、他方、リース会社は、適切なリース契約を締結すれば何らの問題もなく、何の不利益も生じない。尚、割賦販売法第5条第1号の解釈もフランス法と同様になるべきところ、我が国の判例上、上記の考えが浸透しているとは言い難く、同法においても、注意書きで事業者にも一定の場合、同法が適用される旨明記することが望ましい。

④  この法律において規制の対象となるリース契約は、販売事業者等から第2項各号に定めるいずれかの行為を受けた顧客が、リース事業者との間において締結するリース契約(以下「提携リース契約」という。)をいう。
【解説】
  本条第2項の解説のとおりである。
販売事業者等から本条第2項に定めるような行為を受けた顧客が、その結果としてリース契約を締結した場合は、当該リース契約は提携リース契約であると考えられる。


第2章  提携リース契約

(リース条件の表示)
第3条
    リース事業者は、提携リース契約を締結しようとするときは、顧客に対して、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、提携リース契約に関する次の事項を示さなければならない。
一  リース料総額、リース期間及び支払時期ごとのリース料
二  リース物件の取得価格
三  リース料総額に含まれるリース物件の保険料・固定資産税等実費の額
四  リース料総額にリース物件を設置等するための役務やリース物件の前払保守費用等、役務提供費用を含む場合、それらの役務提供費用の額
五  リース事業者の手数料の料率
六  第1号から第5号に掲げた金額を明示したリース料算出の計算式
七  前号に掲げるもののほか、経済産業省令・内閣府令で定める事項
【解説】
・リース料算出については、次のように説明される(宮内義彦著「リースの知識」第9版)「リース料=物件価格+金利+付随費用(設置費用+固定資産税+保険料)+手数料」。
  よって、契約自由の原則のもとに意思表示の一致が認められるためには、その契約の内容が明示されていることが当然である。
  しかし、現在、提携リース契約で用いられている契約書には、月額のリース料が記載されているだけで、契約書上リース料算出の根拠が明らかでないケースが殆どである。
  このため、リース料算出の根拠が不明確なまま高額のリース契約を締結させられることになる。その結果、物件の市場価額とは著しく乖離した高額のリース契約や、役務の対価・残リース料などが知らないまま上乗せされた高額のリース契約被害が多発している。
  したがって、リース料の決定の根拠と過程を明確にするため、顧客に対する契約内容についての情報提供を義務づけ、契約を締結するか否かの判断材料をできる限り顧客に提供させるべきである。
  この点、オーストラリア消費法によれば「不当」条項の定義について、「(a)契約に基づいて生じる当事者間の権利義務に著しい不均衡を生じさせる場合で(b)条項によってむしろ有利になる当事者の正当な利益を保護することは特段必要でない場合」とされている(消費者法ニュース№83、305頁)ところ、「著しい不均衡」の発生を防止するための当然の記載といえる。
  尚、第4条の説明も参照されたい。

(書面の交付)
第4条
  リース事業者は、提携リース契約を締結しようとするときは、顧客に対して、遅滞なく、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、次の事項について当該契約の内容を明らかにする書面を顧客に交付しなければならない。
一  リース料総額、リース期間及び支払時期ごとのリース料
二  リース物件の取得価格
三  リース料総額に含まれるリース物件の保険料・固定資産税等実費の額
四  リース料総額にリース物件を設置等するための役務やリース物件の前払保守費用等、役務提供費用を含む場合、それらの役務提供費用の額
五  リース事業者の手数料の料率
六  第1号から第5号に掲げた金額を明示したリース料算出の計算式
七  前号に掲げるもののほか、経済産業省令・内閣府令で定める事項
【解説】
・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項行政規制(1)情報提供義務に対応する条文であり、第3条のリース条件の表示規制を具体化し、リース事業者に契約時に書面交付を求めるものである。その内容は以下のとおりである。
(1)  リース提供者の利用者に対する書面交付義務(情報提供義務)
リース提供者に対して、リース料の算出の根拠と過程の明確化及び利用者に対する契約内容についての情報提供を義務づけ、契約を締結するか否かの判断材料をできる限り利用者に提供するよう義務づけるべきである。
具体的には、リース提供者に対し、利用者からリース契約の申込みを受けた段階において、少なくとも以下の事項が記載された書面を作成して利用者に交付すべき義務を負わせるべきである。
① リース提供者が供給者に対して支払うリース契約の対象となる物件の取得価額
② リース料算出の根拠となる事項の金額及びその内訳並びにリース料算出の際の計算式
明示すべき事項
(ⅰ)リース契約の対象となる物件の取得価額
(ⅱ)保険料、固定資産税等の実費の額
(ⅲ)リース提供者の利益、金利の額
(ⅳ)リース料算出の際の計算式
③ その他、民事ルールの内容(中途解約をする場合における違約金の額、中途解約をする場合の精算ルール、その他リース契約を解除等できる場合はその条件など)
またこれに対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
提携リース被害においては、利用者は、毎月のリース料額についての認識はあるものの、リース料の総額についての認識はほとんどなく、リース料算出の根拠に至っては、そもそもリース契約上、利用者に何ら明らかにされないという運用が行われている。このため、利用者はリース料算出の根拠が不明確なまま高額のリース契約を締結させられることになる。その結果、物件の市場価額とは著しくかけ離れた高額のリース契約や、役務の対価・残リース料などが利用者の知らないまま上乗せされた高額のリース契約被害が多発することとなる。したがって、リース契約に基づき利用者及びリース提供者に発生する権利義務の内容だけでなく、リース料算出の根拠と過程を明確にするため、リース提供者に対して契約内容についての情報提供を義務づけ、利用者に対し、契約を締結するか否かの判断材料をできる限り提供させるべきである。以上より、当連合会は、リース提供者に対し、意見の趣旨「2(1)」記載の書面交付義務をリース提供者に対して課する規定の導入を求めるものである。

・日弁連意見書の民事ルールの表示については政令に委ねる趣旨であるが、リース契約の撤回と既払い金返還義務に関する第22条には、若干の内容を明示した。
・提携リースにおいては、リース事業者が、販売業者等を利用して、顧客との間でリース契約を締結しようとするときは、契約締結に際し、契約内容を記載した書面を顧客に交付することとすべきである。
・既に述べたように、金融法務事情1099号37頁「リース取引の申込み・成約から納入までの契約実務と法的意義」において、通常のリース契約の手順について、ユーザーがリース物件を特定し、その導入のためにリース事業者に対してリース契約を申込んで、リース事業者との間で、リース期間・リース料・その他のリース条件を交渉した際、リースの申込みを受けたリース事業者が物件価格とリース期間を基礎にしてリース料を試算し、ユーザーに対して「リース見積書(試算書)」を提示することになるはずである。
  ところが、提携リース契約においては、このようなリース見積書がリース事業者から交付されることはなく、リース契約の直接の当事者ではない、販売店がリース事業者に代わり、勧誘行為、契約締結事務手続の大部分を行っている。そのため、販売店が自らの売上増大を狙い、新たな契約を獲得するため不適正な勧誘行為を行う事例が多発しているが、このような手続の省略が被害を多発させている原因となっていることは明白である。
  したがって、販売店による不適正な勧誘行為を防止し、通常のリース契約と同様、ユーザーに対して契約内容を十分理解させた上でリース契約を締結させ、もって被害を防止すべきである。

(提携リース契約の対象となる物件等の規制)
第5条
①  提携リース契約の対象となる物件は、移動及び返還が可能な動産及びソフトウェアとする。
②  前条第3号及び同条第4号の各金額は、第3条第2号の金額と合算した合計金額に占める割合が10%を超えてはならない。
③  他のリース契約の中途解約手数料等、前条第1号乃至第3号に定めた以外の金額を前条に掲げる金員に上乗せするなどして、提携リース契約の対価に含めてはならない。
④  リース事業者の手数料の料率は、利息制限法より定められた利息を上回ることはできない。
⑤  本条第1項ないし第3項の規定に反する内容を含む提携リース契約は、無効とする。
⑥  本条第4項の規定に反する内容を含む提携リース契約は、利息制限法により定められた利息を超過したリース料の支払については、無効とする。
【解説】
・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項行政規制(6)・(7)に対応する条文である。その内容は以下のとおりである。
(6)  役務の対価をリース契約の対象とすることの禁止
リース契約の対象は、「動産及びソフトウェア」に限定されるものとし、供給者等が利用者に対して行う役務の対価をリース契約の対象とすることは、これを禁止するべきである。
またこれに対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
提携リース取引においては、リースの対象物件の市場における通常の調達価額とはおよそかけ離れた高額のリース契約を締結させられる被害が多発している。このような被害が起こる原因は、当該リースの対象物件の価額が市場における通常の調達価額とはおよそかけ離れて高額に設定されていることや、リース物件の調達価額以外の費用である供給者の利用者に対する役務の対価(例えば、いわゆるホームページリースにおけるホームページの作成や更新などの役務の対価など)が利用者が認識できないような形で(リース料の内訳や算出要素はリース契約書では明示されてないことから)リース料の中に盛り込まれている運用が横行していることにある。提携リースの対象物件の価額について、供給者の言い値での契約を締結せざるを得ないという実情も問題であるが、対象物件が市場における通常の調達価額と比べて著しく高額といえるかどうかという形での規制の導入は技術的に容易でないことから、まずは、リースの算出に際して契約書に記載のない役務の対価が事実上含まれているという、リース料算出の根拠として不明確・不合理な運用自体を法的に禁止するべきである。さらにいえば、供給者の利用者に対する役務の対価をリース契約の対価として盛り込むという内容の契約は、リース契約の範疇から逸脱するものであり、かかる契約を締結することは、利用者が消費者である場合に限っていえば、割賦販売法の脱法に他ならない。したがって、リース契約の対象は、「動産及びソフトウェア」に限定されるものとし、リース取引に関連して供給者が利用者に対して行う役務の提供等のサービスの対価をリース契約の対象とすること自体を端的に禁止するべきである。
(7)  残リース料等の上乗せの禁止
旧契約における未払リース料や中途解約金を新たなリース契約におけるリース料に盛り込み・上乗せをすることは、これを禁止するべきである。
またこれに対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
残リース料の上乗せとは、リース期間未了などにより旧契約に基づくリース料の支払義務が残存しているにもかかわらず、さらに別途新規契約をして、新規契約のリース料に旧契約の残リース料支払義務や中途解約金支払義務等を組み込むことである。このような残リース料の上乗せが横行していることから、利用者は支払能力を超える過大なリース債務を負う結果となり、結果経済的破綻を来すという被害が跡を絶たない。残リース料の上乗せは、既にリース契約をしている者に対して、さらに勧誘をして不必要なリース契約を次々契約させる際に(いわゆる過量リース)、既存のリース契約の残リース料の存在を見えないようにするために悪用されていることも多く、残リース料の上乗せ自体に何らの規制もないことがかかる被害をもたらしているといっても過言ではない。さらに、残リース料の上乗せがなされる場合においては、残リース料を新規契約金額に上乗せし、さらにその金額にリース料率をかけて、新規契約におけるリース料を算出しているが、残リース料自体に既に旧契約におけるリース提供者の手数料・保険料・固定資産税・金利などがオンされており、この金額にさらにリース料率をかけることになることから、リース提供者は利益を二重取り(複利の徴収)している点も利用者の利益を害するものとして非常に問題である。したがって、かかる手法に対する対策としては、端的に、旧契約における未払いリース料や中途解約金を新たなリース料に盛り込むこと自体を禁止するべきである。

・本条第1項ないし第4項は、いずれも設備の賃貸借というリース契約の本質から当然導かれる事項(第1項ないし第3項)、またはリース契約が暴利的な内容となってはならないという要請(第4項)に基づくものである。
よって、本条は強行法規として位置づけられるべきであるから、第5項により第1項ないし第3項に反する内容を含む提携リース契約は無効であることを明らかにし、また、第6項により、第4項の利息制限法の定めを超過するリース料の支払については無効であることを明らかにした。

・第2項については、ホームページの作成や管理等の役務をリース契約の対象とすることを禁止する趣旨であるが、リース契約を締結する際の必要最小限の役務提供をリース契約の対価とすることは、以下に述べる過去のリース税制からしてその実態を容認することとした。
いわゆるメンテナンス・リースにおいても前払保守費についてリース料総額に含むことを禁止することになるが、別途の保守契約(リース会社においては保守料回収代行契約)を締結すれば足りるから、このような規制をしてもメンテナンス・リース契約を否定することにはならない。
役務提供費用を10%という割合で容認するのは、過去のリース税制適用に関する、リース取引に関する会計基準の適用指針(全日本公認会計士協会会計基準委員会適用指針32を参考にしたものである。尚、リース税制において、その対象となるリース物件は、「資産」とされているのであり、役務提供をリース物件として、リース税制と処理することは違法である。ちなみに、リースバック取引に関する国税不服審判所平成18年10月19日裁決は、リース業を営む審査請求人が、学校法人L大学との間でリース取引中のリース物件をいったんK社から買い取り、直ちにK社にリースバックした一連の取引を、原処分庁が、実質的には請求人とJ社等との間の金銭の貸借取引に当たるとして行った法人税並びに消費税及び地方消費税の更正処分等に対し、請求人が、それぞれの一連の取引は賃貸借を目的としたリース取引に当たるから、同処分等のうち、それぞれの一連の取引を金銭の貸借取引とした部分は不当であるとして、その一部の取消しを求めた事案であるが、裁決の中で、「請求人は、本件K社とのリースバック取引を賃貸借を目的とした取引であると主張するが、上記イの(ロ)のCのとおり、本件K社とのリースバック取引を行うK社の目的は、本件賃貸物件の売買益を確定させることにあり、一方の請求人においても、別表3(別表3では、K社とのリース取引におけるリース物件の内訳等として、物件名が「電源工事、機器排水工事、ラックシステム、ネフェロメータ、プロセッシングモジュール、アナライザー、搬送システム撤去工事、検査機器電源工事、給排水撤去工事、仕様変更作業費、検体検査自動化システム、自動分析装置保守費」となっている)のとおり、本件賃貸物件の中には一部に法人税施行令第136条の3第3項に規定する「資産」には当たらない、すなわち、ファイナンス・リース取引の対象にはなり得ない「将来の役務提供に係る前払保守費や工事代金」が含まれているにもかかわらず、それを除くことなくすべてをリース物件とした上で行った本件K社とのリースバック取引を賃貸借を目的とした取引と主張していることからすると、請求人の主張は、単に本件K社とのリースバック取引におけるファイナンス・リース取引の契約形式だけを言い当てたにすぎず、当を得た主張とはいえない。本件K社とのリースバック取引はその一連の取引が金銭の貸借取引に当たるとの原処分庁の判断は、相当といえる。」と判断している。

(不適切な勧誘の禁止)
第6条
  リース事業者又はリース事業者から提携リース契約書の交付を受けてこれを顧客に提示する販売業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
一  提携リース契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し事実と異なることを告げる行
  為
二  提携リース契約の締結又はその勧誘に関して、顧客の利益となる旨を告げ、かつ、当該事項について当該顧客の不利益となる事実を故意に告げない行為
三  顧客に対し、将来の変動が不確実な事項について断定的判断を提供して提携リース契約の締結の勧誘をする行為
四  顧客が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しない行為。
五  顧客が、勧誘をしている場所から退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該顧客を退去させない行為
六  提携リース契約の締結の勧誘の要請をしていない顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、提携リース契約の締結の勧誘をする行為
七  提携リース契約の締結の勧誘を受けた顧客が当該リース契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する行為
八  顧客に対して、リース料の一部等名目の如何にかかわらず金銭の提供ないし債務の負担を約束することを告げて勧誘する行為
九  顧客に対して、提携リース契約における顧客の主体を偽って契約を締結するよう勧誘する行為
十  顧客に対して、リース物件の引渡等義務の一部又は全部を行わないことを内容とする契約を締結するよう勧誘する行為
十一  顧客に対して、前条に違反する内容のリース契約を締結するよう勧誘する行為
十二  前各号に掲げるもののほか、顧客の保護に欠けるものとして経済産業省令・内閣府令で定める行為
【解説】
  ・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項行政規制(2)に対応する条文であり、特定商取引法、割賦販売法等を参考にした。その内容は以下のとおりである。
(2)  不招請勧誘の禁止
リース提供者からリース契約の締結についての媒介の委託を受けた供給者その他の第三者(供給者からさらにリース契約の締結についての媒介の再委託を受けた者。2以上の段階にわたる委託を含む。以下「供給者等」という。)が、ファイナンス・リース契約の締結を勧誘をするに際しては、勧誘に先立って、勧誘の対象者に対し、「勧誘を受ける意思があること」について確認すべき義務を課し、勧誘を受けることを承諾した者以外の者に対する勧誘を禁止するべきである。
  ・また上記日弁連意見に対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
提携リースの勧誘は訪問販売の形式がほとんどであり、利用者は不意打ち的に不要なリース契約についての勧誘を受け、被害に遭っている。したがって、特定商取引法3条の2などを参考にして、供給者等に、リース契約の締結を勧誘をするに際しては、勧誘を行おうとする者に対して「勧誘を受ける意思があること」についての確認を行うべき義務を課し、勧誘を受けることを承諾した者以外の者に対する勧誘を禁止するべきである。かかる規制を設けることによって、利用者は無用な契約の勧誘を受けることがなくなり、供給者等による不適正な勧誘に基づくリース被害の発生を未然に防止することが大いに期待できる。なお、この規制は直接的には、実際にリース契約の締結の勧誘を行う供給者等に対する規制であるが、供給者等の勧誘は、リース提供者の勧誘と同視されるべきであることから、禁止規定の名宛人としては、供給者等のみならず、リース提供者も含まれるものとすべきである。

・具体的に説明すると、以下のとおりである。
①  一号ないし五号は、消費者契約法4条に相当するものである。
②  六号は不招請勧誘を禁止し、七号は再勧誘を禁止する規定である。
  提携リースの勧誘は訪問販売形式がほとんどであり、顧客は、不意打ち的に不要なリース契約についての勧誘を受け、被害に遭っているため、このような規定が必要となる。
③  八号は、近時被害が多発しているいわゆるキャッシュバック勧誘を禁止する規定である。
④  九号は、いわゆる名義貸しや、事業用の使用目的がないのに法人名義で契約を締結させようとする不当な勧誘を禁止する規定である。
⑤  十号は、いわゆる空リース勧誘を禁止する規定である。
⑥ 十一号は、第5条は役務の提供をリース契約の対象とすることを原則として禁止する旨の規定であるが、第5条を受けてこれを勧誘時においても禁止する旨の規定である。

(リース事業者の調査義務等)
第7条
①  リース事業者は、提携リース契約を締結するために、継続又は反復してリース契約書または物件受領書(借受書)を販売業者等に交付する場合、その書類の交付に先立って、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、販売業者等による前条各号のいずれかに該当する行為の有無に関する事項であって経済産業省令・内閣府令で定める事項を調査しなければならない。
②  リース事業者は、顧客と提携リース契約を締結するため、販売業者等から顧客の記入したリース契約書または物件受領書(借受書)を受領した時、前条第1号から第12号に定めた勧誘、その他不適切な勧誘の有無を、直接、顧客に確認するなどして調査しなければならない。
③  リース事業者は、顧客と提携リース契約を締結後、顧客から提携リース契約に関する苦情があった場合、その苦情内容について調査し、かつ、これに対して適切な処置をとらなければならない。
④  リース事業者は、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、前3項の規定による調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
⑤  販売業者等は、本条第1項乃至第3項の規定による調査に協力するよう努めなければならない。
【解説】
・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項行政規制(3)①に対応する条文である。その内容は以下のとおりである。
(3)  リース提供者の供給者等に対する調査義務及び不適正な勧誘に基づくリース契約締結の禁止
① リース提供者の調査義務
  リース提供者に対して、以下の調査義務を課すべきである。
(ⅰ)リース契約締結に先だって、供給者等と提携関係を結ぶ場合に際し、供給者等を調査すべき義務(業務提携契約締結段階)
(ⅱ) リース契約締結に先立って、利用者から申込みを受けたリース契約について、供給者等が行った勧誘状況について調査すべき義務(リース契約締結の勧誘段階)
(ⅲ)リース契約締結後であっても、利用者から苦情(主に供給者等に対する苦情)があった場合には、その苦情内容についての調査を行い、これに対して適切な措置を講ずべき義務
  ・またこれに対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
供給者等が不適正な勧誘を行って提携リース被害を発生させることを未然に防止するためには、リース提供者による供給者等に対する管理・監督を実効化することが必要である。具体的には、リース提供者による提携先の供給者等に対するチェック機能を充実させるため、リース提供者による供給者等に対する調査義務を課すことが妥当である。この調査義務は、(ⅰ)リース提供者が供給者と業務提携関係を作る段階(ⅱ)供給者等が利用者に対して個別のリース契約の締結を勧誘する段階(ⅲ)リース契約の締結後であっても利用者からリース提供者に対してリース契約に関する苦情があった段階の3つの段階で必要になる。なぜなら、(1)の段階における調査により、リース提供者が不適正な供給者との業務提携関係を構築することを未然に防止することが可能となり、(ⅱ)の段階における調査により、供給者等が不適正な勧誘行為を行ってリース契約を締結することを未然に防止することが可能となり、(ⅲ)の調査により、(ⅰ)と(ⅱ)の調査義務をすり抜けた不適正な提携リース取引について、リース提供者が、利用者の苦情を端緒として、当該利用者保護のための適切な措置を講じたり、問題のある供給者等との間の業務提携関係を随時チェックし、見直すことが可能となるからである。また、(ⅱ)の不適正な勧誘としてその有無を調査すべき事項については、提携リース取引において実際に被害を生じさせている勧誘形態を可及的に広汎に類型化して明示しておくべきである。

  ・上記日弁連意見書記載のとおりの規制の必要性があることから、割賦販売法35条の3の5等を参考にして、規定した。

(不適切な勧誘があった場合等のリース契約書等交付等の禁止)
第8条
  リース事業者は、第7条第1項乃至第3項の規定による調査その他の方法により知った事項からみて、販売業者等が次の各号のいずれかに該当する行為をしたと疑われるときは、当該販売業者等に対し、提携リース契約書及び物件受領書(借受書)を交付してはならず、提携リース契約の締結を代行させてはならず、また当該販売業者から購入した物件を対象とする提携リース契約を締結してはならない。
一  第6条に規定する行為
二  特定商取引に関する法律第6条第1項から第3項まで、第21条各項、第34条第1項から第3項まで、第44条各項又は第52条第1項若しくは第2項の規定に違反する行為
三  消費者契約法第4条第1項から第3項までに規定する行為
【解説】
・リース事業者による販売店に対する管理・監督を実効化するため、リース事業者に対し、リース契約を締結するに先だって、販売店等が行う具体的な勧誘状況についての調査義務を課すべきである。
  また、契約の勧誘の段階において、販売店等に不適正な勧誘があったことが疑われる場合には、販売業者等に対し、リース契約書及び物件受領者(借受書)を交付してはならず、かつリース契約の締結を代行させてはならないし、自ら締結することもできない旨の規定を設け、リース事業者による販売店に対する管理・監督の実効化を図るべきである。

(不適切な勧誘があった場合等のリース契約締結の禁止)
第9条
  リース事業者は、第7条第2項の規定による調査その他の方法により知った事項から見て、販売業者等が、提携リース契約締結の勧誘に際して、第6条各号のいずれかに該当する行為をした可能性を認めるときは、当該勧誘の相手方である顧客に対し提携リース契約の申込みをし、又は当該勧誘の相手方である顧客から受けた提携リース契約の申込みを承諾してはならない。
【解説】
  ・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項行政規制(3)②に対応する条文である。その内容は以下のとおりである。
②  供給者等に不適正な勧誘があった場合のリース契約締結の禁止
リース提供者は、前記①(ⅱ)の調査の結果、利用者から申込みを受けたリース契約について、供給者等に「不適正な勧誘」があったことが疑われる場合においては、リース契約の締結をしてはならない(禁止)こととするべきである。
ここで、契約の締結が禁止される「不適正な勧誘」としては、少なくとも以下の勧誘とし、リース提供者は①(ⅱ)の調査に際しては以下の(ⅰ)から(ⅷ)までの事情の有無について申込者に直接確認するなど適切な方法により調査すべきである。
(ⅰ)不実告知、不利益事実の不告知を伴う勧誘をすること。
(ⅱ)断定的判断の提供を伴う勧誘をすること。
(ⅲ)不退去、退去妨害、威迫による困惑を伴う勧誘をすること。
(ⅳ)不招請勧誘の禁止規定に違反して勧誘をすること。
(ⅴ)供給者等が、利用者に対して、リース料の一部または全部の支払を負担する(いわゆるキャッシュバックを約する場合など)ことを条件とする内容の契約を締結するよう勧誘をすること。
(ⅵ)供給者等が、利用者に対して、リース契約における利用者の主体を偽って(いわゆる名義貸しなど)契約を締結するよう勧誘すること。
(ⅶ)供給者等が、利用者に対して、リース物件の引渡等を行わない(いわゆる空リース)ことを内容とする契約を締結するよう勧誘すること。
(ⅷ)供給者等が、利用者に対して、役務の対価や残リース料をリース契約の対象とする内容の契約を締結するよう勧誘すること。
  ・また上記日弁連意見に対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
供給者等が不適正な勧誘を行って提携リース被害を発生させることを未然に防止するためには、リース提供者による供給者等に対する個別勧誘時の調査義務を課すだけではなく、その調査の結果、供給者等に不適正な勧誘があったことが疑われる場合には、リース提供者は当該利用者との間でリース契約を締結してはならないという禁止規定を導入すべきである。なぜなら、かかる規定を導入することによって初めて不適正な勧誘に基づくリース契約の締結の防止が具体的に可能となるからである。また、リース契約締結の禁止が求められる「不適正な勧誘」としては、提携リース取引において実際に被害を生じさせている勧誘形態を可及的に広汎に類型化しておくべきである。

  ・上記日弁連意見書記載のとおりの規制の必要性が認められることから、割賦販売法が、個別クレジットを行う事業者に訪問販売等を行う加盟店の行為について調査することを義務づけ、不適正な勧誘があれば、消費者へ与信することを禁止している(割賦販売法35条の3の5、35条の3の7)ことを参考にして、規定した。

(顧客の支払能力調査義務及び支払能力を超える提携リース契約の禁止)
第10条
①   リース事業者は、販売業者等を利用して、顧客と提携リース契約を締結しようとする場合には、その契約の締結に先立って、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、年収、預貯金、提携リース契約・信用購入あっせん等に係る債務の支払の状況、借入れの状況その他の顧客の支払可能見込額を算定するために必要な事項として経済産業省令・内閣府令で定めるものを調査しなければならない。ただし、当該顧客の保護に支障を生ずることがない場合として経済産業省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
②  本条における支払可能見込額は、経済産業省令・内閣府令で定める。
③  リース事業者は、販売業者等を利用して、顧客と提携リース契約を締結しようとする場合において、顧客の支払総額のうち1年間に支払うこととなる額が、前条第1項本文の規定による調査により得られた事項を基礎として算定した支払可能見込額を超えるときは、当該提携リース契約を締結してはならない。ただし、当該顧客の保護に支障を生ずることがない場合として経済産業省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
④  リース事業者は、第1項本文の規定による調査を行うときは、指定信用情報機関が保有する特定信用情報を使用しなければならない。
⑤  リース事業者は、提携リース契約を締結した場合には、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、第1項本文の規定による調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
【解説】
・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項行政規制(4)に対応する条文である。その内容は以下のとおりである。
(4)  利用者の支払能力調査義務及び支払能力を超えるリース契約締結の禁止
リース提供者に、リース契約を締結するに先立って、申込者について、指定信用情報機関の信用情報の利用その他の方法により、申込みを受けたリース契約についての支払可能見込額を調査する義務を課し、当該リース契約にかかる支払額が支払可能見込額を超える場合には、リース契約の締結を禁止するべきである。
また、支払能力調査義務を実効化するため、リース提供者の支払能力の調査に当たって照会先となる指定信用情報機関を定めるとともに、リース提供者に対して、
① リース契約を締結した場合には、指定信用情報機関に対して当該契約についての利用者の信用情報や契約情報を登録すること。
② 支払能力の調査に当たっては、指定信用情報機関に対する信用情報の照会を義務づけ、これを参照して調査を行うこと。
を義務づけるべきである。
  ・また上記日弁連意見に対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
提携リース被害においては、利用者の支払能力を超える高額のリース契約が締結され、利用者が経済的に破綻を来すという被害が跡を絶たない。支払能力を超える高額のリース契約の発生を未然に防止するためには、リース提供者に対し、契約を締結するに先立って、指定信用情報機関の情報の利用その他の方法により、当該利用者の支払可能見込額及び、申込みを受けたリース契約における支払額が、当該利用者の支払可能見込額を超えるものとならないかどうかについて調査をさせ、支払可能見込額を超えるものとなる場合には、そもそも当該リース契約は利用者の支払能力を超えるものとしてその契約の締結を禁止させることが必要である。クレジット取引を規制する割賦販売法においても支払能力を超える過大なクレジットを防止するため、同様の規制が既に導入されているところである。以上より、リース提供者に対し、リース契約を締結するに先立って、信用情報機関の情報の利用その他の方法により、当該申込者について、申込みを受けたリース契約についての支払可能見込額についての調査義務を課し、当該リース契約にかかる支払額が支払可能見込額を超える場合には、リース契約の締結を禁止するべきである。
なお、支払能力の調査に当たっては、信用情報機関に正しい信用情報の蓄積され、正しい信用情報がリース提供者に対して提供されることが必要となる。したがって、割賦販売法における支払能力調査義務と同様、支払能力調査義務の調査に当たって照会先となる指定信用情報機関を定めるとともに、リース提供者に対しては、①リース契約を締結した場合には、指定信用情報機関に対して当該契約についての利用者の信用情報や契約情報を登録すること②支払能力の調査に当たっては、指定信用情報機関に対する信用情報の照会を義務づけ、これを参照して調査を行うことを義務づけるべきである。

  ・上記日弁連意見書記載のとおりの規制の必要性が認められることから、割賦販売法が、個別クレジット業者に対し、契約締結前に契約者の収入、預貯金、商品の価額、過去のクレジットの支払状況、過去の借入の状況などの項目について、指定信用情報機関を利用した支払能力調査を義務付けるとともに、支払能力を超える与信を禁止している(割賦販売法35条の3の3、35条の3の4)ことを参考にして規定した。
    尚、リース事業者は、もともと与信管理を行っており、このような調査を義務づけたとしても過度な負担を求めることにはならない。

(過量リース契約についての調査義務及び過量リース契約締結の禁止)
第11条
①  リース事業者は、提携リース契約を締結しようとする場合には、その契約の締結に先立って、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、提携リース契約が、顧客の日常生活または日常業務において通常必要とされる分量を著しく超える量の契約に該当するおそれの有無に関する事項として経済産業省令・内閣府令で定めるものを調査しなければならない。ただし、当該顧客の保護に支障を生ずることがない場合として経済産業省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
②  リース事業者は、提携リース契約を締結しようとする場合において、提携リース契約が、顧客の日常生活または日常業務において通常必要とされる分量を著しく超える量の契約に該当するおそれがあるときは、当該提携リース契約を締結してはならない。ただし、当該顧客の保護に支障を生ずることがない場合として経済産業省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
③  リース事業者は、第1項本文の規定による調査を行うときは、指定信用情報機関が保有する特定信用情報を使用しなければならない。
④  リース事業者は、提携リース契約を締結した場合には、経済産業省令・内閣府令で定めるところにより、第1項本文の規定による調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
【解説】
・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項行政規制(5)に対応する条文である。その内容は以下のとおりである。
(5)  過量リース契約についての調査義務及び過量リース契約締結の禁止
リース提供者に、リース契約の締結に先だって、利用者から申込みを受けたリース契約が、利用者の日常生活(当該リース契約が利用者の営業のため、若しくは、営業としてなされていない場合)または日常業務(当該リース契約が利用者の営業のため、若しくは、営業としてなされた場合)において、通常必要とされる分量を著しく超える量の契約に該当するおそれがないかどうかについての調査義務を課し、そのおそれがある場合には、リース契約の締結をしてはならないもの(禁止)とするべきである。
また、過量リース契約についての調査を実効化するため、リース提供者に対して、調査に当たっては、指定信用情報機関に対する契約情報についての照会を義務づけるべきである。
  ・また上記日弁連意見に対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
提携リース取引においては、供給者等が専ら訪問販売の形式で勧誘を行い、利用者が通常必要とされる分量を著しく超える量の物件について次々とリース契約を締結させられるという被害(過量リース契約)が多発している。こうした事態は、訪問販売により日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える量の商品の販売が行われる訪問販売による過量販売被害(特定商取引法9条の2参照)と同様のものである。そこで、こうした過量リース被害の発生を未然に防止するためには、リース提供者に、リース契約の締結に先立って、利用者から申込みを受けたリース契約が、利用者の日常生活(当該リース契約が利用者の営業のため、または、営業としてなされていない場合)または日常業務(当該リース契約が利用者の営業のため、または、営業としてなされた場合)において、通常必要とされる分量を著しく超える量の契約に該当するおそれがないかどうかについての調査義務を課すとともに、それに該当するおそれがある場合においては、リース契約の締結を禁止することが必要である。具体的には、リース提供者は、供給者等の勧誘状況の調査及び支払能力の調査に際し、指定信用情報機関に対して、当該利用者の過去の契約状況を照会するなどして、申込みのあったリース契約が上記過量リース契約に該当するかどうかについても調査をすべき義務を課すとともに、過量リース契約に該当するおそれがある場合には、不適正な勧誘があったことが疑われる場合や支払可能見込額を超える場合と同様、リース契約の締結を禁止することにより、過量リース被害の発生を未然に防止すべきである。

  ・上記日弁連意見書記載のとおり、その必要性が認められることから、割賦販売法が、個別クレジットにおいて、訪問販売による通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約等(過量販売)がなされた場合、契約締結から1年以内であれば解除でき、個別クレジット業者に対して、既払金の返還を求めることができる(割賦販売法35条の3の12)ものとしていることを参考に規定した。


第3章  リース事業者の登録等

(リース事業者の登録)
第12条
  リース事業は、経済産業省に備えるリース事業者登録簿に登録を受けた法人(以下「登録リース事業者」という。)でなければ、業として営んではならない。ただし、割賦販売法第35条の3の60第1項第4号の団体については、この限りでない。
【解説】
・日弁連意見書第1『意見の趣旨』第4項求められる法規制の内容(行政規制)(8)
を参考とした。
・行政規制を遵守しない不適正な業者をリース取引から排除するため、リース提供者(提携リース取引を行うリース提供者のみならず、全てのリース業を行う事業者を対象とすることが望ましい)については、割賦販売法上、個別信用購入あっせん業者について登録制を導入しているのと同様の趣旨から、これを登録制とするなどの参入規制を設けるべきである。
このことによって、一定の財産的基盤や法令遵守態勢が整った業者のみがリース取引に参画することが可能となる反面、財産的基盤が脆弱であったり、法令遵守態勢が整っていないリース提供者が取引から排除されることとなって、取引の健全化が期待できるからである。
・以上の理由から、割賦販売法第第35条の3の23~第35条の3の35を参考にして規定した。

(登録の申請)
第13条
①  前条の登録を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を経済産業大臣に提出しなければならない。
一  名称
二  本店その他の営業所の名称及び所在地
三  資本金又は出資の額
四  役員(業務を執行する社員、取締役若しくは執行役又はこれらに準ずる者をいい、いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し、これらの者と同等以上の支配力を有するものと認められる者として経済産業省令で定めるものを含む。以下この節及び次節において同じ。)の氏名
②  前項の申請書には、定款、登記事項証明書その他経済産業省令で定める書類を添付しなければならない。ただし、経済産業省令で定める場合は、登記事項証明書の添付を省略することができる。
③  前項の場合において、定款が電磁的記録で作られているときは、書面に代えて電磁的記録(経済産業省令で定めるものに限る。)を添付することができる。

(登録及びその通知)
第14条
①  経済産業大臣は、前条第1項の規定による登録の申請があったときは、次条第1項の規定により登録を拒否する場合を除くほか、前条第1項各号に掲げる事項及び登録年月日をリース事業者登録簿に登録しなければならない。
②  経済産業大臣は、第12条の登録をしたときは、遅滞なく、その旨を申請者に通知しなければならない。

(登録の拒否)
第15条
①  経済産業大臣は、前条第1項の申請書を提出した者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は当該申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
一  法人でない者
二  資本金又は出資の額が顧客を保護するため必要かつ適当であると認められる金額で政令において定めるものに満たない法人
三  資産の合計額から負債の合計額を控除した額が資本金又は出資の額の100分の90に相当する額に満たない法人
四  第19条第1項又は第2項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない法人
五  この法律又は貸金業法(昭和五58年法律第32号)の規定により罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない法人
六  役員のうちに次のいずれかに該当する者のある法人
イ  破産者で復権を得ないもの
ロ  禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ハ  この法律、貸金業法若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)の規定(同法第32条の2第7項の規定を除く。)に違反し、又は刑法(明治40年法律第45号)若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正15年法律第60号)の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ニ  登録リース事業者が第19条第1項又は第2項の規定により登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30日以内にその登録リース事業者の役員であった者で、その処分のあった日から5年を経過しないもの
ホ  暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)
七  暴力団員等がその事業活動を支配する法人
八  暴力団員等をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用するおそれのある法人
九  提携リース契約に係る業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある法人として経済産業省令で定めるもの
十  第10条第1項本文に規定する調査、その他この法律に定める措置の円滑な実施を確保するために必要な体制、顧客の苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制その他の提携リース契約の公正かつ適確な締結を確保するために必要なものとして経済産業省令で定める体制が整備されていると認められない法人
②  割賦販売法第15条第2項及び第3項の規定は、第13条第1項の規定による登録の申請があった場合に準用する。
【解説】
  ・第15条には、要件を明示して、これに該当する場合経済産業大臣は登録を拒否しなければならないことを定める割賦販売法第第35条の3の26を参考として規定した。

(変更登録の申請)
第16条
①  登録リース事業者は、第13条第1項各号に掲げる事項について変更があったときは、遅滞なく、その変更に係る事項を記載した変更登録の申請書を経済産業大臣に提出しなければならない。
②  第13条第2項、第14条並びに前条第1項、割賦販売法第15条第2項及び第3項の規定は、前項の規定による変更登録の申請に準用する。

(登録簿の閲覧)
第17条
  経済産業大臣は、リース事業者登録簿を一般の閲覧に供しなければならない。

(改善命令)
第18条
  経済産業大臣は、登録リース事業者が第15条第1項第10号の規定に該当することとなったと認めるときは、その必要の限度において、当該登録リース事業者に対し、リースに係る業務の運営を改善するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
【解説】
  ・第18条は、第15条の登録拒否要件のうち、法令遵守の社内体勢を整備していない状態に該当することとなったと認めるとき、経済産業大臣は必要な措置を命ずることができる旨を、割賦販売法第35条の3の31を参考として定めた。
具体的な義務違反行為に対する処分権限ではなく、法令遵守の社内体制の整備を広く行政処分の対象とする規定である。

(登録の取消し)
第19条
①  経済産業大臣は、登録リース事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消さなければならない。
一  第15条第1項第2号又は第5号から第9号までのいずれかに該当することとなったとき。
二  不正の手段により第12条の登録を受けたとき。
②  経済産業大臣は、登録リース事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消すことができる。
一  第18条の規定による命令に違反したとき。
二  第16第1項の規定による申請をせず、又は虚偽の申請をしたとき。
③  経済産業大臣は、登録リース事業者が前項第1号の命令に違反した場合において、前項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。
④  内閣総理大臣は、登録リース事業者が第2項第1号の命令に違反した場合において、顧客の利益を保護するため必要があると認めるときは、経済産業大臣に対し、同項の規定による処分に関し、必要な意見を述べることができる。
⑤  経済産業大臣は、第1項又は第2項の規定により登録を取り消したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を当該登録リース事業者であった者に通知しなければならない。
【解説】
・登録リース事業者またはその役員が本法または貸金業法違反により罰金以上の刑に処せられた場合、暴力団員等を従事させた場合、不正手段で登録を行った場合、または登録名義貸しの禁止に違反した場合、経済産業大臣は登録リース事業者の登録を取り消す旨、改善命令に違反したとき、登録事項変更の申請義務に違反したとき、経済産業大臣は登録リース事業者の登録を取り消すことができる旨を、割賦販売法第第35条の3の32を参考として定めた。

(登録の消除)
第20条
①  経済産業大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、リース事業者登録簿につき、その登録リース事業者に関する登録を消除しなければならない。
一  前条第1項又は第2項の規定により登録を取り消したとき。
二  リースの営業を廃止したことが判明したとき。
②  前条第3項の規定は、前項第2号の規定により登録を消除した場合に準用する。

(販売業者等の契約の解除)
第21条
①  登録リース事業者が第19条第1項若しくは第2項の規定により登録を取り消され、又は前条第1項第2号の規定により登録を消除されたときは、当該登録リース事業者とリース契約締結を代行するなどの契約を締結した販売業者等は、将来に向かってその契約を解除することができる。
②  前項の規定に反する特約は、無効とする。
【解説】
・これらは、「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項行政規制(8)に対応する条文である。その内容は以下のとおりである。
(8)  行政規制の実効化
上記行政規制を遵守しない不適正な業者をリース取引から排除するため、
① リース業について登録制の開業規制
② リース提供者が行政規制に違反した場合の業務改善命令や業務停止命令
及びその処分を下す前提としての報告徴収・立入検査等を導入するべきである。
  ・また上記日弁連意見に対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
意見の趣旨各記載の行政規制を実効化するため、リース提供者(提携リース取引を行うリース提供者のみならず、全てのリース業を行う事業者を対象とすることが望ましい)については、割賦販売法上、個別信用購入あっせん業者について登録制を導入しているのと同様の趣旨から、これを登録制とするなどの参入規制を設けるべきである。このことによって、一定の財産的基盤や法令遵守態勢が整った業者のみがリース取引に参画することが可能となる反面、財産的基盤が脆弱であったり、法令遵守態勢が整っていないリース提供者が取引から排除されることとなって、取引の健全化が期待できるからである。また、行政規制に違反した場合については、監督官庁が業務改善命令、業務停止命令等の処分を行えるようにし、さらに、処分を下す前提としての報告徴収・立入検査などができるなどの制度を構築することが、行政規制が実効性あるものとなるために必要である。

  ・上記日弁連意見書記載のとおりの必要性が認められることから割賦販売法等を参考にして規定した。

第4章  提携リース契約における顧客の保護

(提携リース契約の申込みの撤回等)
第22条
①   顧客は、提携リース契約について、書面により、当該提携リース契約の申込みの撤回等(次の各号の提携リース契約の申込みの撤回又は次の各号の提携リース契約の解除をいう。以下この条において同じ。)を行うことができる。ただし、第4条の書面にリース物件の引渡時期若しくは権利移転の時期及び本条に記載した提携リース契約の申込みの撤回または解除に関する事項が記載されている場合、その書面を受領した日(その日前に同条第一項の書面を受領した場合にあっては、当該書面を受領した日)から起算して8日を経過したとき(顧客が、リース事業者若しくは販売業者等が提携リース契約の締結について勧誘をするに際し、若しくは申込みの撤回等を妨げるため、申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は若しくはリース事業者販売業者等が提携リース契約を締結させ、若しくは申込みの撤回等を妨げるため、威迫したことにより困惑し、これらによって当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該顧客が、当該リース事業者又は当該販売業者等が経済産業省令・内閣府令で定めるところにより申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して8日を経過したとき)は、この限りでない。
②  申込みの撤回等は、前項本文の書面を発した時に、その効力を生ずる。
③  申込みの撤回等があった場合においては、リース事業者及び販売業者等は、当該申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
④  リース事業者は、第1項本文の書面を受領した時には、直ちに、販売業者等にその旨を通知しなければならない。
⑤  顧客が申込みの撤回等を行った場合には、当該申込みの撤回等に係る第1項本文の書面を発する時において現に効力を有する提携リース契約に関連してなされた販売業者等と顧客との間の契約の申込みないし契約は、当該顧客が当該書面を発した時に、撤回されたものとみなし、又は解除されたものとみなす。ただし、当該顧客が当該書面において反対の意思を表示しているときは、この限りでない。
⑥  前項本文の規定により提携リース契約に関連してなされた販売業者等と顧客との間の契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約に関連してなされた販売業者等と顧客との間の契約が解除されたものとみなされた場合においては、販売業者等は、当該契約の申込みの撤回又は当該契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
⑦  リース事業者は、第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約が解除されたものとみなされた場合には、既にリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額の販売業者等への交付をしたときにおいても、顧客に対し、販売業者等に対して交付をした当該リース物件の対価の全部又は一部に相当する金額その他リース契約により得られた利益に相当する金銭の支払を請求することができない。
⑧  販売業者等は、第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約が解除されたものとみなされた場合において、リース事業者から既にリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額の交付を受けたときは、当該リース事業者に対し、当該交付を受けたリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額を返還しなければならない。
⑨  リース事業者は、申込みの撤回等があり、かつ、第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約が解除されたものとみなされた場合において、顧客から当該提携リース契約に関連して金銭を受領しているときは、当該顧客に対し、速やかに、これを返還しなければならない。
⑩  第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約が解除されたものとみなされた場合において、当該提携リース契約に係るリース物件の引渡し又は権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、販売業者等の負担とする。
⑪  販売業者等は、第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は同項第4号若しくは第5号の提携リース契約が解除されたものとみなされた場合には、既に当該提携リース契約に基づき引き渡されたリース物件が使用されたときにおいても、同項第1号、第2号、第4号又は第5号に定める者に対し、そのリース物件の使用により得られた利益その他の金銭の支払を請求することができない。
⑫  顧客は、第5項本文の規定により提携リース契約の申込みが撤回され、又は提携リース契約が解除されたものとみなされた場合において、当該提携リース契約に関連して顧客の土地又は建物その他の工作物の原状が変更されたときは、リース事業者又は販売業者等に対し、その原状回復に必要な処置を無償で講ずることを請求することができる。
⑬  第1項から第3項まで、第5項から第7項まで及び第9項から前項までの規定に反する特約であって顧客に不利なものは、無効とする。
【解説】
  本条は、「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第3項民事規制⑶に対応する条文であるが、意見書の内容は以下のとおりである。
(3)  リース契約のクーリング・オフと既払金返還義務
利用者は、リース提供者から法律で定められた書面を受け取った日から起算して一定期間は、 無条件でリース契約の申込みの意思表示を撤回し、又はリース契約を解除することができるというクーリング・オフ規定を設け、かつ、クーリング・オフがなされた場合においては、リース契約及びリース契約に附帯してなされた利用者と供給者間の契約は共に効力を失うものとし、利用者が既に支払ったリース料等がある場合には、リース提供者及び供給者はこれを利用者に対して返還するべき義務(既払金返還ルール)を定めるべきである。
  ・またこれに対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
提携リース取引は、供給者等が、飛び込みで利用者の自宅や営業所を訪問するなどの、いわゆる訪問販売形式で行われることが通常であり、取引の密室性、不意打ち的勧誘、攻撃的な勧誘によって、利用者にとって必要のない契約が容易に締結されてしまうなど、特定商取引法における訪問販売と同様の危険性がある。こうした危険を防止するためには、提携リース取引においては、利用者が申込みの意思表示をし、あるいは、締結した提携リース契約について、供給者の勧誘態様の如何を問わず、一定期間内は無条件に申込みの意思表示の撤回または契約の解除ができるようして、簡易な方法により不必要あるいは利用者の利益を害する契約から利用者を解放する仕組み(いわゆるクーリング・オフ制度)を構築することが必要である。具体的には、利用者は、リース提供者から法律で定められた書面を受け取った日から起算して一定期間は、無条件でリース契約の申込みの意思表示を撤回またはリース契約を解除することができるというクーリング・オフ規定を設け、かつ、クーリング・オフがなされた場合においては、リース契約及びリース契約に附帯してなされた利用者と供給者間の役務提供契約はともに効力を失うものとし、利用者が既に支払ったリース料等がある場合には、リース提供者及び供給者はこれを利用者に対して返還するべき義務(既払金返還ルール)を定めるべきである。なお、当該リース契約に附帯する利用者と供給者との間の契約(例えば、ホームページリースにおけるホームページの作成や更新などの役務提供契約等)については、当該リース契約と事実上不可分一体のものといえるので、リース契約についてのクーリングオフがあった場合には、リース契約と同様効力を失わせることが妥当であることから、効力の連動規定を設けるべきである。また、交付書面に不備がある場合には、クーリング・オフ期間は進行せず、また、その他、クーリング・オフ妨害があった場合の効果等については、特定商取引法や割賦販売法と同様の規定を設けるべきである。このように、利用者からのリース契約の解消とこれに伴うリース提供者に対する既払金返還ルールを導入することは、被害者救済にとって有益であるほか(供給者等が倒産などにより無資力となった場合など)、リース提供者による供給者等に対する管理・監督の実効化のために必要不可欠である。なぜなら、リース提供者は、リース契約の解消・既払金返還請求を回避するために、提携業者である供給者等を厳格に管理・監督をせざるを得ないことになるからである。
  本条は、上記日弁連意見を参考として、顧客は、第4条に定める法定書面を受け取った日から起算して8日間が経過するまでは、提携リース取引のクーリング・オフができることを定めたものである。
  核心となる本条第1項ないし第3項、第7項、第9項ないし第13項は、特定商取引法9条や割賦販売法35条の3の10第1項ないし第3項、第7項、第9項ないし第14項を参考に、法定書面受領後8日間はクーリング・オフができること、その効力発生時期については発信主義をとること、及びその効果は無条件解除であって、リース事業者や販売業者等は顧客に対しては、手数料、使用利益、役務の対価、または原状回復費用等いかなる名目の利益も保持または請求できない、これらは強行法規であるという基本事項をそれぞれ定めたものである。
  また、本条第4項は、割賦販売法35条の3の10第4項を参考に、リース事業者において、クーリング・オフがなされたことを販売業者等に通知をすべき旨を定め、以下に述べる関連付随契約のみなしクーリング・オフの前提条件を確保した。
  また、本条第5項及び第6項は、割賦販売法35条3の10第5項及び第6項を参考に、リース契約に関連して販売業者等と顧客との間で締結されることがある役務提供契約や物品の販売契約等についても、顧客の特別の反対の意思表示がない限りは、リース契約の解消によりクーリング・オフしたものとみなされ、販売業者等は無条件でその解消を受忍すべきとした、みなしクーリング・オフの規定である。
  また、本条第8項は、割賦販売法35条3の10第8項を参考に、販売業者等は、クーリング・オフがなされた場合、リース事業者に対して、既に受領したリース物件の売買代金相当額を返還しなければならないことを確認した規定である。

(提携リース契約の申込またはその承諾の意思表示の取消)
第23条
① 顧客は、リース事業者又は販売業者等が提携リース契約について勧誘するに際し、顧客に対して、第6条各号に掲げる行為をしたことにより、提携リース契約の内容及び効用を誤認し、提携リース契約の正確な理解を欠き、もしくは困惑し、それによって、提携リース契約の申込み又は承諾の意思表示をしたときはこれを取り消すことができる。
②   顧客が前項の規定により提携リース契約の申込み又はその承諾の意思表示を取消し、又はその他の事由により初めから提携リース契約が無効である場合には、当該リース事業者は、当該顧客に対し、当該提携リース契約に基づくリース料の支払いを請求することができない。
③  前項の場合において、販売業者等は、リース事業者に対し、当該交付を受けたリース物件の対価の全部に相当する金額を返還しなければならない。
④  第2項の場合において、顧客は、提携リース契約に関連してリース事業者に対して金銭を支払っているときは、その返還を請求することができる。
⑤  第1項の規定による提携リース契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもつて善意の第三者に対抗することができない。
⑥  第1項の規定は、同項に規定する提携リース契約の申込み又はその承諾の意思表示に対する民法(明治29法律第89号)第96条の規定の適用を妨げるものと解してはならない。
⑦  第1項の規定による取消権は、追認をすることができる時から6月間行わないときは、時効によって消滅する。当該提携リース契約の締結の時から5年を経過したときも、同様とする。
【解説】
・本条は、「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項民事規制⑴・⑷に対応する条文であるが、その内容は以下のとおりである。
(1)  提携リース取引における供給者等の行為をリース提供者の行為と同視する規定の導入
提携リース取引においては、リース提供者と供給者等との間に業務提携関係が存在し、これに基づき、供給者等が、利用者に対するリース契約締結の勧誘、契約締結作業、リース物件の引渡や設置等などの一連の作業を代行し、リース契約の媒介あっせんを行っているという実態に鑑み、供給者等がこれらの過程において利用者に対して行った行為は、全てリース提供者自身が行ったものとみなすという規定を設け、供給者等が契約締結の勧誘から契約締結に至る過程において利用者に対して不当・不正な行為を行ったことに伴う法律効果及び法的責任を、リース提供者の善意・悪意を問わず、利用者がリース提供者に対して主張できるようにするべきである。
具体的には、①提携リース契約においては、利用者の意思表示の効力が、意思の不存在、詐欺、強迫または、ある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、供給者等について決するものとするという規定②提携リース取引においては、契約締結の勧誘から契約締結に至るまでの一連の過程で、供給者等が利用者に対して行った行為は、リース提供者の善意・悪意を問わず、全てリース提供者自身が行ったものとみなすという規定を導入するべきである。
  ・また上記日弁連意見に対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
提携リース取引においては、リース提供者と供給者等との間に業務提携関係が存在し、これに基づき、リース提供者からの委託を受けた供給者等が、利用者に対する契約締結の勧誘、契約締結作業、リース物件の引渡や設置等などの一連の作業を代行し、リース契約の媒介あっせんを行っているという実態がある。しかしながら、リース提供者は、自らが業務提携関係を持っている供給者等が不適正な勧誘を行ったり、利用者の利益を不当に害する内容のリース契約を締結させた場合であっても、『供給者はリース契約においては契約当事者ではない「第三者」であり、「第三者」である供給者が行った勧誘等の行為については関知しない』として、供給者等が行った行為についての法的責任を取ることはなく、また、供給者等の行為に基づく法的責任をリース提供者に対して追及するための法制度も十分ではないのが現状である。このように、リース提供者は、自らの営業活動の拡大のために業務提携関係を構築している提携先の供給者等がどれほど不適正で悪質な勧誘等を行ったとしても、自らその結果についての責任を問われることがないことから、供給者等が不適正で悪質な勧誘等を行うことを未然に防止しようとするインセンティブが全く働かず、悪質な供給者等による不適正な勧誘等が多発して大きな被害がもたらされてきたといっても過言ではない。また、供給者等が利用者に対して、リース対象物件の引渡や設置等を「後でする」と言いつつ、これらの引渡や設置等が未了であるにもかかわらず利用者に対してリース物件の「借受証」に署名させるが、結局引渡や設置などを行わないまま倒産あるいは所在不明となり、利用者はリース物件の引渡や設置を受けていないにもかかわらず、「借受証」に署名をしていることを理由としてリース料の支払いを強いられるという悪質な被害も少なくない。したがって、このような現状を改善し、リース提供者を通じた供給者等の不適正な勧誘等の行為を未然に防止するためには、端的に、提携リース取引における供給者等の行為をリース提供者の行為と同視するとの規定を導入することが必要である。理論的に見ても、提携リース取引においては、リース提供者と供給者等との間に業務提携関係が存在し、リース提供者から委託を受けた供給者等が、リース提供者のために、契約の締結の勧誘、契約締結作業、リース物件の引渡や設置等など、本来リース提供者自身が行うべき一連の作業を代行するなどしてリース契約の媒介あっせんを行い、かかる仕組みを利用して、リース提供者と供給者等がともに利益を得ているという実態が存在するのであるから、提携リース取引において供給者等が行う行為は、法的に見てもリース提供者の行為と同視することが十分に可能であり、そのように考えることが妥当である(同趣旨の法律上の規定としては、消費者契約法5条や民法101条などがある。)。
(4)  不適正な勧誘に基づくリース契約の取消権と既払金返還義務
供給者等が行う勧誘について、以下のような不適正な勧誘がありこれに基づいてリース契約やこれに附帯する利用者と供給者との間の契約の申込みまたは承諾の意思表示がなされた場合には、利用者は、一定の期間内、リース提供者の故意過失を問わず、当該リース契約及び当該リース契約に附帯する利用者と供給者間の契約の申込みまたは承諾の意思表示を取り消すことができるという規定を導入し、取消等がなされた場合における効果としては、クーリング・オフと同様の効果(既払金返還ルール)を定める規定を導入するべきである。
なお、ここで、「不適正な勧誘」としては、(ⅰ)不実告知、不利益事実の不告知を伴う勧誘をすること。(ⅱ)断定的判断の提供を伴う勧誘をすること(ⅲ)不退去、退去妨害、威迫による困惑を伴う勧誘をすること。(ⅳ)不招請勧誘の禁止規定に違反して勧誘をすること(ⅴ)供給者等が、利用者に対して、リース料の一部または全部の支払を負担する(いわゆるキャッシュバックを約する場合など)ことを条件とする内容の契約を締結するよう勧誘をすること(ⅵ)供給者等が、利用者に対して、リース契約における利用者の主体を偽って(いわゆる名義貸しなど)契約を締結するよう勧誘すること(ⅶ)供給者等が、利用者に対して、リース物件の引渡等を行わない(いわゆる空リース)ことを内容とする契約を締結するよう勧誘すること(ⅷ)供給者等が、利用者に対して、役務の対価や残リース料をリース契約の対象とする内容の契約を締結するよう勧誘することなど可及的に広く捉えるべきである。
またこれに対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
提携リース被害の対策としては、供給者等による不適正な勧誘によるリース契約の締結を未然に防止するだけでなく、かかる契約によってリース料の支払いを強いられ、経済的損害を被った利用者の損害が確実に填補される仕組みを構築することが重要である。つまり、リース提供者による供給者等に対する調査義務を課すだけでは不十分であり、かかる調査をすり抜けて締結された不適正な勧誘に基づくリース契約の民事的効力を失わせるとともに、かかる契約に基づいて利用者が支払を強いられたリース料等の既払金を、財産的基盤が供給者等よりもはるかに強固なリース提供者から取り戻すことができる仕組みを作る必要がある。提携リース取引においては、供給者等は、リース提供者からリース契約の締結についての媒介をすることの委託を受けて、リース契約の勧誘を行っているという実態があることから、理論的に見ても供給者等の不適正な勧誘はリース提供者自身の勧誘と同視されるべきであり、したがって、消費者契約法5条や割賦販売法35条の3の13と同様の規定を設け、供給者等の不適正な勧誘により利用者が行ったリース契約の申込みまたは承諾の意思表示を取り消すことができるようにするべきである。その上で、利用者は、不適正な勧誘に基づくものとして取消しにより無効となったリース契約に基づいてリース提供者に支払ったリース料等の既払金の返還をリース提供者から受けることができるようにするべきである。なお、当該リース契約に附帯して利用者と供給者との間で契約が締結された場合においては、その契約は当該リース契約と事実上不可分一体のものといえ、当該リース契約と同様に供給者等の不適正な勧誘に基づくものであるから、当該リース契約とともにその契約の申込みまたは承諾の意思表示を取り消すことができるものとするべきである。
・本条は、販売業者等が不実告知や事実の告知等の不当勧誘を行い、これにとって誤認困惑をし、あるいは正確な知識を欠いて取引に入った場合には、リース契約の申込み又は承諾の意思表示を取り消すことができることを規定している。
提携リース契約においては、販売業者等が、本来的にはリース事業者が自ら契約するべきリース契約書を顧客に持参し、顧客の記名ないし署名・押印を受けた上、リース事業者に引き渡すという行為を継続して行っているのであるから、リース事業者の組織外の者であっても、リース事業者側の者として組織内の使用人・代理人と同視すべきであり、消費者契約法第五条の媒介者の法理と同じ趣旨に基づくが、第2条第2項に販売業者等の定義があり、かついわゆる提携リース契約においては当然に販売業者等の存在がリース契約締結に不可欠であって両者の一体性が強く認められることから、行為の主体に加え、販売業者等の行為をリース事業者の行為と同視することとした。
本条第1項は、割賦販売法35条の3の13第1項を参考に、顧客が、本試案第6条に列挙した不当勧誘によってリース契約に入った場合には、これを取消すことができることを定めた。
本条第2項乃至第4項は、割賦販売法35条の3の13第2項乃至第4項を参考に、顧客とリース事業者、リース事業者と販売業者等との間の金銭の流れをそのまま巻き戻すかたちで清算することを定めた。
本条第5項は、割賦販売法35条の3の13第5項や消費者契約法4条5項を参考にした、善意の第三者保護規定である。
本条第6項は、割賦販売法35条3の13第6項を参考に、民法の詐欺ないし脅迫の規定の適用があることを確認した規定である。
本条第7項は、割賦販売法35条3の13第7項を参考に、消滅時効を定めた規定である。

(契約の解除等の制限)
第24条
①  リース事業者は、提携リース契約についてリース料の支払の義務が履行されない場合において、20日以上の相当な期間を定めてその支払を書面で催告し、その期間内にその義務が履行されないときでなければ、支払分の支払の遅滞を理由として、契約を解除し、又は支払時期の到来していない支払分の支払を請求することができない。
②  前項の規定に反する特約は、無効とする。
【解説】
・本条は、リース事業者側からのリース料支払義務不履行を理由とする解除を一部制限した規定である。
・リース料の支払は、通常5ないし7年に及ぶ継続的なものであり、ひとたび支払義務の不履行があったからといってただちに両者の信頼関係を破壊するような債務不履行があったとは評価できない。そこで、信頼関係破壊の法理を強行法規として明文化し、無催告解除や20日より短い期間しか定めない催告による解除が無効であることを明らかにするため、割賦販売法35条の3の17を参考にして規定した。

(契約の解除等に伴う損害賠償等の額の制限)
第25条
①  リース事業者は、提携リース契約が解除された場合には、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、当該契約に係る支払総額に相当する額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を顧客に対して請求することができない。
②  リース事業者は、前項の契約についてリース料の支払の義務が履行されない場合(契約が解除された場合を除く。)には、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、当該契約に係る支払総額に相当する額から既に支払われた同号の支払分の額を控除した額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を顧客に対して請求することができない。
【解説】
・本条は、リース契約が解除された場合ないしはリース料が支払われなかった場合における、リース事業者等が顧客に対して伴い請求する損害賠償や違約金等の額を制限したものである。
・リース契約については、解約した場合に顧客がどのような義務を負うことになるのかについての顧客の認識が正確ではないことが多く、割賦販売のケースに比しても、解約によって不測の事態を招くことを避ける必要性は高い。なお、クーリング・オフの場合は、損害賠償や違約金等はむろん、いかなる名目であっても顧客に金員を請求したり、または利益を保持することはできないことについては、本試案22条において規定したとおりである。
・本条1項は、リース契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の額を制限するため、割賦販売法35条の3の18第1項を参考にして、規定した。
・本条2項は、リース料不払い(解除されない場合に限る。)に伴う損害賠償又は違約金の額を制限するため、割賦販売法35条の3の18第2項を参考にして規定した。

(リース事業者に対する顧客の支払拒絶権)
第26条
①   顧客は、リース事業者から提携リース契約に係るリース代金の支払の請求を受けたときは、当該提携リース契約の締結を条件として当該提携リース契約に関連して販売業者等との間に締結された契約について生じている事由をもって、当該支払の請求をするリース事業者に対抗することができる。
②  前項の規定に反する特約であって顧客に不利なものは、無効とする。
③  第1項の規定による対抗をする顧客は、その対抗を受けたリース事業者からその対抗に係る同項の事由の内容を記載した書面の提出を求められたときは、その書面を提出するよう努めなければならない。
【解説】
・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項民事規制⑵に対応する条文である。その内容は以下のとおりである。
(2)  リース提供者に対する利用者の支払拒絶権
利用者は、リース提供者からリース料の支払いの請求を受けたときは、利用者が供給者との間で当該リース契約の対象物件に関連して締結した契約あるいは供給者等が当該リース契約に関連して利用者に行った約束に関し、供給者等の契約違反や約束違反があった場合には、利用者は、当該契約違反や約束違反に基づいて供給者等に対して主張できる事由があることを理由として、当該リース提供者からの請求を拒絶することができるという規定を導入するべきである。
  ・また上記日弁連意見に対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
提携リース取引においては、供給者による利用者に対するリース物件の提供とリース業者によるそのための調達資金の提供とは、不可分一体の目的と手段の関係にあり、提携リース取引は、割賦販売法における個別信用購入あっせんと基本的に同じ経済的効果をもたらすものである。なお、提携リース取引においては、個別信用購入あっせんと異なり、供給者等と利用者との間に何らかの契約関係が存在することが条件とはされていないが(個別信用購入あっせんにおいては、購入者と販売業者等との間には売買契約などが存在することが条件とされている。)、利用者と供給者等との間に何らかの役務提供契約が存在する場合や、供給者等がリース契約に関連して、リース契約の締結を条件にリース提供者の関知しない何らかの約束を利用者に対して行うケースが少なからず存在する。例えば、(ⅰ)供給者と利用者との間でリース契約の対象物件に関連して契約(リース契約の対象物件たるソフトウェアを利用したホームページの作成や更新などの役務提供契約など)が締結されたり、(ⅱ)供給者等が利用者に対してリース契約締結の条件としてリース提供者の関知しない何らかの約束(利用者のリース料の支払いの負担を軽減するため、供給者等自身がその一部または全部を負担すると利用者に約束するなど。「キャッシュバック」などと呼ばれる。)をする場合などである。かかる場合において、利用者にとって見れば、これらの契約や約束はリース契約と不可分一体のものであると理解しているのが通常であって、供給者が契約違反をしたり、約束を守らなかった場合(リース料の一部または全部の負担をしないなど)には、リース料の支払いを拒絶することができるものと考えているのが通常である。また、リース提供者としても、供給者等と提携関係を構築し、契約締結の交渉・申込み手続を委ねることによって多くのリース契約を獲得して利益を上げている以上、供給者等にこれらの契約違反や約束違反があった場合において利用者からリース料の支払いを受けることができなくなっても何ら酷ではなく、そうした不利益は自ら甘受すべきである。既に述べたように、提携リース取引においては、供給者等の行為はリース提供者の行為と同視されるべきであることからも、かかる場合においては、利用者はリース料の支払いを拒絶することができるとすることが妥当である。
  ・割賦販売法第30条の4を参考とした。

(通常必要とされる分量を著しく超える提携リース契約の申込みの撤回等)
第27条
①   顧客は、顧客の日常生活または業務において、通常必要とされる分量を著しく超える量の提携リース契約の申込みをし、あるいは提携リース契約の締結をした場合には、提携リース契約の申込みの撤回又は提携リース契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、顧客に提携リース契約の締結を必要とする特別の事情があったときは、この限りでない。
②  前項の規定による権利は、当該提携リース契約の締結の時から1年以内に行使しなければならない。
③  申込みの撤回等があった場合においては、リース事業者は、当該申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
④  リース事業者は、申込みの撤回等があった場合には、既にリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額の販売業者等への交付をしたときにおいても、顧客に対し、当該提供者に対して交付をした当該リース物件の対価の全部又は一部に相当する金額その他当該提携リース契約により得られた利益に相当する金銭の支払を請求することができない。ただし、申込みの撤回等があった時前に特定商取引に関する法律第9条第2項又は第9条の2第1項の規定により当該特定契約の申込みが撤回され、又は当該特定契約が解除された場合は、この限りでない。
⑤  販売業者等は、申込みの撤回等があった場合において、提携リース事業者から既にリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額の交付を受けたときは、当該リース事業者に対し、当該交付を受けたリース物件の対価の全部又は一部に相当する金額を返還しなければならない。ただし、申込みの撤回等があった時前に特定商取引に関する法律第9条第1項又は第9条の2第1項の規定により当該特定契約の申込みが撤回され、又は当該特定契約が解除された場合は、この限りでない。
⑥  リース事業者は、申込みの撤回等があった場合において、顧客から当該提携リース契約に関連して金銭を受領しているときは、当該顧客に対し、速やかに、これを返還しなければならない。
⑦  第1項から第4項まで及び第6項の規定に反する特約であって顧客に不利なものは、無効とする。
【解説】
・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第3項民事規制(5)に対応する条文である。その内容は以下のとおりである。
(5)  過量リース契約の解除権と既払金返還義務
利用者は、利用者の日常生活(当該リース契約が利用者の営業のため、または、営業としてなされていない場合)または業務(当該リース契約が利用者の営業のため、または、営業としてなされた場合)において、通常必要とされる分量を著しく超える量のリース契約の申込みをし、あるいはリース契約を締結した場合には、リース業者の故意過失を問わず、一定期間内は当該リース契約及び当該リース契約に附帯する利用者と供給者との間の契約の申込みの意思表示の撤回又は当該リース契約の解除をすることができるものとし、解除等の効果としては、クーリング・オフと同様の効果を定める規定(既払金返還ルール)を導入するべきである。
  ・また上記日弁連意見に対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
提携リースが専ら訪問販売形式で勧誘され、利用者が不必要なリース契約を次々と結ばされて、過大なリース料の支払義務を負担するという被害が多発しているが、かかる過量リース契約についての調査義務とリース契約の締結の禁止規定を導入するだけでは事後的救済としては不十分である。したがって、過量リース契約及びこれに附帯してなされた供給者と利用者との間の契約の申込みの意思表示をし、または、これらの契約を締結させられた利用者は、当該リース契約及びこれに附帯してなされた供給者と利用者との間の契約の申込みの意思表示の撤回または契約の解除をすることができるものとして、その拘束から解放するとともに、既に支払ったリース料についてもリース提供者から返還を受けることができるという民事規制を導入することが、過量リース契約による利用者の被害救済のためには是非とも必要である。かかる規定を導入することにより、リース提供者としても、リース契約を解除されて既払金返還義務を負担することを未然に防止するために、供給者等が過量リース契約の締結の勧誘をしないよう、より充実した管理・監督を行うことが期待できる。なお、必要性及び過量性の判断に際しては、当該リース物件の利用者が消費者である場合と事業者である場合とで判断基準を分けることが合理的である。

  ・提携リースが専ら訪問販売形式で勧誘され、顧客が不必要なリース契約を次々と結ばされて、過大なリース料の支払義務を負担するという被害が多発している。
そこで、本条において、過量リース契約の法定解除権を設け、その拘束から解放するとともに、既に支払ったリース料についてもリース事業者から返還を受けることができるという民事規制を導入したものである。
かかる規定を導入することにより、リース事業者としても、リース契約を解除されて既払金返還義務を負担することを未然に防止するために、販売業者等が過量リース契約の締結の勧誘をしないよう、より充実した管理・監督を行うことが期待できるのであり、割賦販売法第35条の3の12等を参考にして規定した。
第5章  認定リース事業協会

(認定リース事業協会の認定及び業務)
第28条
①   経済産業大臣は、政令で定めるところにより、リース事業者が設立した一般社団法人であって、次に掲げる要件に該当すると認められるものを、その申請により、次項に規定する業務(以下「認定業務」という。)を行う者として認定することができる。
一  提携リース契約に係る取引の健全な発達及び顧客の利益の保護に資することを目的とすること。
二  販売業者等を社員とする旨の定款の定めがあること。
三  次項に規定する業務を適正かつ確実に行うに必要な業務の実施の方法を定めているものであること。
四  次項に規定する業務を適正かつ確実に行うに足りる知識及び能力並びに財産的基礎を有するものであること。
②  前項の規定により認定された一般社団法人(以下「認定リース事業協会」という。)は、次に掲げる業務を行うものとする。
一  提携リース契約に係る取引の公正の確保を図るために必要な規則の制定
二  会員のこの法律の規定若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づく処分又は前号の規則の遵守の状況の調査
三  会員にこの法律の規定若しくはこの法律に基づく命令又は第1号の規則を遵守させるための会員に対する指導又は勧告その他の業務
四  顧客の利益を保護するために必要な情報の収集、整理及び提供
五  会員の行う業務に関する顧客からの苦情の処理
六  顧客に対する広報その他認定リース事業協会の目的を達成するため必要な業務

(社員名簿の縦覧等)
第29条
①  認定リース事業協会は、社員名簿を公衆の縦覧に供しなければならない。
②  認定リース事業協会でない者は、その名称又は商号中に、認定リース事業協会と誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
③  認定リース事業協会に加入していない者は、その名称又は商号中に、認定リース事業協会会員と誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

(認定リース事業協会への報告)
第30条
  会員(リース事業者に限る。以下この条及び次条において同じ。)は、販売業者等が
行った顧客の保護に欠ける行為に関する情報その他顧客の利益を保護するために必要な販売業者等に係る情報として経済産業省令で定めるものを取得したときは、これを認定リース事業協会に報告しなければならない。

(認定リース事業協会による情報提供)
第31条
  認定リース事業協会は、その保有する前条に規定する情報について会員から提供の請求があったときは、正当な理由がある場合を除き、当該情報を提供しなければならない。

(役職員の秘密保持義務等)
第32条
①  認定リース事業協会の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
②  認定リース事業協会の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、その職務に関して知り得た秘密を、認定業務の用に供する目的以外に利用してはならない。

(定款の必要的記載事項)
第33条
  一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成18年法律第48号)第11条第1項各号に掲げる事項及び第28条第1項第2号に規定する定款の定めのほか、認定リース事業協会は、その定款において、この法律の規定若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づく処分又は同条第2項第1号の規則に違反した社員に対し、定款で定める社員の権利の停止若しくは制限を命じ、又は除名する旨を定めなければならない。

(改善命令等)
第34条
①  経済産業大臣は、認定業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、この法律の規定の施行に必要の限度において、認定リース事業協会に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
②  経済産業大臣は、認定リース事業協会の業務の運営がこの法律の規定若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反していると認めるときは、その認定を取り消すことができる。
【解説】
・「日弁連意見書第1『意見の趣旨』第2項行政規制(8)に対応する条文であり、割賦販売法等を参考にした。その内容は以下のとおりである。
(8)  行政規制の実効化
上記行政規制を遵守しない不適正な業者をリース取引から排除するため、①リース業について登録制の開業規制②リース提供者が行政規制に違反した場合の業務改善命令や業務停止命令及びその処分を下す前提としての報告徴収・立入検査等を導入するべきである。
またこれに対応する理由の要旨は、以下のとおりである。
意見の趣旨各記載の行政規制を実効化するため、リース提供者(提携リース取引を行うリース提供者のみならず、 全てのリース業を行う事業者を対象とすることが望ましい)については、割賦販売法上、個別信用購入あっせん業者について登録制を導入しているのと同様の趣旨から、これを登録制とするなどの参入規制を設けるべきである。このことによって、一定の財産的基盤や法令遵守態勢が整った業者のみがリース取引に参画することが可能となる反面、財産的基盤が脆弱であったり、法令遵守態勢が整っていないリース提供者が取引から排除されることとなって、取引の健全化が期待できるからである。また、行政規制に違反した場合については、監督官庁が業務改善命令、業務停止命令等の処分を行えるようにし、さらに、処分を下す前提としての報告徴収・立入検査などができるなどの制度を構築することが、行政規制が実効性あるものとなるために必要である。

・健全なリース取引の発展を実現するためには、行政上の措置によって法の遵守を確保するというのみならず、リース事業者(提携リース取引を行うリース事業者のみならず、全てのリース業を行う事業者を対象とする)自らが法の趣旨を踏まえて取引の安全を確保していくことが重要である。
したがって、業界内の自主的取組みと、その実効性の確保を促す法的仕組みを創設した。具体的には、不当な勧誘行為を防止するための自主ルールの策定及び普及、悪質な販売業者等に関する情報の収集及び提供などの自主的取組みを実態に即して行うものとする。
また、これらの取組みを行う上での、一定の体制や財産的基礎を確保するため、そのような要件を満たす団体を国が認定し、当該認定を受けた団体が行政の監督のもとでこれらの取組みを行うこととした。
さらに、リース事業者は、国から認定された協会に所属すれば、協会の会員として名乗ることとなり、顧客及び販売業者等との関係においても安心して取引に係る契約を締結してもらえることとなるから、協会に加入するインセンティブが高まる。
その結果、協会の体制強化が進み、行政の監督下で、機能強化が図られることになる。
・割賦販売法第35条の18~第35条の24を参考とした。

以  上


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