「東日本大震災の被災者に対する公営住宅の無償支援期間をさらに延長することを求める会長声明」(2012年2月21日)


1  京都府及び京都府下の自治体は、東日本大震災の被災者で京都府下に避難してきた方々に対し無償で公営住宅を提供しており、京都府下で公営住宅に居住している被災者は273世帯、716人に上る(2月8日現在、京都府ホームページ)。
    これは、被災地に対する支援物資の供与や職員等の派遣など直接の物的支援や人的支援と同様に、自己の責めによらず甚大な被害を受けた被災者に対し、社会連帯の理念に基づき被災者の生活を社会全体で支え、被災者ができるだけ円滑に生活再建を計れるようにしようとするものであって、各自治体のこれまでの努力は極めて貴重であり、当会としても高く評価するところである。
    当会においても、被災者に対する無料法律相談体制を整えるとともに、現在、当会所属の弁護士有志により被災者支援の弁護団が結成され、被災者支援の活動が行われている。

2  しかし、現状では、無償支援の期間が入居から最大3年間とされており、震災直後に入居した世帯は2014年(平成26年)3月には退去しなければならない。また、公営住宅の一時使用の新規受付けが2012年(平成24年)12月29日以降停止されており、今後避難を決断する被災者を受け入れることができない。
    この扱いは、被災者に余りに性急な判断を迫り円滑な生活再建を阻害することは明らかであり、被災者からは無償期間終了後の不安を訴える声も挙がっている。

3  公営住宅の無償支援期間を延長すべきこと
    東日本大震災の被害の甚大さは、言を俟たない。生活の基盤たる住宅、職場などが失われるとともに、多数の貴重な人命も失われている。個別の事情に応じ京都府下に避難してきている被災者が、被災地に戻るのか否かを含めて今後どのような形で生活を再建していくのか、目処を立てるには3年間では短すぎるというべきである。1995年(平成7年)1月17日に発生した阪神淡路大震災の際は、公営住宅の一時使用が4年間超、1999年(平成11年)3月末まで継続している(「阪神・淡路大震災にかかる応急仮設住宅の記録」兵庫県)。被害が甚大でありそれに伴い生活再建が容易でないことは、東日本大震災における場合も同様である。
    また、京都府下の避難者はその4分の3以上が福島県から来ているが、福島県における復興の遅れや放射能汚染による健康不安への配慮も重要である。福島県においては、震災により校舎が使用不能となって間借りや仮設校舎の形で授業をしなければならず部活動や実習の場所が確保できないなどの問題が報じられている。また、福島県内の医師や看護師の数が減少しており、子ども達の健康を十分に守るための基盤も損なわれつつある。復興の遅れは厳然としており、早期の帰還が必ずしも容易ではない状況が続いている。
    さらに、原発事故による放射能汚染も深刻である。放射能汚染による健康不安が広がる中、除染作業は作業員と仮置き場の不足で計画通りに進んでおらず、長期化が危惧されている。年少者を抱えた家族を初めとして、被災者が帰還すべきか否かを判断するには余りに早すぎる。
    よって、少なくとも阪神淡路大震災の際に公営住宅の無償提供が行われた期間よりも長期の無償提供が行われるべきである。

4  公営住宅の一時使用の新規受付を再開すべきこと
    現時点で避難していない被災者についても、①学校の年度替わりである3月の時期に避難することを検討している父母がいること、②原子力損害賠償紛争審査会における自主的避難に関する賠償指針の内容も不十分であることから、今後避難を決断する被災者についても受け入れ、生活再建の支援をすべきである。
5  以上により、当会は、京都府及び京都府下の各自治体に対し、東日本大震災の被災者に対する公営住宅の無償支援期間をより長期なものとするよう求めるとともに、現在停止している公営住宅の一時使用の新規受付を再開するように求める。


2013年(平成25年)2月21日

京  都  弁  護  士  会

会長  吉  川  哲  朗


関連情報