「朝鮮学校を高校無償化の対象から排除しないことを求める会長声明」(2013年1月24日)


  文部科学省は、2012年(平成24年)12月28日、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律(以下「高校無償化法」という。)施行規則(以下「施行規則」という。)の一部を改正する省令案(以下「省令案」という。)に関するパブリックコメントの実施を公表した。

  この省令案の内容は、施行規則第1条第1項第2号において外国人を専ら対象とする各種学校で高校無償化法の対象になるものとして定められた(イ)外国の学校の高等学校と同等の課程を有するもの、(ロ)文部科学大臣が指定する団体の認定を受けたもの、(ハ)それ以外の高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものという類型のうちの(ハ)を削除するというものである。

  しかしながら、「教育の機会均等に寄与すること」(高校無償化法第1条)という目的に合致するものとして就学支援金支給の対象とされたはずの3類型のうちの(ハ)の類型のみを高校無償化法の対象から排除するべき根拠について、本パブリックコメントは何も述べておらず、立法事実もない。

  この(ハ)の規定の主な対象として想定されていたのは、朝鮮学校である。2010年(平成22年)11月5日に高校無償化法施行規則第1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程の公表を受け、同月30日までに全国の全ての朝鮮学校が申請手続を行っている。

  ところが、同月23日に起きた韓国・延坪島での軍事衝突事件の直後、何の明文上の根拠もなく上記申請に対する指定手続が停止され、2年以上指定されないまま現在に至っている。

  しかるところ、今回の省令案は、朝鮮学校に対する指定手続について恣意的に結論を出さないまま2年以上も放置した上に、指定手続の根拠条項そのものを無くすというものであり、法律による行政の原理を逸脱し、法治国家として許されないものである。また、(ハ)の類型として指定済みの外国人学校については経過措置を設けるとしていることとあわせて見れば、実質的には朝鮮学校のみを高校無償化法の対象から排除することによって、朝鮮学校に通う子どもたちの教育を受ける権利を侵害するものであり、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約及び国際人権規約等の禁止する差別にあたるものである。

  以上により、当会は、施行規則第1条第1項第2号ハの規定を削除することに反対する。そして、朝鮮学校に対し、速やかに施行規則第1条第1項第2号ハの規定に基づく指定手続を進めることを改めて強く求めるものである。


2013年(平成25年)1月24日

京  都  弁  護  士  会

会長  吉  川  哲  朗




(注)本年1月25日、本ホームページにおいて本会長声明を掲載しましたが、事実関係に一部誤りがありましたので文章を訂正しました。

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