「橋下徹氏の「慰安婦」等に関する発言に関連する会長声明」(2013年6月27日)


  日本維新の会の共同代表であり大阪市長である橋下徹氏は、本年5月13日、「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で、命かけてそこを走っていくときにね、そりゃそんな猛者集団といいますか、精神的にも高ぶっているようなそういう集団、やっぱりどこかでね、休息じゃないけれども、そういうことをさせてあげようと思ったら、慰安婦制度っていうものは必要なのは誰だってわかるわけです」などと発言した。また、沖縄の米海兵隊司令官に対して、「もっと風俗業活用してほしいって言ったんですよ」などと発言したことを明らかにした。

  橋下氏の一連の発言は、いわゆる「慰安婦」として意に反して働かされていた女性らの尊厳を踏みにじるものである。のみならず、橋下氏の発言は、女性を性の道具として「活用」することが正当化され得るとの認識を示したものであり、これまで、国内外で意に反した売春行為等を余儀なくされてきた多くの女性らの尊厳をも踏みにじるものである。

  女性の性的搾取については、現在もなお世界において人身取引が行われ、我が国において女性が意に反して売春行為をさせられている実態があり、また、風俗営業名下に、売春防止法で禁止されている売春助長行為が横行している実態がある。日本弁護士連合会は、2004年(平成16年)11月19日、「人身取引の被害者保護・支援等に関する法整備に対する提言」を発表したが、いまだ十分な法執行及び法整備がなされているとは言いがたい。このような現状のもと、行政機関の長の立場にある者が、上記のような発言をすることは到底許されるものではない。

  よって当会は、橋下氏の一連の発言に対して、日本国憲法が定める個人の尊厳、奴隷的拘束と苦役からの自由及び両性の本質的平等に真っ向から反するものとして強く抗議するとともに、その背景にある、女性の性的搾取に対するこれまでの取組みの不十分さに鑑み、国及び関係する行政機関に対して、個人の尊厳、奴隷的拘束と苦役からの自由及び両性の本質的平等の理念のもと、これらの実態に対する抜本的な対策を講ずるよう求めるものである。

2013年(平成25年)6月27日

京  都  弁  護  士  会

会 長  藤  井  正  大


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