「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」に対する会長声明(2013年4月26日)
1 政府は、2013年(平成25年)4月19日、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」(以下「法律案」という。)を閣議決定し、国会へ提出した。
法律案は、消費者被害のうち、共通する事業者の行為により同種被害が多数発生する事案について実効的な救済を図ろうとする集団的消費者被害回復のための新たな訴訟制度の導入を内容とするものであり、これまで同様の制度の早期実現を求めてきた当会としては、閣議決定及び法律案の国会上程を行った政府の取り組みを高く評価する。
2 法律案に対しては、拙速な立法であるとか、濫用のおそれがあって企業の競争力を損ない経済再生のプロセスにも悪影響を及ぼすなどの批判も見られる。
しかしながら、集団的消費者被害回復のための新たな訴訟制度の導入については、2002年(平成14年)の司法制度改革推進計画において少額多数被害の救済のための団体訴訟制度の必要性が述べられた後、2006年(平成18年)以降の国会において制度の検討を求める附帯決議が度々なされるとともに、2009年(平成21年)の消費者庁設置法附則では3年を目途に必要な措置を講じることが定められた。法律案は、かかる経過の中で、消費者庁や消費者委員会において、事業者団体関係者も含む有識者による検討委員会等において議論が重ねられ、慎重な議論の結果、ようやく取りまとめられたものであり、拙速な立法であるとの批判はあたらない。
被害が適切に回復されることは、むしろ、公正な市場の実現に資するものであり、適格消費者団体による差止請求の運用における実情を踏まえれば、本制度の濫用のおそれなどは杞憂である。
3 当会は、2011年(平成23年)6月4日に集団的消費者被害救済制度に関するシンポジウムを開催し、同月23日には集団的消費者被害救済制度要綱試案を公表するなど、継続して集団的消費者被害回復のための実効性ある制度の実現に向けた取り組みを行ってきた。これまで十分な回復が図られてこなかった消費者被害の集団的な回復を図る制度の必要性は明らかで、その早期の実現こそが求められており、同年12月22日には、「実効性ある集団的消費者被害救済制度の創設を求める会長声明」を発表している。
4 当会は、2013年(平成25年)の通常国会において、速やかに法律案についての審議がなされ、制度の導入が実現されることを強く求めるものである。
2013年(平成25年)4月26日